来シーズンに向けて年末の補強ラッシュが続くJリーグ。そうした中でも目を引くのは期限付き移籍からの復帰です。今回は来シーズンのJ1でクラブの成績にも影響を与えそうな6つのレンタルバックを筆者の目線で選びました。

迎え入れるクラブのサポーターはもちろん、ライバルも要注意です。

吉尾海夏(横浜F・マリノス ← FC町田ゼルビア)

今シーズンのJ2町田で本格ブレイクして、J1の名門に舞い戻るのがアカデミー育ちの吉尾海夏です。左利きのアタッカーはトップ昇格した2018年もリーグ戦6試合で起用されましたが、その時点ではチーム事情に応じた”便利なマルチロール”という印象が強く、さらなる出場時間と成長を求めてベガルタ仙台へ期限付き移籍しました。

序盤戦から主力に定着しましたが、怪我でシーズン後半を棒に振る形となり、J2の町田に期限付き移籍という流れに。加入1年目も存在感を見せましたが、今年ポポヴィッチ監督の元で攻撃センスがさらに開花し、目標に掲げた7得点7アシストを上回る10得点10アシストの20ゴールスコアリングポイントを記録しました。

前を向いたらパスより仕掛けてシュートを選択する意識が強く、個人で打開する能力も高いですが、マリノスでは周囲の選手と絡むコンビネーションからのチャンスメークも数多く見られそうです。中盤ならどこでもこなせますが、やはり期待したいのが右サイド。経験豊富なライバルもいるポジションですが、競争を活性化させる存在になることは間違いありません。

前田大然のセルティックへの移籍も決定的と言われるマリノスにあって、モンテディオ山形から復帰する樺山諒乃介とともに、攻撃に変化と迫力を出していける存在になれるか注目です。

野津田岳人(サンフレッチェ広島 ← ヴァンフォーレ甲府)

”未完の天才”というイメージが強かった野津田ですが、2012年のトップ昇格からのちに新潟、清水、仙台と渡り歩いて経験を積むも、広島では鳴かず飛ばず。もともと左足のセンスは抜群でしたが、どこか勝負弱さがあり、キラリと光っては消えるというパフォーマンスが続いていました。

しかし、甲府の地でようやく本格化したようです。伊藤彰監督の元で中盤の主軸となり、最後は惜しくも昇格を逃したものの、ボールを動かしながら可変するスタイルの中で継続的に輝きを放ちました。27歳で広島に戻るシーズン。最低でも主力に定着することを期待されているはずですが、新体制となるチームをどこまで押し上げられるかは野津田にかかっているとも言えます。

名古新太郎(鹿島アントラーズ ← 湘南ベルマーレ)

”名古なのに新太郎”でおなじみのテクニカルなプレーメイカーが湘南から鹿島に戻ってきます。選手権で話題を集める静岡学園の出身で、順天堂大学の在学時に特別指定選手としてJデビュー。正式に加入してから2シーズン、鹿島で高水準なプレーは見せていましたが、もう1つ殻を破れない状況は本人も強く自覚していたようです。

湘南では得点にもこだわりを見せて、中盤から機を見てフィニッシュに絡むシーンも鹿島時代より増えました。実際に前半戦だけで3得点を記録。しかし、夏場のトレーニングで負傷した左足が治らないまま、12月1日に手術を行ったが発表されました。筆者の見解としては、もし名古が健在であれば湘南があそこまで残留争いに苦しむことはなかったと思います。

再び鹿島の選手として、本格復帰は開幕後の3月以降となると見込まれますが、レネ・ヴァイラー新監督が求めるプレッシングからの速い攻撃をハイレベルに導くために、キーマンの一人になると考えられます。ただ、キャンプから開幕に向けてチーム内で競争がひと段落するタイミングの復帰となるので、まずは中盤の競争に割って入ることがタスクになってくるでしょう。

上原力也(ジュビロ磐田 ←ベガルタ仙台)

アカデミー育ちのボランチも25歳になりました。温泉で有名な伊東の出身で、地元の中学に通いながらACNジュビロ沼津まで練習に行く生活を続けた苦労人でもありますが、ジュビロのトップチームでも地道に序列を上げていた昨シーズン、監督交代に伴う遠藤保仁の加入ということもあり、後半戦は途中出場が続いていました。

ある意味、憧れの存在である遠藤保仁に押し出される形となった上原ですが、期限付き移籍したベガルタ仙台では中盤の要として奮闘。守備的な戦いが続くチームに勝機をもたらすチャンスを創出し、5アシストを記録しました。視野が広く、周りの動きがよく見えているタイプですが、守備には少し甘さも見られました。仙台で継続的にJ1の強度を経験することで、底上げはされたはず。

復帰する磐田には遠藤保仁をはじめアカデミーの大先輩である山本康裕、最終節でゴールを決めるなど成長を続ける鹿沼直生、そして天皇杯の活躍も記憶に新しい藤原健介などいますが、J1での戦いを見据えれば、上原が中盤に強度と創造力の両面をもたらせる重要戦力になっていくことが、残留以上の結果を導けるかの生命線になり得ます。

若月大和(湘南ベルマーレ ← シオン)

2年前のU−17W杯で輝きを放ち、注目を集めた若月はスイスでの2年間の経験を糧に、湘南での飛躍を目指します。シオン加入のシーズンは16試合で1得点という結果を残しましたが、新シーズンはセカンドチームで奮闘していたとのこと。そのため最近のプレーは分かりませんが、鋭くゴールを目指す高速アタッカーの特長は今年の湘南に一番足りていなかった要素であり、打ってつけの復帰になりそうです。

また湘南の編成事情を考えても、分かりやすく二桁得点を保証してくれるような外国人FWを補強することができない中で、こういう若手FWのブレイクはチームの躍進に直結します。中盤から後ろにかけてはベースアップされた感もあるだけに、若月が攻撃の活性化に止まらず、得点をどれだけ加えられるかは山口智監督が2年目となる湘南の勝ち点にも大きく影響するかもしれません。

髙橋大悟(清水エスパルス ← ギラヴァンツ北九州)

神村学園で注目を集め、複数クラブの”争奪戦”を経て、2018年に清水加入。翌年の8月から北九州に期限付き移籍していました。左足のテクニックは常に目を引くレベルで、ボールを持てば違いを生み出せるセンスを持ちながら、人一倍エネルギッシュなプレーで北九州のファンサポーターを魅了しました。

今年は多くの主力が北九州を離れた中で、若くして副キャプテンも担い奮闘。3シーズンで26得点12アシストを記録していますが、今年は10得点。北九州の大半のゴールには髙橋が絡んでいたと言っても過言ではありません。惜しくもJ2残留は果たせませんでしたが、観る者を熱くさせるプレーは印象に残りました。

象徴的なゴールは11月13日に行われた、レノファ山口との「関門海峡ダービー」。キャプテンマークを巻いた髙橋は0−0で迎えた終盤にカウンターから左足を一閃させて、ゴールに突き刺しました。試合後、歓喜の涙を流して(本人は笑顔で否認)地元記者から「泣き虫大悟」の名前を授かった情熱のアタッカーは復帰する清水で、どんな嬉し泣きを見せるのでしょうか。