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東京五輪に挑む”なでしこジャパン”18人発表。本番で「化ける」ラッキーガールは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

高倉麻子監督は東京五輪に臨む18人のメンバーと4人のバックアップを発表。キャプテンとして期待される熊谷紗希や新10番に指名された岩渕真奈が順当に選ばれた一方で、これまで長く”なでしこジャパン”を支えてきた鮫島彩が外れるなど、悲喜交交の発表となりました。

「今朝まで、最後の1ピース、2ピースは正直悩みました」という高倉監督ですが、最後は「ここの日頃の努力やプレーを間近に観た中で、どの選手も世界で戦って言えるる要素は持っていましたけど、総合的に観て18人を選んだ」と語ります。

予選リーグの3試合から準々決勝、準決勝、決勝あるいは3位決定戦と、短期間で6試合を戦う東京五輪で求められるのは心身にタフであること、さらにマルチなポジションや役割を果たせる選手をどれだけ揃えているかも鍵になります。

写真提供/ JFA
写真提供/ JFA

今回はCOVID禍の特別ルールにより5人交代制が取られますが、登録メンバーは18人なので、GKにアクシデントが無ければベンチスタートの6人中、最大5人がピッチに立つことになります。そうした事情から疲労や怪我に備えると同時に、ジョーカーとしても特別な働きが期待できるクローザーであることが求められます。

基本システムは4ー4ー2ですが、ここまでの試合を観るとファーストチョイスがはっきりしていないポジションもあります。

■予想布陣

--------------岩渕-------菅澤----------------

-----------(田中)--(塩越)-------------

長谷川----------------------------------籾木

(塩越)---三浦-------中島-------(杉田)

(北村)-(宮川)-(杉田)----(遠藤)

-------------------------------------------------

宮川----------南---------熊谷-----------清水

(北村)-(宮川)-(宝田)-----(宮川)

---------------------山下-----------------------

------------------(池田)--------------------

11ポジションの中でスタメンがはっきりしているのはFW岩渕、左サイドハーフの長谷川、ボランチの中島と三浦、センターバックの熊谷、そして右サイドバックの清水です。この6人は余程のことが無ければカナダとの開幕戦でスタメンになるはず。

GKはこれまでの実績で考えると山下がリードしていますが、ここ最近の池田の充実ぶりが目立っており、直前の活動でもウクライナ戦は山下、メキシコ戦は池田がゴールマウスを守り、それぞれ存在感を示しました。

センターバックでキャプテンの熊谷の相棒を務めるのは南か、それとも新進気鋭の宝田か。実力的には接近していますが、熊谷とのコンビを前提に考えると、左がわで組み慣れている南にアドバンテージはあります。そして宝田の場合はベンチに残しておくと、元々の本職であるFWに投入して得点を狙いに行けるので、前向きな意味も含めてベンチスタートとなる可能性はあります。

左サイドバックは安定感の宮川か、推進力の北村か。攻撃力を生かすなら遠藤というチョイスもありますが、二人の中で対戦相手との兼ね合いも考えながら高倉監督が選択して行くはず。ただ、宮川の場合はスーパーマルチとして右サイドバック、センターバック、ボランチの控えも兼ねるので、左サイドバックでフル稼働させるのは危険です。そういう意味でも仮に開幕戦で宮川が選ばれたとしても、北村にはチャンスがありそうです。

中盤では右サイドハーフが唯一、スタメンが見えないポジションです。強いてファーストチョイスをあげるなら籾木ですが、彼女の場合はいついかなる時でも途中出場で効果的なプレーができる12番目のレギュラー的な特長もあります。そうなるとボランチからサイドハーフに移り、所属クラブではFWも啓県している杉田が開幕スタメンになる可能性もかなりあります。

その一方で、最後に評価を大きく上げて18人に滑り込んだ塩越も本来は左サイドの選手ですが、パラグアイ戦では右サイドハーフで2得点1アシストと活躍しており、ここから7月の壮行試合を含めてさらに評価を高めれば開幕戦の抜擢も考えられます。ただ、FWでタメを作るような仕事もできる選手なので、スタートでも途中からでも重宝することは間違いありません。

2トップで岩渕の相棒を担うファーストチョイスは力強いポストプレーやヘディングの強さが光る菅澤ですが、2年前のW杯選外からドイツで経験を積むなど評価を上げた田中美南も岩渕との”阿吽のコンビネーション”で大柄のディフェンスを破る期待があり、試合によってスタメンとジョーカーが入れ替わる形になるかもしれません。

岩渕は3試合目が消化試合にならない限り全ての試合でスタメン起用される可能性が高いですが、攻守のハードワークを求められる日本の前線で6試合フル出場は考えにくく、岩渕をのぞく布陣の使い所もキーになってきます。その時に採用されそうなのが4ー3ー3で、前線中央は菅澤を軸に塩越などが候補、ウィングには左利きの高速ドリブラーである遠藤を配置するオプションが考えられます。

「ここで選んだ選手全員に関して、大会中に言い方としたら化けると言いますが、ラッキーガール的な存在が出てくれば、それはチームに大きな力になると思いますし、とてつもない力を与えてくれる」

そう高倉監督が語るように、チームのまとまりだけでメダルは獲得できないと考えられ得る中で、期待したいのはそうした個人で輝けるような存在です。どちらかというと、なでしこジャパンは連携連動を駆使した攻撃を得意としていますが、個人で違いを生み出せる希少なタレントである遠藤、さらには強豪国にあまり知られていない塩越、FWとしても起用できる宝田などはラッキーガールやニューヒロインになる可能性を秘めています。

もちろんエースの岩渕や大会にかける思いの強い田中、イタリアのミランで個の力に磨きをかけた長谷川などが、東京で特別な輝きを放つ期待もありますが、何れにしてもチームワークが日本の強みであることに変わりはないで、チームと個人、両面で良いものを発揮して、金メダル獲得につなげて欲しいと思います。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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