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「日本を敗退させた」U-20W杯・韓国戦の記憶。菅原由勢の”転機”となった世界の舞台と東京五輪への糧

河治良幸スポーツジャーナリスト
筆者撮影

オランダのAZからA代表と東京五輪に向けたU-24代表の両方に選ばれている菅原由勢。カタールW杯アジア二次予選の突破をかけたミャンマー戦は出番がありませんでしたが、オーバーエイジとしてU-24代表にも選ばれている酒井宏樹と練習から競争する日々は来る東京五輪に向けた大きな刺激の機会にもなっているはずです。

「燃えるというか、強力な戦力というか。日本のことを考えれば素晴らしい戦力の方がきていると思います。でも同じポジションというのを考えたら、競争がある世界の中でそこに打ち勝って行かないと。酒井選手に打ち勝って行かないといけないのはメンバー発表の時点で感じてますし、僕のプレーを最大限発揮して食い込めるように。僕自身まだまだ成長は必要。酒井選手から学ぶことも多くて勉強させてもらってるけど、負けないように強い気持ちは持っています」

そう熱く語る菅原は名古屋グランパスのアカデミーからトップ昇格しましたが、2017年のUー17 W杯でイングランドと対戦した時に世界の壁を実感し、自分の世代でW杯優勝を狙っていくために、いち早く海外のリーグでプレーすることを目標にしてていました。

その第一歩を踏み出すための格好のアピールの場として考えていたのが、2019年にポーランドで行われたUー20W杯です。アジアで一緒に切符を勝ち取った主力メンバーから久保建英や安部裕葵、大迫敬介がコパ・アメリカ参加で招集外となり、怪我で橋岡大樹なども欠いて挑む大会で確かな存在感を示しました。

その後、オランダのAZからオファーが届き、海外挑戦の第一歩を踏んだ菅原は完全移籍を勝ち取り、昨年10月には欧州組だけで臨んだA代表のメンバーに選出されました。「キャリアの転機」と菅原も認める2年前のUー20W杯。しかし、そこにあるのは明るい記憶だけではありません。

イタリアなどと同居した厳しいグループリーグを突破し、チームとしても成長していた日本は決勝トーナメントの1回戦でイ・ガンイン(バレンシア)らタレントを擁した韓国と、ベスト8をかけて対戦することになりました。右サイドバックで先発した菅原は韓国のカウンターを封じながら、攻めては多くのチャンスの起点になるなどビルドアップで重要な役割を果たしますが、なかなかゴールが割れないまま後半に突入します。

一進一退の攻防が繰り広げる中でお互いのGKがビッグセーブを披露するなどスリリングな展開となり、1点を争う試合の中で84分に菅原が一度奪ったボールをミスで相手に渡してしまい、クロスからゴールを決められました。圧倒的な世界の壁を感じたU−17から確かな成長を感じていた中での大きなミスに菅原は逃げることなく向き合います。

「誰しもミスをするためにプレーしているわけではない。でも自分はあの大会で大きなミスをおかして、日本を背負ってる中で敗退させたので、すごい責任を感じました」と振り返った菅原は「ものすごい責任感」と言う言葉を繰り返しました。

「代表選手として、ああいうプレーはどうなのかと何ヶ月も考えましたが、継続してスタッフが代表を呼んでくれている。あの失敗を先につなげないといけないと前向きに考えられたし、あのミスあったから成長しないといけないとも思える。あの後、自分がどうなったか考えると悪くないところに来ている。それを金メダルにつなげられたら、あのミスが成長につながったと言えると思います」

現在、U−24代表に選ばれているメンバーにとって金メダルは共通の目標であり、森保一監督が掲げるチームの目標でもあります。しかし、菅原が感じた人一倍の責任。”キャリアの転機”と語るUー20W杯が菅原に残した糧を東京五輪、さらにW杯の舞台へとつなげていく強い気持ちを感じます。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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