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あのブラジル戦から3年ぶりの代表復帰。ベルギーで活躍する森岡亮太の何が変わったのか(現地取材)。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

ブラジルとベルギーに挑む欧州遠征のメンバーに森岡亮太(ベフェレン)が選出された。シンガポールで0−4と大敗したブラジル戦から3年ぶりの復帰となる。その相手がまたブラジルというのも彼にとって因縁かもしれない。もちろん現在プレーするベルギーでの試合でも注目が集まるだろう。

ここまでベルギーリーグで6得点・8アシストと活躍し、現地メディアからも絶賛されている森岡についてヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「長い間知っていたがそこまで興味深く引き付けた訳ではなかった」と語るが、ベルギーでの活躍が彼の評価を一変させた様だ。

「気になり始めたのは、今季ベルギーに行ってからですね。パフォーマンスが徐々に上がってきて私の興味を引き付けました。ベルギー国内では彼についてポジティブな報道が多くされています。パフォーマンスはもちろんのことラストパス、そしてゴールなど、オフェンス面について評価できると思います。もちろん、まだまだ伸ばすべきところもあって、特に”デュエル”(1対1の強さ)を改善しないといけません。彼とは何度も、そういう話をしています」

ヴィッセル神戸に在籍した当時にハビエル・アギーレ前監督から代表に招集され、シンガポールで行われたブラジル戦である種の”挫折”を味わった森岡。チャレンジの場所を求めてポーランドのヴロツワフに渡り、そこで実力が認められてベルギー1部のベフェレンに移籍したMFはどんな変化と成長をとげたのか。

代表発表の前々日となる29日、ベルギーリーグのスタンダール・リエージュ戦に出場した森岡に話を聞いた。3−1で破れた後だったが、明るい表情で現状を語ってくれた。その中で特に印象的だったのが、森岡が中盤の下がり目にプレスバックしてボランチがボールを奪った場面について、本当は自分でボールを奪いたいと思っていたということだ。

そういう部分に欧州での意識の変化を感じる。そして何よりも結果にこだわってチャレンジしていることだ。代表を特に意識してやっているわけではないという森岡だが、そうした意識の変化は彼の成長、そして代表復帰の理由に直結するものかもしれない。

ーー厳しい試合だったが? 

そうですね。まあ残念なファーストハーフでしたね、はい。

ーー攻めるどころか、まず守備が崩壊してしまった? 

最初の15分くらいはすごいチーム全体でよかったですけど、その後が今までにないくらい崩れたんで、その25分、30分くらいの時間がもったいなかったなと思います。

 

ーーサイドから攻められてクロスを入れられる中、スペースが空いてて、相手が楽々とゴールする? そうですね、はい。もうあれは集中できてなかったと思います。

 

ーーその時、どうチームの中でアクションを起こす? 

どういうふうにというか、もうやるしかないですよね。でもやろうとしてるのが逆にうまいこと次に2失点目もスペース、真ん中空きましたし、3失点目ももう簡単に入りましたし、やろうやろうっていう前がかりになるのと、しっかりチームとしてやるべきことをもう一度やるってところの意識の部分ですね。それがちょっと間違っちゃってたって感じがしました。

ーー高い位置でパスカットしてからの攻撃は多かった? まあそうですね。そこでしっかりプレスをかけれればというのはスカウティングでありましたし、うまいことパス通せればというのもありました。それを言い出すとあれなんですけど、やっぱり最初の15分でいくつかいい形があった中で、決めてたらまた面白い展開になってたと思います。

ーー自分のボールを取れる感覚がよくなった? 

いや、もうスカウティングですよ、それは。どこにプレスかけるとか、どういう形でチームをオーガナイズするかをコーチ陣が頑張って考えてくれているので、ピッチでやるだけなんで。

ーー右サイドに3~4回ボールを出したが、リターンがなかなか来なかった? 

今日に関してはサイドのクロスの対応がすごい甘いっていうところがあったんで、サイドに出たら真ん中にクロスっていうのはたぶん両サイドの選手は思ってたと思いますし、結果的にこういう試合内容になったから、あのシーンでうちの7番がもうちょっとどうのこうのって話になりますけど、基本的に今までずっとああいう形なので。いい時もあれば、こうなる時もありますし、そこは続けて、信じてやるしかないなと思います。

ーーこういう試合展開になっても下がりすぎずにいたが、結構我慢したことがプラスになる? 

そうですね、この展開で下がるっていうよりは、僕が使いたいスペースはずっと空いてたんで。下がっちゃうとそこのスペースを使う選手がいなくなるんで、とりあえずそこで出てくるのを待つしかなかったですね。後ろ下がっても、後ろはわりとつなげてたといえばつなげてたんで。そこは自分のすることじゃない。とりあえず前でと思って、常にに意識してます。

ーー代表発表の直前の試合で、代表スタッフもスカウティングしていたと思うが、自信は? 

いやもう何も思ってないです。選ばれれば選ばれてから考えますし、選ばれてないんでずっと、もうとりあえずチームでどれだけやるかっていうところがまず自分の中でファーストであるんで、そこは選ばれてから考えます。選ばれたら。

ーーよく走っていた? 

チームの中じゃ走ってる方ですけど、どうですかね。じゃあ神戸の時から走ってなかったかと言えば、神戸の時から距離はすごい走ってましたし。結果につながらなかったら、いくら走っても意味ないです。

ーー両ボランチが失点に絡んだ? 

結果的にそうなりましたけど、あの2人はすごいいい選手ですし、なかなか日本では見ないような、つぶせてつなげてっていう、点も取れますし、それがウチのストロングポイントでもあるんで、やり方はブレずに、ちょっとしたメンタルの部分だと思うんで、そこだけ今日の負けを次に生かせるようにしたいですね。

ーー代表を気にせずと言うが、森岡選手が最もやるべきことは? 

やっぱ結果じゃないですか。決定的なパス、シュートって部分、得点にいかに結びつくシーンを作れるかってとこやと思います。

 

ーー自分の中で今日も走ったり、守備の面でも意識を出したり、改善はみられている? 

そうですね、もちろんその意識してやってるわけじゃないですけど、自分の中でやっぱり改善しないといけない部分っていうのは、ボール持ってるとき以外の部分だと思ってるんで、自分では、そこは意識してもっといい選手になれるようにっていうのはイメージしてトレーニングしてます。

ーーセットプレーの守備のところは、日本だと長身の森岡選手はターゲットのマークだが、このチームだとミドルレンジのカバーに入っている。そこはフィジカル的な部分? 

そうですね(笑)。まあ、強い選手は多いんで。

 

ーー森岡選手とか、オランダの小林祐希選手もそうだけど、10番タイプの選手は守備しないって見られがちで、小林君もこの前代表に来た時にみんな俺は守備しないって思いこんでると? 

マジっすか。この前試合見ましたけど、メッチャいい守備してましたよ。俺は言われても納得できますけど。守備に特化した選手に比べたらそっち系じゃないんで。でも小林君はすごいいい守備してるなと思いながら試合見ていたんで。

ーー森岡選手もイメージを変えていく努力を? 

そうですね。守備はやっぱどこも求められるんで、前線からのプレスとかもやっぱ今日みたいにうまくかければハマる時もありますし、それをどうああいう形を作れるかっていうのは意識してやりたいですし。攻められてる時に後ろでつぶすのはやっぱり後ろの選手がやりますけど、前線からできることは自分たちでまずやってって部分。

ーーいいプレスバックからボランチの選手が奪ったが、追い込んで後ろに取らせるつもり? 

いや、本当は奪いたいですけどね。個人的には。奪いたいですけど、結果的にそういう後ろが奪いやすくなってるってだけです。もちろん取りには行ってますけど。

ーー周りの選手がどう動くか分かる? 

もう分かるようになってきたというか、だいたい同じなんです。サイドがすごい速いんで、そこの穴の部分が抜けますし、ボランチ2枚は上がっても戻ってこれるんで、最悪別にそこは戻ってこれるんで問題ないですけど。どうしてもサイドが行き切っちゃうと、そこがスペースになるんで。

 

ーー明後日(代表選出の)いいニュースを待っております? 

僕も待ってます!(笑)

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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