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ゴールを決めなければ勝利は無い。タイ戦で”真のゴールゲッター”として価値をアピールする選手は誰か。

河治良幸スポーツジャーナリスト
最終予選でここまで無得点の岡崎慎司だが、焦らず虎視眈々とゴールのビジョンを描く。(写真:アフロ)

アジア最終予選の中でも大一番の1つであるアウェーのUAE戦に勝利し、2位のままながらロシアに向け着実に前進した日本代表。しかし、ハリルホジッチ監督は試合後すぐに「この価値は次の試合を勝つことによって生まれるんだと。次はタイ戦だぞ!」と選手に言い放ち、気持ちを引き締めさせたという。タイは決して簡単な相手ではないが、ホームで絶対的に勝ち点3が求められる相手でもある。

指揮官をはじめ多くの選手も口にする様に、UAE戦と大きく違う戦いになるはずで、多くの時間帯でボールを持つ側になる分、引いた相手をいかに崩せるかが勝負の鍵を握ることは確かだ。その意味では「(中盤の)三角形が大事になってくる試合」という清武弘嗣の言葉にも頷けるが、結局のところどれだけ崩してもゴールを奪えなければ意味をなさない。

引いた相手を崩せなかった象徴的な試合としてあげられる、15年6月15日に行われた二次予選のシンガポール戦は新チームの立ち上げから

3ヶ月という時期もあり、選手たちが指揮官の掲げるベクトルに忠実になりすぎて、リズムが単調になり、相手ディフェンスにとって守りやすい攻撃が多くなってしまった。それでも23本のシュートを記録しながら決められなかったことも事実だ。

相手の守備を崩すことが大事だが、ゴールを決めてこそ勝利につながり、評価を高めることもできる。最終予選でゴールゲッターとして最も頼りになる存在となってきたのが原口元気。ここまで4試合連続で得点をあげていたが、それもUAE戦でストップした。守備を含め、勝利のためにやるべきことをやった自負はあるものの、「後半にチャンスがありましたけど、ああいうところで一発で仕留めないといけない」と語る。タイ戦は再度、大事なゴールを決めてチームを勝利に導くチャンスになる。

大迫勇也の負傷離脱により、センターFWに誰を起用するか注目が集まる中で、最も有力視されるのは岡崎慎司だ。最終予選に入ってから得点を記録できておらず、また出場時間も限られる状況が続くが、「これまでそういうことが無かったことの方が不思議なぐらい」と割り切り、「その時に調子がいい選手が出て、そこでやるべきことをやっているということ」と変な焦りは感じさせないが、日本代表のW杯予選最多得点を持つストライカーには静かに闘志を燃やす頼もしさがある。

UAE戦で1得点1アシストを決めた久保裕也も「役割は変わらないと思いますし、攻撃の部分でチャンスを作って点に絡むのが仕事」と平常心を貫き、引き続きチャンスを与えられればやるべき役割をこなしながら貪欲にゴールを狙う姿勢を示す。「1試合だけじゃ結果を残したとは言えない」と気を引き締める久保にとってもタイ戦でのゴールは大きな意味を持つだろう。どちらかと言えば強い気持ちは内に秘めるタイプだが「自分のプレーがうまくいけば、最後にゴールというのはついてくると思う」と自信をのぞかせており、結果を出すことで主力定着をアピールする気構えがうかがえる。

タイ戦に向けての追加招集となった小林悠も「順番的には一番下だとは思いますけど、練習でしっかりアピールをして、試合に絡めるように。絡んだらチームのために力になれるようにしっかり準備したい」と意気込みを語り、最初のメンバーに入らなかったことについては「気持ち的にちょっと難しいところもありますけど、こういう準備をしていなかった時のほうが意外と出番が回ってきたりする」と気持ちを切り替えている様だ。

これまでは右サイドをメインに想定した形で招集されることが多かったが、今回は大迫の負傷もあり、センターFWで起用される可能性を指揮官から伝えられている。「真ん中に入ったら、体を張ってボールを収めることがすごく大事になると思うので。そういうところは意識していきたい」と語るが、もちろん狙うのはゴールだ。前線の中央でチャンスの起点を作りながら、得意の動き出しでタイミングよくラストパスを引き出すことができれば、ゴール前での高いシュートセンスが生きてくる。

UAE戦は出場チャンスが無かったものの「ピッチに出た場合は結果を残すために、心の準備をしておかないといけない」と語る浅野拓磨は当然ながら同年代の久保の活躍に刺激を受けている様子だ。「1つのチャンスを大事にしていかないといけないですし、今は追いかける立場ですけど、そのチャンスをものにできれば世界も変わる」。その転機がタイ戦で訪れる可能性もあり、いつ出てもゴールを奪いに行ける様に備えるはずだ。

「タイ戦で良いジョーカーになれる」と指揮官が期待する宇佐美貴史、二次予選からチーム最多の7得点をあげている本田圭佑も当然ながら”ゴールゲッター”の候補に入る。何より大事なのは勝つことだが、そのために誰がゴールと言う結果でチームを勝利に導くことができるのか。ここから先の起用法にも大きく関わる”競争”が待つ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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