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新たな成長曲線を見出した長友佑都がたどるサネッティの系譜とマルディーニの助言

河治良幸スポーツジャーナリスト

現在はロシアW杯の二次予選を戦っている日本代表だが、ここに来て強く感じるのが左サイドバックを担う長友佑都の“成長”だ。シンガポール戦は3点のゴールに直接絡んだわけでもなく、特に目立った活躍も無かったが、攻守に渡る気の利くプレーでチームを支えた。

先日にも筆者は『「戦力外」からスタメン復帰に行きついた長友佑都の継続力』という記事を書いたが、日本代表を取材していても長友の意識に変化が生まれているのをはっきりと感じる。

昨年の夏に行われたブラジルW杯での挫折が1つ大きな転機になっていることは確かだが、ハビエル・サネッティというインテルの大先輩がたどった系譜を継いでいる様にも見える。若き日に「トラットーレ(トラクター)」と形容された突貫的なドリブラーからチームを支える偉大な「カピターノ(キャプテン)」へと成長したサネッティは30代になってさらなる名声を勝ち取り、長くトップレベルで活躍した。

15日の代表練習後にその質問を投げかけると、長友は「まあ僕もサネッティという偉大な選手を見て来たので」と語り、こう続けた。

「昔のガンガン行っていたサネッティだけではなくて、チームのバランスも考えながら行く時は行く、大事な時はしっかりとカウンター対策をしたり、チームのために取り組む姿を見て、僕もそういう選手になりたいなと思ったので、そういう選手がチームにとって一番大事な、貴重な戦力になるんじゃないかというのは僕も学んだ」

これまでも「世界最高のサイドバックになる」というテーマを掲げてチャレンジしてきた長友だが、個の力を発揮して試合のヒーローになるだけでなく、地味でも様々な形で勝利に貢献し、タイトルや栄光をもたらせる選手こそ本当の意味でのカンピオーネだという意識に変わってきている。

「今の僕の考えでは自分が行きたい時に行って、自分が目立ちたい時にそういうプレーをやるだけじゃなくて、やっぱりチームとして本当に必要な選手になりたいなと。“長友がいるからこのチームはある”というぐらいね。それぐらい気のきく選手になっていきたいですね」

まさにサネッティという偉大な選手の系譜を受け継ぐ様に“新たな成長曲線”を描き始めた長友。そんな彼がもう1人、最近になって影響を受けたのはライバルチームであるミランの伝説的な左サイドバックだった。パオロ・マルディーニ。彼も若き日は才能あふれる大型サイドバックとしてもてはやされたが、名門クラブで勝利のメンタリティーを習得して多くのタイトル獲得に貢献し、最終的には熟練したセンターバックとして足跡を残した選手だ。

「イタリアのレストランでマルティーニとたまたまお会いして、その時に話をさせてもらったんですけど、その時にサイドバックとしてのプレーについて色々と話してくれて。そこで学ぶこともたくさんあった」

まさにセリエAの一時代を築いた2人の世界的なサイドバックから学んだ長友が、29歳という普通の選手なら年齢的にピークから下り坂になってくるところから、どういったキャリアを描いていくのか。そこにチームの勝利という要素が大きく関わってくることは間違いない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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