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猛暑が台風に影響すること

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
猛暑が続く日本列島と発達を続ける熱帯低気圧の雲(8月21日正午、ウェザーマップ)

 8月中旬は東日本で、過去最高の暑さとなり、猛暑の影響は海にも広がっている。日本近海の海面水温は記録的な高温で、今後、台風が日本に近づいた場合、勢力がより強く、大雨が長引くおそれがある。

東日本は過去、最も暑く

 最高気温38度、39度は尋常ではない暑さのはずなのに、毎日のように続くと、それが当たり前のように感じてしまいます。先日も、気温が30度を下回る予想を話したら、何を着たらいいのでしょうか?と聞かれ、驚きました。

 この猛暑は数字にもはっきりと表れ、今月中旬の平均気温は全国で平年を大幅に上回りました。とくに、東日本は平年との差がプラス2.9度と1961年以降で、最も高い気温です。

海面水温も記録的な高温

 この猛暑の影響は熱中症ばかりではありません。こちらは日本近海の海面水温を示した図です。

日本近海の海面水温分布図(8月19日):気象庁ホームページより(星マークと海面水温は著者が加えた)
日本近海の海面水温分布図(8月19日):気象庁ホームページより(星マークと海面水温は著者が加えた)

 ひとめ見て、これは!と驚いてしまいました。ピンク色で示された海面水温30度の範囲がこれほどまで広いのは記憶になかったからです。また、外洋の海面水温は31度が限界とされていることからも、水温の高さも際立っています。

 実際の海面水温を調べてみると、種子島・屋久島沿岸は30.42度(19日、速報値)あり、1982年以降では例のない高温です。

この異例ともいえる海面水温の状況は台風にどのような影響があるのでしょうか。

 台風の発生、発達には海の水温が大きく影響します。水温が高ければ高いほど、暖かく湿った空気が生まれ、それが台風の雲をより発達させるのです。

海面水温が高いと湿った空気が多く存在し、雨雲を発達させる(8月21日正午の地上天気図をもとに、著者が作成した)
海面水温が高いと湿った空気が多く存在し、雨雲を発達させる(8月21日正午の地上天気図をもとに、著者が作成した)

さらに気がかりなことも

 来週にかけての日本付近の大気の流れを予想した天気図を見てみると、高気圧が北・東日本で強く、日本の南で弱い。そして、高気圧の張り出しが北に偏っている影響で、偏西風(上空の強い西風)も日本の北を流れています。

500hPa高度予想図(8月26日~30日までの5日間平均)著者作成
500hPa高度予想図(8月26日~30日までの5日間平均)著者作成

 そうなると、高気圧が弱い場所で、台風が発生しやすい。さらに、台風が日本列島に近づいた場合、偏西風から離れているので、動きが遅くなりやすく、大雨や暴風が長時間続くことが考えられます。

【参考資料】

気象庁ホームページ:日本近海の海面水温、診断(2020年8月中旬)、2020年8月20日発表

福岡管区気象台ホームページ:沿岸域の海面水温情報(九州南部・奄美地方)

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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