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桜の開花発表 なぜ5~6輪以上なのか?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
桜の開花発表は5~6輪以上の花が開いたとき(写真:つのだよしお/アフロ)

 桜の開花は5~6輪以上。きっかけは2002年の記録的な早咲きにある。当時は数輪以上が開花の基準だったが、何輪咲いたら開花?の問い合わせが相次いだことで、2003年から今の基準となった。

過熱する桜フィーバー

 日本一有名な桜といえば、京都?吉野?それとも弘前でしょうか。開花の注目度からいえば、東京・靖国神社の桜でしょう。気象台の標本木となっている桜は樹齢80年ともいわれる老木で、1966年頃から観測用の桜として使われています。

 年々注目度が増す桜開花のニュース。目を凝らすように花一輪を追いかけるカメラが多かったこと。このときばかりは天気予報そっちのけで花一輪、また一輪と実況中継です。

以前は開花予想に注目  

 こんなにも開花発表が注目されるようになったのはいつ頃からか。以前は気象庁の桜開花予想に注目が集まっていたように思います。そういえば、2007年には予想に用いたプログラムにミスが見つかり、気象庁が陳謝する事件がありました。気象庁が2009年を最後に、桜開花予想をやめたことで、興味の対象が開花発表に移ったのかもしれません。

なぜ桜だけ5~6輪以上?

 気象台が発表する桜の開花は標本木で、5~6輪以上の花が開いた状態をいいます。「5輪以上でいいのでは?わざわざ5~6輪という必要があるのか」とよく聞かれるのですが、答えはわかりません。

 調べてみると、気象台が行っている生物季節観測の基準では「開花とは花が数輪以上開いた状態をいう」とあります。

 なぜ桜だけ「5~6輪以上」になったのでしょう?きっかけは記録的な早咲きにありました。

大阪の桜(標本木)はあと数日で開花? 3月23日:片平敦氏撮影
大阪の桜(標本木)はあと数日で開花? 3月23日:片平敦氏撮影

問い合わせが相次いで

 2002年までは「開花とは数輪以上」でしたが、2003年からは「開花とは5~6輪以上」になったのです。このとき何があったのか、当時を思い出すと、2002年は東京で観測史上最も早い3月16日に開花しました。そのため、予想が開花に追い付かず、本来ならば2回発表される予想が1回で終わってしまいました。

 さらに、何輪咲いたら開花なのか、と問い合わせも相次いだことで、これまで漠然と数輪以上だった基準が5~6輪以上と明確にされたのです。桜の木には数えきれないほどの花芽があり、こだわっても意味がないように思うのですが。

 誰でも容易に開花がわかるようになったことで、今のように花を一輪、一輪数えるような報道スタイルになったのでしょう。一方、満開の基準は今も変わらず、花芽の約80%以上が開花した状態をいいます。

【参考資料】

気象庁:「さくらの開花予想」発表回数等の変更について、平成15年2月21日

気象庁:さくらの開花予想用のプログラムの一部不具合について、平成19年3月14日

気象庁:気象庁におけるさくらの開花予想の発表終了について、平成21年12月25日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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