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#ソラコム』『#スイングバイIPO』『#KDDI』の探査衛星になぞらえ世界を見据えた上場戦略

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:SORACOM公式ブログ

日経平均が4万円を超え、新NISAの口座数は、2024年1月末で90万口座 増えている。現在は約1,700万口座に至る。そして、コロナ禍の長い冬を超え、IPOの春のブームが到来した感がある。

SBIホールディングス1,196万(+28万)
楽天証券      1,048万(+28万)
マネックス証券    256万9942(+31万8205)
auカブコム証券  166万915(+1万8568)
松井証券       152万2801(+1万1334)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-09/S8IQUJT0G1KW00

■KDDI傘下の『ソラコム』2024年3月26日上場<TYO: 147A>


『日本発のグローバルIoTプラットフォーム』を標榜する『ソラコム』が2024年3月26日東証のグロース市場へ上場した。創業から10年目となる。
https://soracom.jp/

出典:ソラコム
出典:ソラコム

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05199/b65b8c42/2727/4c62/9f40/533a465fe6d0/140120240325559046.pdf

https://blog.soracom.com/ja-jp/2024/03/26/3rd-stage-and-still-day-one/

ソラコム(SORACOM)は、クラウドネイティブなモバイル通信プラットフォームを提供する企業。

2014年の創業を第一段ロケットとして例えると、第二段ロケットが2017年のKDDIによる200億円の買収。そして、今回の2024年のIPOでKDDIの出資比率は65.67%から44.43%にまで下がり『連結子会社(親会社が持株比率の50%を占める)』から『持ち分法適用会社』となる。

ビジネスモデルは、主にIoT(モノのインターネット)デバイス向けのセルラー接続サービスを提供することだ。

 IoTデバイス向けのセルラー接続サービス。SIMカードやeSIMを提供し、データ通信やSMS送受信サービスを可能にする。この分野においてKDDIの傘下にいることは非常に大きなアドバンテージとなった。

ソラコム代表の玉川氏の出身企業の、『Amazon Web Services (AWS) 』などのクラウドサービスとの統合を提供。IoTデバイスからのデータをクラウド上で容易に処理、分析できるようにする。

□パートナー企業が商用サービスを開始し、SIMやデバイスが増えるほどインクリメンタル(増分)収益が伸び、事業規模が国内外に拡大すれば、リカーリング収益が伸びるという好循環を生んでいる。リカーリングが「繰り返される」を意味する通り、リカーリング収益には、通信やアプリケーションなど各種サービスの従量課金による収益が含まれる。玉川氏は「インクリメンタル収益はデバイスの納入時期によって上下するが、リカーリング収益は右肩上がりで着実に上がっている」と話す。実際、ソラコムの売り上げのうち、約70%をリカーリング収益が占めている。
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2403/27/news099.html

出典:筆者『ソラコム』ビジネスモデルまとめ
出典:筆者『ソラコム』ビジネスモデルまとめ


 ソラコムの強みは、IoTデバイスの接続と管理を容易にすることにあり、多様な業種の企業が効率的なIoTソリューションを構築できる環境を提供している。また、クラウドサービスとの統合により、データの収集から分析、活用までのプロセスをシームレスに行うことができる。
上場したことについて、調達資金を世界と戦うためのエンジニアの雇用に当てるということで、さらに世界を目指すという。
SIMビジネスでは、KDDIにとっても、新たなポートフォリオが自社の傘下からスピンアウトさせることによって拡大のエンジンを得られることとなる。

□ソラコムはガスの次世代計測器(スマートメーター)や決済端末などにSIMやIoT機器などを一元的に提供し、回線数は国内外で600万以上に達する。通信インフラのうち大量のデータをやり取りする中核部分を一般的なハードではなくクラウド上で構築し、安価に回線を提供できるのが特徴だ。
□海外売上高比率は3割を超えており、KDDIの高橋誠社長は「海外へのアプローチが多彩で、当社も見習いたい」と評する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC184BP0Y4A310C2000000/

出典:ヤフーファイナンス
出典:ヤフーファイナンス

https://finance.yahoo.co.jp/quote/147A.T?term=1d

昨日の初日の終値は1,338円。
初値は公開価格(870円)の1.8倍の1563円だった。本日はストップ高となっている。時価総額は707億円。 PER162.82倍 PBR16.4倍となった。

ソラコムの玉川憲社長最高経営責任者(CEO)は「株主や親会社のKDDI、社員のおかげでここまで来られた。『上場ゴール』ではなく、グローバルな成長を目指す」と抱負を述べた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC184BP0Y4A310C2000000/

https://soracom.com/ja/ir

■KDDIの惑星引力を利用した『スイングバイIPO』とは?

ソラコムの上場で目を引いた言葉が『スイングバイIPO』の文字列だ。聞いた言葉ないIPO手段なので脳内が『?』となった…。
『スイングバイ』はソラコムのエンジニアからの提案ワードだった。

出典:スイングバイIPOのイメージ 日経新聞
出典:スイングバイIPOのイメージ 日経新聞


巨大な惑星のKDDIの引力を利用し、VCのWiLのロケットエンジンを得て、『SORACOM』の探査衛星が未来へと向かうスタートを切った。

□『スイングバイIPO』という名称を考えたきっかけについて玉川氏は、「2017年にソラコムがKDDIグループに参画した後、8万回線から2年ほどで100万回線に伸び、思った以上に成長した」ことを挙げる。
□「さらにアクセルを踏むともっと成長できると考え、IPOも1つの手段としてご相談したところ、高橋さんもサポーティブ(協力的)だった。ただ、外から見ると、KDDIの中にソラコムが入って、出ていくと、ケンカでもしているのでは? と思われるので、ポジティブなコンセプトを考えてねと(言われた)。
□その後、2018年の年始に、その年のスローガンをチームで考えたとき、あるエンジニアが『スイングバイ』という言葉がいいと提案した」(玉川氏)
□ここで同氏の頭に浮かんだのが「スイングバイIPO」と考え方。「KDDIという大きな惑星の引力を使って成長したい、スイングバイとIPOをくっつけたら語呂がいいと考えて高橋さんに持ち込んだら『いいね』と言われた」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2403/27/news099.html

■『彼方へまで、飛ぶために。』

目的地は上場のずっとずっと先にある。

まだ生まれたことのない「日本発IoTグローバルプラットフォーム」になる。

そのためには、だれも成しとげたことのない方法で、成長を続けるしかない。

地球規模で人とモノが真につながりあった次世代のInternet of Thingsを叶えて、

世界中の人の暮らしをより豊かなものにする。

この思いを瞬時に理解し、冒険を共にしようと言ってくれたKDDI。

その大きな引力を使い、はるか彼方への成長の旅を描く「スイングバイ」という手法。

いちばん最初の発射台となってくれたベンチャーキャピタルのWiLも、

再加速のためのブースターとなってくれました。

この旅を、日本中が固唾を飲んで見守るような冒険にしたい。

かつて、日本の製造業が世界のプラットフォーム的存在となり得たように、

日本のIoTテクノロジーと、そして何より、

ベンチャーや大企業という壁を超えた人と人の志の共鳴は、

どんな時代だろうと、世界に通用することを証明したい。

今日は、そのスタートラインです。どうかご期待ください。

スイングバイIPOにて、ソラコム本日上場(2024年3月26日)。

出典:日本経済新聞広告
出典:日本経済新聞広告


クリエイティブ企画制作は、電通出身の齋藤太郎(さいとう・たろう)率いる『dof』が担当。
https://dof.jp/

『スイングバイIPOをテーマにした広告展開ということで、それを成し遂げたソラコム、KDDI、WILの3社の想いが伝わり、今後も日本で同じような事例が出てくるという願いを込めたクリエイティブを企画しました。提案まで1週間しかないというタイトなスケジュールでしたが、想いの詰まった新聞広告が出来たと自負しています』と齋藤太郎氏は語る。

ソラコムのブログには広告のボツ案も掲載。
https://blog.soracom.com/ja-jp/2024/03/26/3rd-stage-and-still-day-one/


■KDDI<9433>の買収戦略も昔とは変革してきている

出典:ヤフーファイナンス
出典:ヤフーファイナンス


KDDIの時価総額 10兆5,395億円 @4,577円
PER14.32倍 PBR1.85倍
https://finance.yahoo.co.jp/quote/9433.T?term=1y


一方、KDDIの買収戦略もかつては、自社の本業のネットワークが主体だったが、近年はローソンへの5,000億円やAIのイライザなどとKDDIと直接的ではない事業への出資が積極的だ。
明らかにKDDIの投資戦略も大きく変わりはじめているのがわかる。
https://www.kddi.com/corporate/kddi/history/

やはりそれらの投資の源泉となる資本が、金融事業の伸びによるところが大きい。
純資産にあたる資本が5兆7,729億円もの潤沢であるのも投資戦略を多角化させている要因のようだ。

2024年3月期第3四半期決算説明会(2024年2月2日)より
https://www.kddi.com/corporate/ir/ir-library/presentation/2024/

出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会
出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会

出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会
出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会

出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会
出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会

出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会
出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会


出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会
出典:KDDI 2024年3月期第3四半期決算説明会

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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