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総務省、LINEヤフーついに行政指導へ。ネイバー依存から脱却なぜできない?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

KNNポール神田です。

当『Yahoo!ニュース』のメディアを運営するLINEヤフーによる、個人情報の流出問題で行政指導がおこなわれることとなった。

□無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が不正アクセスで流出した可能性がある問題を受け、松本総務相は(2024年3月)5日、「利用者の利益が確実に保障されるよう行政指導を行うこととした」と述べた。運営するLINEヤフーに対し、電気通信事業法に基づく行政指針を行う方針だ。
□LINEヤフーの出沢剛社長に文書を手渡すとみられる。流出した情報には、無料通話の日時など、同法で定める「通信の秘密」に該当する約2万件の情報が含まれていた。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240305-OYT1T50026/

■『行政指導』と『行政処分』の違いは?

総務省によると… 
□行政指導とは、役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように(又は行わないように)具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)をいいます。
□行政指導は処分ではないので、特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすことはありません。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/faq.html


つまり、行政指導は『お願い』であって、行政処分の『命令』ではないものの、上場企業にとって『負』のイメージは、手痛い『指導』であることに変わりない。
空前の日経平均4万円時代だが、株価もふるわない…。PBRも1倍割れだ。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/4689


■今回の行政指導の原因は、韓国IT大手ネイバーのサーバーへの不正アクセス

LINEヤフーは2023年11月、LINEの利用者や取引先などに関する約44万件の情報が、外部に流出した可能性があると発表した。その後の調査により、追加で約7万9千件が流出した恐れがあることが発覚し、計約51万件に膨らんだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f690d04471e25d83b1e37354a261c12b50ff0bfa

これは、LINEヤフーの実質33%の株主の韓国のIT大手『ネイバー』のサーバへの不正アクセスが原因だった。


■韓国のネイバーにモノが言えないLINE体質を持ち続けるLINEヤフー

今まで、何度もLINEヤフー出澤社長は、合併前のLINE時代から、ネイバーによる情報漏えいで謝罪と改善宣言を繰り返してきている。

2021年3月25日 2年前
 メッセージアプリ「LINE」のユーザー情報のデータ管理を巡る問題で、LINE社が自治体向けに当初、「個人情報は日本で管理している」などと説明し、出澤剛社長が「説明が不十分だった」と謝罪していたことが分かった。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2103/25/news158.html

なによりも問題なのは、2年前の2021年の会見で、『利用者の個人情報は国内に集約し、海外からアクセスできない状態になる』と謝罪と国内集約をコミットメントしていたからだ。

2年前の謝罪から、2023年10月、ヤフーの解散統合で小澤隆生社長は退任し、LINEヤフーとなり、川邊健太郎社長が会長となり、出澤剛社長が実質トップとなっている。
川邊健太郎社長と出澤剛社長がツートップの体制による、ヤフーとLINEのPMI活動は、想像よりも難しく、出澤剛社長のワントップ体制となったばかりだ。

長年、ウォッチしている筆者にとって、なぜにここまで、LINEヤフーは、実質の親会社ネイバー(Aホールディングス50%)に対して強く遺憾を示せないのが理解できない。そしてソフトバンクKKも(Aホールディングス50%)も、ネイバー側に依存しない体制、少なくともデータの保有は国内のみという体制になれないのが不思議で仕方がない。

当然、ヤフーもLINEも膨大なデータを扱うのですべて統合するというのは無理であるが、国内でサーバ管理を英断したのだから、それを保持するのは当然の社会インフラと化しているLINEヤフーの責任と義務ではないだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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