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なぜ?米Appleは、年利4.15%のゴールドマン・サックスとの金融事業の提携を解消するのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

突然、大きなスクープが飛び込んできた。

WSJが独自記事でAppleがゴールドマン・サックスとの提携を解消するというのだ。

出典:米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
出典:米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

https://www.wsj.com/finance/banking/apple-pulls-plug-on-goldman-credit-card-partnership-ca1dfb45

■Appleが、自社のクレジットカードサービス「Apple Card」などの消費者向け金融サービスにおいて、パートナーであるゴールドマン・サックスとの提携を全面的に解消すると米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が(2023年)11月28日(現地時間)に報じた。
■『Apple Card』以外にも、年利4.15%という高利回りで話題となったAppleの預金サービス(ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用)も含まれている。
■「Daily Cash」と呼ばれる最大3%の還元施策などが話題になった。また、23年4月に開始した預金サービスは4カ月で預金額が100億ドルを超えたと発表
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2311/29/news115.html


■なぜ?Appleはゴールドマン・サックスと提携解消したのか?


『Apple』は今後、12〜15ヶ月以内での提携解消を『ゴールドマン・サックス』に提案した。Appleのエンドユーザー向け金融事業全般に及ぶという。


第一に、カスタマーサービスとユーザー体験に関する問題が報告されていたことに起因する。多くのユーザーから、『アップル貯蓄口座(アップル・セービング・アカウント)』と『アップルカード』について、資金の引き出しに問題があったり、払い戻しが処理されなかったり、取引が何度も拒否されたりといった困難が報告されている。これらの問題は『米国消費者金融保護局(the U.S. Consumer Financial Protection Bureau )』によるゴールドマン・サックスへの調査を開始し、両社の間に緊張が走っていた。
一方、ゴールドマン・サックスの幹部は、規制当局の監視のせいだとアップルを非難した。また、ゴールドマン・サックスは、わずか9ヶ月間で12億ドルという巨額の損失を招いてしまった。

そして、第二に、この『Apple』との提携は『ゴールドマン・サックス』にとって財務的に有益ではなかったことである。ゴールドマン・サックスは、加盟店がアップル・カードを受け入れるために支払う手数料の一部など、通常受け取れるはずである手数料を徴収できていなかった。このため、ゴールドマン・サックスは予想以上のコストを負担を強いられることとなった。

このカードは、年会費、海外送金手数料、延滞料が無料という特典に加え、『アップルペイ』で『アップルカード』を使って支払った場合、すべての利用額に対して2%のキャッシュバックアップルストアでのすべての買い物に対して3%のキャッシュバックなど、利用者に魅力的な特典を提供している。

そして、第三に、両社には文化の違いが明確にあった。『Apple Cardプロジェクト』に携わった元従業員は、アップルの技術的アプローチとゴールドマン・サックスの銀行文化を融合させるという課題に対して、経営幹部が準備不足であったと述べている。

また、『ゴールドマン・サックス』は消費者金融部門からの撤退を検討しており、アップルとの提携を『アメリカン・エキスプレス』に譲渡する可能性についても議論していたと報じられている。

しかし、『アップル・カード』は、アップルとゴールドマン・サックスの契約により、少なくとも2026年までは『マスターカード』のネットワークで運営されなければならず、アメリカン・エキスプレスは独自の決済ネットワークなので移管するとしても時間がかかる。
『アップル・カード』を引き継ぐ候補として、もう1つの発行会社『シンクロニー・ファイナンシャル(Synchrony Financial)』が挙げられている

CNBC』によると、『ゴールドマン・サックス』との提携解消は今後12~15ヶ月の間に行われる見込みで、『アップル・カード』や『アップル・セービング・アカウント』を含む消費者向け提携全体が対象となる。

100億ドル(1.5兆円)の預金額の行方が気になる。年利4.15%なので、利息だけでも、年間4.15億ドル(622億円)が必要となるからだ。好景気に湧くアメリカでの高金利でのビジネスだが、金融に対する企業の文化の違いが障壁となっているのかもしれない。

■ApplePayの発表は2019年


■米Appleは(2019年)3月25日(現地時間)、同社のスペシャルイベントでクレジットカードサービス「Apple Card」(アップルカード)を、開始すると発表していた。

Appleにとってクレジットカード業界や金融という業界は、門外漢であったが、VISAやMASTERなどの『国際ブランド』の下流ではなく、スマートフォンを経由しての決済においては、プラットフォーマーとして『国際ブランド』の上流に位置することにもなる。
2014年の『Apple Pay』スタート時から、『イシュアー(カード発行会社)』側から手数料を取るという今までになかったビジネスモデルを実現していた。ある意味、Appleは業界の慣習を変えてしまったともいえる。イシュアーにとって、アップルに手数料を渡したほうが、事故率を軽減できるのであれば、保険をかけているようなものだった。イシュアーはゴールドマン・サックス 国際ブランドはマスターカードだ。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8559f56664e03256d07728fe176f1907e102dbfe

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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