『Apple Vision Pro』が2024年に3,499ドルで登場、新世代HMDの勃興
Appleが全く新たなカテゴリーの製品を発表した。
Apple初のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の『Apple Vision Pro』だ。
価格は、予想されていたとおり 3,499ドル(48万6,361円 @139円)と50万円近い高価なデバイスだ。
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最大の特徴は、『AR:拡張現実(Augmented Reality)』デバイスであり、ゴーグルをかけても、他者から自分の表情がシースルーのように見えているところと言えるだろう。カメラが表情をディスプレイに表示しているという技術によって成立している。
CEOのティム・クックは、このカテゴリーを『空間コンピューティング(Spatial Computing)』と名付け、『新しい旅がまさに今はじまりました』と語った。
そう、HMDデバイスを作るのではなく『空間コンピューティング(Spatial Computing)』という新たな分野への最初のデバイスとして投入したのだ。
■『三次元インタフェース』と『EyeSight』
直感的なコントロール方法として、『目』と『手』と『声』というインタフェースで操作する。これも見ている視線をトラッキングセンサーや、なにをクリックしようとしているのかをカメラやセンサーが手の動きとして読み取ることができるから実現できたインタフェースだ。
そして、HMDをかけるとカメラが表情を読み取り、外型のディスプレイに映し出し、あたかもシースルーのように表情が見えるところが『EyeSight』と呼ばれる機能だ。
そして、映像などのコンテンツに没入している時は視線を隠すという仕掛けだ。
HMDをかけて孤独な世界に浸り込んでいる状況ではないようだ。
実際にこのデバイスをかけた人を見たときに、どれだけの違和感を感じるのかは、まったく未知の世界だ。人類は偽物の目を見抜く力は相当持っていると信じたいからだ。『空間コンピューティング』の初代作品として、期待せずにいたほうがショックを受けないですみそうだ。期待値を高めすぎると、落胆する度合いも上がる。
新カテゴリーの製品へは『人柱』としての自覚を持って購入すべきだろう。
■『Apple Vision Pro』を装着しながら、ウェブ会議にも参加できる
ウェブ会議などで、相手の顔が見えるのは理解できるが、自分の顔はどうなるのか?これが、とてもユニークな方法で解決しているのだ。Apple Vision Proをかざして、自分の表情を読み取り、学習させるのだ。そして、自分の表情が『デジタルPersona』として内部カメラによって、リアルタイムに生成され、会議の相手たちにはそれが映し出されるという。これは精度もふくめて、ぜひ体験してみたいものだ。そう、くれぐれも過度な期待は禁物だ。
■『空間再現ビデオ』で3D写真・動画撮影が可能
2,300万ピクセルの『3Dカメラ』で撮影し、『空間オーディオ』としても記録されるのが『空間再現ビデオ』だ。撮影中は相手にも撮影している状態がディスプレイに表示されるという。
■『AppleWATCH』で培った要素技術も随所に
ティム・クックCEO体制になってからの最初のカテゴリーが『AppleWATCH』である。随所にその『AppleWATCH』で培った『ウエアラブル』で、必要な要素が組み込まれていると感じた。世界で一番、ウェアラブルデバイスを販売しているAppleならではのユーザーからのフィードバックが培われている。
『デジタルクラウン』はAppleWATCHで実証済みの使いやすさ。
こちらもAppleWATCHのバンドで実証済み。
そして、既存のHMDによくある発熱対策も施されているようだ。
■Macを見つめるだけでMacの画面を映し出し、操作ができる機能も!
Bluetooth接続でキーボードやマウスももちろん使えるが、Macを見つめるだけでMacの画面を映し出し操作ができるのは、ひとつのキーボードやマウスでコントロールできる『ユニバーサルコントロール』の技術を持っているからだろう。
Macの画面を大画面で写したいかどうかは疑問ではあるが、様々な『アプリ』を自分の視界の中の空間に並べながら、Macの画面も混在させるというのはとてもユニークなアイデアだ。
さらにAR技術ならではの、現実の世界とも融合できるので楽しい『デスクトップ』環境、いや独自の『AR』環境が実現できそうだ。
筆者は長年、Appleの発表会を欠かさずウオッチしているが、近年では、一番ワクワクする発表だった。『M1』『AppleWATCH』もあったが、『iPad』以来といっても過言ではないほどの衝撃を受けた。
そしてここまで時間をかけて登場させたAppleの本気度も十分にうかがえた製品、いや、むしろ意欲的な『作品』のように見える。
■3,499ドルの価格について
ただし、価格の高さは否めない…。大ヒットする製品ではない。
しかし、これだけの設計を見る限り、売れる価格帯を考えて機能をそぎおとして搭載したのではなく、現在、必要な機能をすべて盛り込み、原価ギリギリにしても、この価格になってしまったと考えるのが正解だろう。
おびただしいほどのカメラやマイクやセンサーがこのHMDの中に搭載されているからだ。カメラだけでも12カメラが搭載されている。しかし、Appleほど、これらの部品を大量生産で安く調達できる企業も地球上には存在しない。
5年後には、13万8,000円で登場するかもしれないが、その将来価値を待つ間の『経験的価値』の方が十分に高いと思う。
新たなテクノロジーから受ける福音に満ちている。不足な部分は時間が補正していってくれることだろう。
『M2チップ』と『R1チップ』が搭載されている。
さらに『LiDAR canner』に『TrueDepth Camera』 が『空間コンピューティング』を支える。
価格の高さは購入する層を限るのかもしれないが、それらの人柱となる購入者からのフィードバックを得て、すこし手の届く価格を2年後、そして誰もが買える価格を3年後と長い期間をかけてこの『空間コンピューティング』という市場を形成していくことだと思う。
安易に爆発的なヒットを狙うのではなく、安定した供給と継続的な市場形成、技術移管もふくめての一大プロジェクトだ。
単なるゲームデバイス、VRデバイスではなく、新たな『空間コンピューティング』という新・市場をつくるという答えが『AR』デバイスの『Apple Vision Pro』だった。
twitterにも元Appple社員が、解禁日で開発にかかわったことを言及している…。
#ユーザーが実際にクリックする前に何かをクリックしようとしていると予測することです とあった。
『3年半在籍し、2021年末に退職したので、この 2年間ですべてがどのようにまとまったかを経験するのが楽しみです。何が採用され、その後何がリリースされるのか非常に興味があります』
『全体として、私が行った仕事の多くは、ユーザーが没入型体験をしているときの身体と脳のデータに基づいて、ユーザーの精神状態を検出することに関係していました。
つまり、ユーザーは複合現実または仮想現実体験の中にいて、AI モデルは、ユーザーが好奇心を感じているか、心がさまよっているか、恐怖を感じているか、注意を払っているか、過去の経験を思い出しているか、またはその他の認知状態かを予測しようとします。そしてこれらは、視線追跡、脳の電気活動、心拍数とリズム、筋肉活動、脳の血液密度、血圧、皮膚コンダクタンスなどの測定を通じて推測できます。
特定の予測を可能にするためには多くのトリックが含まれており、私が名前を挙げたいくつかの特許で詳しく説明されています。最も優れた結果の 1 つは、ユーザーが実際にクリックする前に、何かをクリックしようとしていると予測することです。それは大変な仕事であり、私が誇りに思っていることです。クリックする前に生徒が反応するのは、クリック後に何かが起こることを期待しているためです。したがって、ユーザーの目の動作を監視し、リアルタイムで UI を再設計することで、ユーザーの脳でバイオフィードバックを作成し、この予測的な瞳孔反応をさらに生み出すことができます。目を通して見る粗雑な脳内コンピューターインターフェイスですが、非常にクールです。そして、私はいつでもそれを侵襲的脳手術よりも優先します。』