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HUAWEI WATCH GT とApple WATCH の『ラグジュアリー文化』の差

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
2019年4月23日発表のHUAWEI WATCH GT 出典:HUAWEI

KNNポール神田です。

□ファーウェイは(2019年)4月23日、ウェアラブル端末の新製品として「HUAWEI WATCH GT」の46mmモデル新色と42mmモデルを発表した。価格はオープンで、税別の実勢価格は、46mmモデル新色が2万2880円前後、42mmモデルが後日発表となる。46mmモデルを4月26日に、42mmモデルを5月下旬に発売

□新製品はベルトをApple Watchでも採用しているフルオロエラストマーベルトに変更。

□カラーは、46mmモデル新色がダークグリーンとオレンジ、42mmモデルがブラックとホワイトと、それぞれ2色を用意。

□バッテリ持続時間は、46mmモデルが通常使用で2週間、最大稼働で30日、GPS連続使用で22時間。42mmモデルが通常使用で1週間、最大稼働で14日、GPS連続使用で10時間。

出典:「HUAWEI WATCH GT」の新色&小型モデルが登場、新素材で装着性が向上

HUAWEI WATCH GT サイト

HUAWEI WATCH GT 現行ラインナップ 出典:HUAWEI
HUAWEI WATCH GT 現行ラインナップ 出典:HUAWEI

https://consumer.huawei.com/jp/wearables/watch-gt/

サイトの作りも、ビデオのスタイルもどこかで見たような既視感でいっぱいだ…。

■『パクリ』のスタイリングのHUAWEI

『ロレックス ミルガウス(1956年)』

https://www.rolex.com/ja/watches/milgauss.html

時計好きな人ならば、今回の46mmラインの『ダークグリーン』のフェイスは、あのロレックスの『ミルガウス』を意識しているのがよくわかる。色使いでピンと来るはずだろう。似て非なるものというのはおそらく実物を見ても感じると思うが、一瞬でもおや?と思わせるところがHUAWEIのマーケティングなのだろう。

『ロレックス デイトナ(1963年)』

https://www.rolex.com/ja/watches/cosmograph-daytona.htm

そう、HUAWEIの時計は一瞬、普通の『機械式時計』に見えるところが良いのだ。実物をまだ見ていないが、写真だけで見て選んではいけないのは確かだ。旧モデルで感じたことは、機械式時計には『日付』『文字盤』『短針』『長針』『秒針』『サファイアガラス』と6層ものレイヤーと内部構造にはさらなる層で構成されている精密機械なのだ。さらに『デイトナ』のようにその中に別の時計を3つも埋め込むとさらに緻密で複雑な構造となる。機械式時計のマニアはそんな時計の中のコチコチと時を刻み続ける『小宇宙』に魅力を感じる。

その『機能』はどこにもなく、スタイルだけを平気で寄せてくるのが、さすがの中国企業のHUAWEIだ。今からHUAWEIのミルガウスもどきを見るのはとても楽しみだが…。

『スマートウォッチ』には機械がないのでそんな歯車のレイヤー層は必要がない。だからガラスの下は、フラットなディスプレイだから、写真で見るのと実物を両眼の水晶体を経た網膜で感じるのとでは雲泥の差がある。機械式時計が好きな人からは『おもちゃ』にしか見えない。だから、高額な機械式時計ユーザーは、おのずからスマートウォッチが必要な場合は、AppleWATCHを選ぶだろう。

しかし、『時』を正確に知るだけならそこはこだわる必要がない。しかし、時計の価値はもはや、正確な時を知る事はどうでもよいことだ。むしろ、少しずれるくらいのほうが愛着がわくほどだ。持っていて、機械が躍動していることがとても重要なのだ。時計の機能プラススマートウォッチでリーズナブルであれば、HUAWEI WATCH GTはありだ。

もはやスマートフォンという『懐中時計』で時を知ることができるので、『腕時計』としては、自分の体の中で起きている『生体時計』としての『センサー』の価値に変わってきた。『生体センサー』の価値を持ちながら、普通の時計に見えるという価値をHUAWEIは提供している。

■ナイキからエルメスまでのブランドロイヤリティを築くAppleWATCH

AppleWATCHは誰がどう見ても、Apple WATCHである。ラグジュアリー感あふれるHERMESのベルト仕様からナイキ仕様まで、Apple WATCHは世界で一番売れているスマートウォッチであることに間違いはない。そして、あの角のとれた四角い時計のデザインは、第一世代から続くデザインは第4世代かどうかもわからないようにできている。これがAppleのブランドのデザインだ。新しい、古いを、ユーザー本人以外にはわからないようにしている。

■HUAWEI WATCH GT の普通の時計にみえる魅力

一方、HUAWEI WATCH GTは、じっくり見ないと、スマートウォッチとは、気づかない従来の時計のデザインを踏襲している。そして、時計のどこにもHUAWEIの文字すら、発見することができないのだ(※実はベルトに刻印されている)。そう、HUAWEIのユーザーは、スマートウォッチをしているとは思われないスタイリングを持てるのだ。スマートウォッチだから、フェイスの表情は自由に変化させることができる。多機能時計の雰囲気を持ちながら、多機能時計よりもリーズナブルな価格で販売する。

そして、AppleWATCHをそろそろ欲しいと思っている人をターゲットに作っていることがよくわかる。HUAWEIは、いつもライバル製品よりも機能を上回り、ライバル製品よりも安いというラインで製品のポジショニングを作り続けているからだ。

■他は一切真似ないAppleと他を徹底して研究しつくすHUAWEIの文化の差

AppleWATCHの最大の弱点はバッテリーの持続時間だ。最大18時間。時計としては毎日充電しなければならない。一方、HUAWEI WATCH 46mmはGPS連続使用で22時間(通常2週間)を実現している。『時計』のみの機能を考えたときには、Appleは『自動巻き時計以前の時計』であり、HUAWEIは、自動巻きの時計の感覚に近づいてきた。2週間チャージしなくてよい時計で、デザインがミルガウスもどきは、とても気になる。どちらがどうというのではなく、これは、企業のラグジュアリー文化の明確な差である。

他は一切真似ないAppleと他を徹底して研究しつくすHUAWEIのちがいだ。

好き嫌いで選ぶ、機能で選ぶ、価格で選ぶ、スタイルで選ぶ、バッテリーの駆動時間で選ぶ、同じスマートウォッチでも全く別物だからチョイスはたくさんあって良い。

そして、最新スマートウォッチとしての機能は、待てば待つほど、いくらでも新しいく登場してくる。しかし、いつ買えばよいかがわからない…。いや、もはや、フリマがあるので、新しい製品ならば、2割引きで買い取る人がいるので手数料を払っても新しいものを買って、経験する価値はあるかと思う。

そうやって、筆者は新しい製品を買い続けては、3日後にはメルカリにドナドナしてしまう日々を過ごしている…。そう、新製品を3日間だけレンタルする感覚なのだ。まもなく10連休なので、スマートウォッチをして10日間だけ走ってみたら、体がどうなるのか?という体験もしてみたくなっている…。

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ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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