アップルの未来をファション業界役員人事から予測してみる

KNNポール神田です!

アップルの現在の役員一覧
アップルの現在の役員一覧

https://www.apple.com/jp/pr/bios/

「iPhone6」の発表・発売がカウントダウンされると共に、再び「iWatch」と勝手に呼ばれている(笑)腕時計型端末への噂が人事を元に憶測されだしている。

米アップルは、仏LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下のスイスの高級時計メーカー、タグ・ホイヤーから幹部を引き抜いた。 今秋の投入が見込まれる腕時計型端末「iWatch(アイウォッチ)」の販売を支援するとみられる。タグ・ホイヤーは4日、販売担当バイスプレジデント、Patrick Pruniaux氏が退社し、アップルに移ることを明らかにした。

出典:アップル、タグ・ホイヤー幹部を引き抜いたワケ 「iWatch」発売のための準備か

さらに、iWatch関連人事では、スポーツや医療端末関係者も引きぬかれている。

アップルのiWatch開発に関しては、これまでナイキのジェイ・ブラーニック(Jay Blahnik)氏、医療端末メーカーのバイタル・コネクト(Vital Connect)出身のラヴィ・ナラシムハン(Ravi Narasimhan)氏、同じく医療端末メーカーのマシモ・コーポレーション(Masimo Corporation)出身のマイケル・オレイリー(Michael O'Reilly)氏などがフィットネスや医療関連の専門家として同社に引き抜かれたことが明らかになっている

出典:アップル、タグ・ホイヤーから幹部引き抜き - iWatch販売責任者に起用か

「Nike+ FuelBand」(日本語版記事)の開発にかかわった重要人物を2名、採用している。デザイナーだったベン・シェーファーと、アドヴァイザーだったフィットネス・インストラクターのジェイ・ブラニクだ。

出典:バーバリーCEOがアップルへ移籍:使命は中国と「iWatch」?

これだけの人事情報だけでも、アップルという会社が、スティーブ・ジョブズCEOの頃のすべて内製デザインおよび外注ファブレス工場で作るのではなく、外部からの叡智をかき集め、内製を築くティム・クックCEO時代への変遷と感じることができる。アップルという会社の人事が、我が社の人事よりも気になるアップルフリーク層は多いと思う。ボクもその1人だ。それだけ今後の未来の製品やサービスを予期される人事がなされているからだ。

さらに、

「世界の腕時計市場の規模は、すべてひっくるめて600億ドル。その内の10%のシェアを獲得できれば、Appleには売上60億ドルの新規事業に」

出典:Apple iWatch Seen as '$6B Opportunity'

ティム・クック体制になってからは、社内というよりも、外部の叡智を集約する動きが、一弾とスピードアップしている。ティム・クックCEOにとって、iWatchは初の自分が手がけるプロダクトカテゴリ-なので、それだけ用意周到なのであろう。当然、その後のウェアラブル・マーケットのナンバーワンブランドを維持することが目標だ。

2014年の5月はビーツエレ25億ドル(2500億円)とビーツミュージック5億ドル(500億円)の買収を発表し、創業者のレコーディングエンジニアのジミー・アイオビンとDJかつラッパーである、ドクター・ドレーをアップルの重要ポストに迎え入れた。

同じく、2014年5月には、中国などの新興国市場で成果を見せた元バーバリー社(1856年創業 英国アパレル老舗)のCEOアンジェラ・アーレンツ女史が、アップルのリテール&オンライン部門のトップに招聘されている。

http://www.apple.com/pr/bios/angela-ahrendts.html

バーバリー社のCEOもアップルの役員に
バーバリー社のCEOもアップルの役員に

アーレンツ女史は、山陽商会がバーバリーブランドを失うきっかけとなった張本人でもある。それだけ、ラグジュアリーブランドに対する意識が高い役員であることは明確だ。

クックCEOは、2013年に、イヴ・サンローラン社のCEO(元ランバンCEO、元ニナ・リッチCEO)、ポール・ドヌーヴを招聘し、特別なポジションにつけているという。ドヌーヴ氏は、1990年代は、アップルヨーロッパ社員からファション業界へ転身し、2000年代は、クレージュ、ニナリッチ、ランバンと、ファンション業界に身を置いてきた。

YSLのCEOポール・ドヌーブもアップルへ招聘
YSLのCEOポール・ドヌーブもアップルへ招聘

しかしながら、このファッション業界へのアプローチは、クックCEOからではなく、実は、ジョブズCEOの頃の1999年の当時GAP、現 J.クルーのCEOであったミラード・ドレクスラーへの取締役会への招聘からスタートしていた。J.クルーのCEO ミラード・ドレクスラーは、GAPのCEOを兼ね、「バナナ・リパブリック」を買収し「オールドネイビー」を育ててきた。J.クルーは、ユニクロの柳井社長が最も欲しがったブランド企業でもあった。

GAP、Jクルーを再生させたミラード・ドレクスラー アップル外部取締役
GAP、Jクルーを再生させたミラード・ドレクスラー アップル外部取締役

社外取締役に各業界の叡智をアドバイザーとして置くことはジョブズ時代からのものでもあったのだ。現在のアップルとグーグルの関係からは考えられないが、2006-2009年8月3日まで、Googleの元CEOのエリック・シュミットもアップルの取締役であった(今からたったの5年前の話である)。

これらの、ファッション業界のブランド戦略家から、クックCEOが何かを得ようとしているのは明確だ。機能とデザインで差別化しにくくなった成熟期へと至る製品群の中で、いかに「アップル」というブランドを再構築するかという事が最大の課題なのだろう。現在のハイテク・ブランドとしてのアップルではなく、ウェアラブル化し、持つことのこだわりに対するブランド・ストーリーがさらに重要となってくる。

かつて、セイコーのクオーツ時計が、スイスの機械時計を駆逐しかけた1970年代。人々はセイコーの、ハイテクに一時は心を奪われたが、量産化され安くなることにより、そのブランドは価値を失いはじめた。反対に1990年に入り、時間の全く狂わない時計よりも、わずかに時間が狂う、そして機械がコチコチ動く人間的に感じる機械式時計に再度熱狂した。クオーツ時計は、現在全時計市場の75%のシェアを持つが、売上シェアでは25%の機械式時計が75%を占めている。アップルが目指そうとしているのは、きっとこの売上シェアにおけるカテゴリーなのだろう。

果たして、アップルはiWatchで、ロレックスのブランドに匹敵する時計を作ることができるのだろうか?そう、便利な機能と高級時計とでは、性能や機能よりも、そのモノ自身のストーリーやブランド力が重要なのである。その物語性をアップルという企業が生みだすには、さすがに、進化の激しいファースト・ジェネレーション製品ではなかなか難しい。しかし、クックCEOの時代でなすべきことは、パテック・フィリップの「永久修理」であり、

世界初の「オイスターケース」と「パーペチュアル」を生み出したロレックスの伝統と機能であり、それを持つことの悦びが機能に勝らなければならないのだ。

ITプロダクトもようやくそんな時代に到達したことなのだろう。反対に技術や進化が鈍化している時代ともいえるのだろう。