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『iPhone SE』の後継機種として4.8インチ『iPhone XE』の名称の謎

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

□アップルは2020年に5.42インチの小さめのiPhoneの発売を計画中であると報じられたが、それを下回る4.8インチの小型モデルを開発中であるとのニュースが浮上した。

□iPhone SEの後継機的位置づけのこの端末は、「iPhone XE」という名称になるという。噂される5.42インチ端末のスペックの情報は少ないが、今回の4.8インチ端末に関しては、より細かなディテールが報じられている。

□「フォックスコンのインド工場の関係者から得た情報」として、このニュースを報じたPC-Tabletによると、XEはX やXSと同様なベゼルレス仕様で、ノッチ部分にFace IDを搭載し、リアカメラはXSやXRと同様の12メガピクセルだという。また、チップはA12 Bionicを用いる。

□PC-Tabletによると、アップルは今年9月にXEを発表する予定で、同時に「iPhone XI」や「iPhone XI Plus」と呼ばれる機種が登場するという。

出典:iPhone SEファンに朗報、4.8インチの「XE」が今年600ドルで発売か

■ベゼルレスで4.8インチならば『iPhone SE』の筐体が維持できそう

ベゼルレスにすることによってSEの筐体におさまるかもしれない 出典:Apple
ベゼルレスにすることによってSEの筐体におさまるかもしれない 出典:Apple

4.8インチのiPhone SEって、一瞬イメージがしにくいが、iPhone8 や iPhone7の4.7インチの画面サイズを iPhone SE 4インチの筐体に押し込んだイメージで考えると想像がつきやすい。ベゼルレスにすることによって、有効な画面サイズを筐体に押し込めることができるのだ。iPhone8Plus 5.5インチよりも小さなiPhone XやXSの5.8インチが登場したように。ここでもベゼルレスのマジックに期待したいところだ。

5.5インチのPlusの筐体よりも小さい5.8インチ 出典:Apple
5.5インチのPlusの筐体よりも小さい5.8インチ 出典:Apple

いままで、『iPhone SE2』と噂されていた情報と唯一違う点が、『iPhone XE』という『名称』に言及している点が今までの噂の情報と一線を画している。

スペックや外寸などは、世界で一番の数千万台規模の同一モデルをサプライチェーンで作っているAppleだからこそ、情報の漏洩はいたしかたない。しかし、名称のリークは極めて珍しいのではないだろうか?『iPhone XI』や『iPhone XI Plus』というような『連番』からの推測される名称はよくあるが、固有名詞での『iPhone XE』は、本体を作っている側ではなく、印刷の伴うパッケージ側の最終段階の工程

かもしれない。

https://pc-tablet.com/ (英語)

https://pc-tablet.com/an-apple-iphone-xe-is-in-the-making-for-q3-2019/

■売れるものは売りだすという方針へ変更か?

Appleは、ついこの間まで、ユーザーが欲しがる商品を、あえて製造せず、販売しない企業であったはずだ。むしろ、Appleが提案するより良い製品で、ユーザーを新しい市場へと牽引してきた企業だ。しかし、このところのラインナップを見ていると、忘れていたかのようにディスコン製品と思われていた製品群をリニューアルさせてきている。しかも、昔の名称でだ。『MacBookAir (2018)』『iPad Air (2019)』『iPad mini (2019)』という具合だ。もはや、同じ名称で登場してくるので、『iPhone SE (2019)』となるような気がしてならないのに『iPhone XE』は異例だ。※(西暦部分)はユーザーが間違わないように勝手に付け足している名称だ。

■今回の『iPhone XE』の価格は600ドル(6万円以上)から

『iPhone SE (2019)』でも良いところに、『iPhone XE』という名称の噂がでるところに、このインドの情報の妙な信憑性を感じさせてくれる。そして、価格は600ドルスタートというのもAppleらしいい価格帯だろう。このあたりは、たくさん売ろうと思えば、Appleは利益率を落として、中華メーカー同様に、安くすればいいだけだ。純利益が20%以上もあるハードウェアメーカーは珍しい。しかも、世界中で一番単一機種を販売しているメーカーでもある。

あえて、Appleは、そこの価格競争にふみこまない、そして、長持ちして陳腐化しないところにAppleの存在意義があることを知っているからだ。Appleが、頑なに表面上のデザインを変えようとしないのは、デザインを変えることによっての『陳腐化』を理解しているからだ。そして、自社製品が5年以上も使用されていることをよく知っていることもある。そして、二次流通においても価格の下落が最も少ない数少ないハードウェアメーカーであることを自負しているからこそだろう。目をひくようなデザインを毎年出してくるようなこともしない。きわめて『保守的』に映るが、進化と普及と供給のバランスを考えてのことだ。MacBookProなんて、ひと目でいつの年代かが、わかる人はいないロングセラー製品だ。iPhoneもカラーバリエーションが変わった『iPhone 5C』と『iPhone XR』以外は同じデザインコンセプトを踏襲している。

基本的に『iOS』で管理できる部分は、一度使ったユーザーには、何も考えることなく使うことができるMacintosh由来のUIの歴史的なDNAを持つ。そして、細部の改良点はユーザーに知られることなく、日々アップデートし続けるのだ。

筆者のようにApple製品をしばらく使っていると、単調になり、冒険しにAndroidに行っては、またApple製品に戻るというサイクルだと、その『洗練さ』がよくわかる。海外に行くと、日本の良さがよくわかるところに似ているのかもしれない。このところは、iPad mini(2019) に十分に夢中になれている。

どれだけ、『噂』がでても、消えても、答え合わせは、必ず2019年の9月にあるだろう。その前に6月のデベロッパーカンファレンスと、Appleの中長期的なロードマップの上に、我々は歩まされている。

最近のAppleは、『プライバシー』についても、プライバシーを売り物にしないことを『売り物』にするようになってきた。これはGAFA企業の中でも、Appleだけが売り物にできる機能だ。他の企業は広義の『プライバシー』を売り物にすることで成り立っているからだ。

『プライバシー。これがiPhone。』

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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