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任天堂、ついに動画、静止画、全面投稿解禁宣言!#著作権侵害を主張いたしません

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:任天堂ウェブサイト

KNNポール神田です。

任天堂は(2018年)11月29日、いわゆる「ゲーム実況」など、同社のゲーム画面を含む動画・静止画投稿についてのガイドライン「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公表した。プレイ動画の個人による非営利の投稿や、「YouTubeパートナープログラム」などを使った収益化を認めている。

あわせて、YouTubeに投稿された任天堂ゲームのプレイ動画の広告収益を動画作者とシェアする「Nintendo Creators Program」を12月末に終了すると発表した。

 新ガイドラインでは、任天堂のゲーム画面を使った動画や静止画について、YouTube、ニコニコ動画、Twitterなど「適切な共有サイト」への投稿・ライブ配信を、個人・非営利での投稿に限って認めることを明文化した。

出典:任天堂、プレイ動画の投稿認めるガイドライン公表 非営利ならOK、指定のサイトで収益化も

■『著作権侵害を主張いたしません』という全面投稿解禁宣言!

任天堂は当社が創造するゲームやキャラクター、世界観に対して、お客様が真摯に情熱をもって向かい合っていただけることに感謝し、その体験が広く共有されることを応援したいと考えております。

 任天堂は、個人であるお客様が、任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショット(以下「任天堂のゲーム著作物」といいます)を利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。

出典:ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン

ついに、任天堂が、『著作権侵害を主張いたしません』という実質的な全面投稿解禁宣言をおこなった。同時に、「Nintendo Creators Program」を2018年12月末に終了する。これは、オーソライズされた人だけ投稿を可能とし、それ以外の人を排除するという封建的な制度から、誰もが投稿できる。しかし、いつでも迷惑なガイドラインにそぐわない投稿については、法的措置を取れる権利があるという立ち位置へと変わった。

これは、投稿を許諾する範囲を申請型からオープンにし、まずいものにだけに対応すればいいという対応を意味させる。

twitterにもポストされているように、投稿を黙認し、まずければ対応するということのほうがオペレーションも簡単になるだろう。

■『共有されるという価値』を重要視

任天堂の収益の源泉は、なんといってもゲームソフトやハードウェアを購買する『お客様』だ。そして、購買するお客様たちが何で購買を決定するのかという指標が、かつてとは大きく変化している状況が任天堂にこの決断をさせたのだ。かつては、テレビCMや、ゲーム雑誌のレビューなど任天堂が完全とは言わないまでも、コントロール可能な媒体からの認知が購買のきっかけであった。

しかし、ゲーム実況やSNSでの評判、動画においての攻略ビデオなどの視聴による追尾体験による『認知』の占める場面がふえてきたからだ。つまり、『共有されるという価値』を任天堂が認めざるを得なくなったことを表している。

■任天堂の『二次創作』プラットフォーマーへの想い

任天堂は、ジャニーズ事務所と同様、親が安心して子供たちに、託せることができる『企業ブランド』のひとつだ。それは親世代だけでなく祖父母世代から、長年にわたり培われてきた信用によって蓄積された企業ブランドでもある。これは一朝一夕にできるブランドではない。しかも、任天堂は、ゲームのヒットだけでなく、そこから生まれる家族や友達のコミュニケーションを大切にしている企業のひとつだ。このガイドラインにも、『お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されることを期待』との一節がある。

□任天堂は、Nintendo Switchのキャプチャーボタン等の機能を利用する場合を除いて、お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されることを期待しております。お客様の創作性やコメントが含まれない投稿や任天堂のゲーム著作物のコピーに過ぎない投稿はご遠慮ください。

そして、現在、任天堂のゲームは、買って遊んで終わる時代は終わり、買って遊んで儲けることができる時代へとシフトしている。いわば、メーカーと消費者の関係から、クリエイティブなゲームツールを提供し、それで創作したものでユーザーが収益を挙げられるというプラットフォーマーとしての立場でもあるのだ。

現時点において、このガイドラインにおいて投稿を収益化することができる「別途指定するシステム」とは、以下のものをいいます。

Facebookの「Facebookゲームストリーマー」および「Facebookレベルアッププログラム」

ニコニコ動画/生放送の「クリエイター奨励プログラム」および「ニコニコチャンネル」

OPENREC.tvの「OPENREC Creators Program」

Twitchの「Twitchアフィリエイトプログラム」および「Twitchパートナープログラム」

Twitterの「Amplify Publisher Program」

YouTubeの「YouTubeパートナープログラム」

※随時更新されます。

出典:このガイドラインにおいて投稿を収益化することができる「別途指定するシステム」とは、具体的にはどのようなものですか。

かつては、アーケードのゲームセンターで最高得点を出して、承認欲求を満たしただけだったが、現在はゲーム実況やゲーム投稿の収益化でお小遣いを稼ぐだけでなく、それで食べていけるプロフェッショナルをも生み出す、一大プラットフォームへと成長している。

ゲームで、人よりも、上手に遊べるスキルを持った人は、自分で稼げる自由も獲得しているのかもしれない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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