2020年、東京五輪の『サマータイム』は是か非か?

(写真:アフロ)

KNNポール神田です。

夏の時間を2時間繰り上げるという提案は、ソーシャルメディアでさかんに反対されている。大勢は、労働時間が長くなるだけではないかと心配している。

日本では7月から続く記録的熱波でこれまでに少なくとも120人が死亡している。

日本政府は、サマータイム導入についてまだ検討段階だとしているが、東京の猛暑が五輪選手に与える影響を軽減したい意向だ。

出典:東京五輪のためにサマータイム? 日本で議論

2年後の2020年は、7月24日から8月8日までオリンピックをおこなわれる事になっている。2年後は、おとといまでオリンピックが行われているのだ。そして、『サマータイム』が導入されると、日本全体が2時間早まっている期間だ。

時刻が2時間早まることの障害

『サマータイム』が導入されると一番の障害は、インターネットに接続されていないレガシー機器の時間調整だろう。金融系のシステム、交通系のシステム、物流系のシステム、大規模な基幹業務システムにいたるまで。

これらの時間調整が大変という。さらに、元号変化による、和暦から年号へのシステム対応と重なりIT系のシステム障害が一番問題となっている…。しかも元号がまだきまっていない…。カレンダー屋さんは泣いていることだろう。

しかしだ…。和暦でしか動かないシステムや西暦に変化できないシステムを使い続けてきているリスクも多分にあると思う。いまだに物流や金融系では「半角、全角」や電話番号に「ハイフォン(-)」の有無で『エラー』を発生させている。ネットの大多数の「ログインID」はメールアドレスのままでもある…。インターネット起源後からすでに、1/4世紀が過ぎようとしているにもかからわらずだ。さらに、運転免許も有効期限が西暦表示になるというが、名前のアルファベット表記も必須だと思う。日本の運転免許証が海外ではIDとして使えないからだ。氏名の正しい読み方すら現在の免許証ではわからない。

『オリンピック』のゲーム時間のみを繰り上げれば?

今回、この『サマータイム』案に一番ネガティブな意見が多いのが、「『東京五輪』にあわせて2年間限定」という案だからだ。多様なアイデアを模索するというのは良いことだと思うが、どうも、今年の猛暑で『東京五輪』大丈夫か?という声にあわせての場当たり的なアイデアである可能性も高い。オリンピックの時間を繰り上げればよいだけじゃないか? まさに、そうなのである。マラソンは5時からスタートしたっていい。ボランティアが用意できない。いや、それは、マラソンの1日だけ臨時列車をお願いすれば良いはずだ。それでも『サマータイム』までかつぎだしてまで、しかも1時間でなく、2時間早める意味はどこにあるのか?

放映権料に1500億円を投じている、アメリカのNBCは、アメリカの水泳競技の決勝が、競技が2時間早まると、21時ではなく19時のゴールデンタイムに放映できるという裏の文脈というか忖度も読み取ることもできそうだ。

『サマータイム』のメリットも報道しよう!

世論的にもメディア的にも、圧倒的に『サマータイム』反対が目立つが、まず、『サマータイム』実施期間中は、午前中の涼しい時間帯が2時間増えることは確実なメリットだと言える。早起きが必要なのではなく、時刻全体が2時間前倒しになるので、終電も早くなるはずだから、残業時間が増えることもないはずだ。日照時間というよりも、夏の涼しい午前中が有意義に使えることが最大のメリットだ。エネルギー的な面でのコストも確実に違ってくることだろう。また、2時間繰り上がるので、サンセットも、夜の9時前まで明るくなるのだ。

そして、マーケットもオーストラリアよりも1時間、早く、ニュージーランドよりも1時間遅いだけというポジションになる。直接的には影響が少ないかもしれないが、市場が2時間早くオープンするということは、いろんな意味で間接的なメリットがある。ファーイーストタイムが2時間早くなるのだ。海外との時差がこの期間だけ変わることによって『アービトラージ取引』などにも

影響があるだろう。

そして、日本人の活動時間が2時間前倒しになるのは、1948年(昭和23年)からの4年間しか経験(夏時刻法)していない。つまり68年経過してからの『サマータイム』は過去と同じデメリットということも考えにくい。むしろ、世界の中でも突出して2時間早くなった「最極東圏」になることによってのビジネスの変化が吉となる可能性もあるのだ。トライする価値はあるかと思う。もちろん不具合があれば辞めれば良いだけだ。

マレー半島だけが異質な標準時間になっている 出典:ウィキペディア
マレー半島だけが異質な標準時間になっている 出典:ウィキペディア

筆者のいるマレーシアやシンガポールと日本の時差はマイナス1時間だ。緯度的にはマレーシアより東にあるベトナムやカンボジア、ラオスが、マイナス2時間だから不思議だ。同じ緯度のタイもマイナス2時間だ。マレーシアやシンガポールは朝の8時になってようやく明るくなるくらいだから、相当無理のある標準時刻設定がなされている。しかし、これはイギリスの占領下において中国と同じ時間帯に無理やりこじつけたから実現している。世界との取引において、「時差」は常に優位に働くようだ。

一番のデメリットは、IT投資と「電波時計」と前後の日

2時間差の『サマータイム』は、GPS電波時計は「タイムゾーン」で対応可能だが、通常の「電波時計」だと1時間の想定なのでなんらかの対応が必要になるそうだ。

「現状、サマータイムが+1時間となるのか+2時間となるのか、また標準電波にどのような形でサマータイム情報が含まれるか決定していない状況ですが、製品については何らかの対応は必要になる可能性が高いと想定しています」(シチズン時計)

出典:サマータイム導入で「電波時計が狂う」? メーカーに聞いた

IT系でのシステム投資は、GDPに影響しそうなほど、多額な投資が想定されると、同時にエンジニア不足なども想定される。前述の元号改正もふくめてだ。しかし、何十年も前のコンピュータシステムに依存し、その上に積み木のように複雑に組み込んできたシステムを定期的にメンテナンスすることは、東京オリンピックの高度成長期に作られたインフラの老朽化の修正と同様に必要な定期的な投資案件である。

西暦2000年の『Y2K問題』なども、「2036年問題」なども、あわせてメンテナンスされるべきなのだ。

むしろ、IT系の投資を『サマータイム』の標準時刻変更や元号変更だけで個別バラバラに動くのではなく、政府は2036年問題も見据えた、「ITメンテンナンスの標準化」を提議しなければならない。そう、そして、日本は『災害大国』でもある。地震も台風も原子力も水害もそして風評被害も多い。ウィルスやテロもふくめた『インシデント投資』という意味でも21世紀にふさわしいシステム設計の標準化をすすめて欲しいものだ。

また、2時間もの『サマータイム』は、開始日と終わりの日には『時差ボケ』を生むことだろう。しかし、日本人の4人に1人しかパスポートを持っていない。海外旅行で2時間の時差というのはまったく問題のない時差だ。むしろ、これくらいの『時差』で暑い夏の増えた午前中の日差しで過ごせるのならば海外旅行に行ったことのない人にも、その海外旅行的な『時差』を経験してもらったほうがよいと思う。

東京五輪のイシューではない日本の老朽化

『東京五輪』はたったの2週間。パラリンピックを含めてもたったの一ヶ月の国際イベントに過ぎない。終わったら終わりなのだ。しかし、もはや、かつての『東京五輪』のような夢と希望に満ちた高度成長期ではない。2020年の『東京五輪』以降の「老朽化するハードとソフトと人間の問題」を解決するもっと将来的なビジョンを策定すべきなのだ。『サマータイム』の単発ではなく、もっと未来の日本のビジョンを議論すべきなのだ。