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西日本豪雨、名古屋市消防局の『必ずあなたを助けます』ツイート

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
必ずあなたを助けます。 出典:名古屋市消防局のTwitterより

KNNポール神田です。

被害に合われた方々にお見舞い申し上げます。

Twitterでは救助要請も相次いでいる。

なかでも大規模な冠水被害が出ている岡山県倉敷市真備町では、「アパート2階に二人取り残されてます!ヘルプ!」「助けてください!停電しています!1階は浸かりました!」「子供達と家族を助けて」などと救助を求めるツイートが相次いで投稿されている。

こうした状況を受け、倉敷市のアカウントはTwitter上での要請を拾い上げ、「救助を要請しました」「安全な場所で待機してください」とそれぞれにリプライで呼びかけている。

出典:「子ども達と家族を助けて」Twitterで救助要請相次ぐ。倉敷市は公式アカで異例のリプライ

マスメディアとソーシャルメディアの温度差

TVで報道されている災害報道と実際に被害にあわれた方や、関連自治体のTwitter等からの情報とは温度差があって当然だ。マスメディアは好むと好まざるにかかわらず、『被害の一番大きなところ』をクローズアップする媒体だ。一方、ソーシャルメディアはマスメディアを補完するメディアではなく、当事者や地域にとって『一番重要な情報』をピックアップできる媒体だからだ。

倉敷市公式Twitter

https://twitter.com/kurashiki_city

でも市の行動がよくわかる…。

スマホ全盛の時代だからこそ、電波さえ届けば、自治体のローカルな正確で確認された情報は役に立つ。@kurashiki_city で検索もできる。

倉敷市の公式Instagramでは、平時の観光スポットが掲載され、twitterでは今回の災害情報がタイムラインに連なる。

『必ずあなたを助けます』名古屋市消防局の言葉の強さ

倉敷市のTwitterがリツイートしているのが名古屋市消防局のTwitterだ。

この記事を書いている30分前まで名古屋市消防局は救助に励んでいる。

しかも、ハッシュタグ付きだ。

  1. 名古屋市消防局 #緊急消防援助隊 #愛知県隊 #倉敷市 #真備 #救助

2018年7月7日、名古屋市消防局の、この『必ずあなたを助けます』のツイートに勇気づけられた人は決して少ないないはずだ。

岡山県へ派遣中の緊急消防援助隊愛知県隊は、倉敷市真備町で救助活動を開始します。

不安な気持ちでいっぱいだと思いますが、遅くなりましたが救助はすぐ側まで来ています。

必ずあなたを助けます。

名古屋市消防局の言葉に、TVの報道とは違う、被災地への想いを感じ取ることができる。

□できるだけ建物の高いところに居てください。

□ 建物の側に山がある場合は、山と反対側の部屋に居てください。

□夜も近づき、不安も増してくると思いますが、救助はあなたの側まで来ています。

□救助をお待ちの多くの方が不安と恐怖を感じていると思います。

お待たせしていますが、必ず行きます。

□無理な行動はせずに、お気持ちを強く持って、救助を待ってください。

□報道や行政の発表など、確実な情報の把握と不要不急な外出を控えるようお願いします。

□現在、真備町の浸水エリアを4つのブロックに分けて担当しています。最も東側を自衛隊、中央東側を愛知県隊と倉敷市消防、警察、中央西側を滋賀県隊、最も西側を奈良県隊です。

□ 名古屋上空が飛行可能な天候となり、先ほど名古屋市消防局の消防ヘリ「のぶなが」が、県営名古屋空港を離陸し倉敷市へ向かいました。

□報道でご覧の方もいるでしょうが、まび記念病院では東京消防庁が活動しています。また、真備上空では、奈良県、大分県、熊本県の防災ヘリも活動しています。

□全員の救助には、まだ時間がかかります。かなりお疲れだと思いますが、もうしばらくお待ちください。

ツイートの随所に被災地の方々への想いが散りばめられている。また、各県との連携関係もよくわかる。

これは、フォロワー数の大小に関係なく、名古屋市消防局の公式Twitterが、平時から情報発信に手慣れているからこその対応だと思う。突然、災害時にだけソーシャル活用ということは不可能だ。写真に一般の方はぼかしまで入れる配慮までなされている。手慣れた人にとっては、一瞬の作業でできる。Twitterの情報発信によって、時刻や場所の記録もわかり、ハッシュタグによって検索もできる。リアルタイムで現状を拡散することができ、『報告』を部署のみで持つことではなく、『社会に対して広報』できるのだ。それは『記録』でもあり、『証拠』でもあり、『ログ』でもある。近い将来、360カメラやVRやデバイス機器の進化でもっと現場を『広報』できる機能もでてくることであろう。

救助中のTwitterは、最も必要な救助活動の一つである

消防局が救助活動をツイートすることに抵抗感がある人もおられるだろう。救助活動中に、スマートフォンで写真を撮影し、キー入力している隊員がいたら…。現場では動いて行動することが最も求められるが、静かにとどまり、冷静に分析したり被害状況をクールな視点で見つめることも同時に重要なのだ。マスメディアは被害の大きさを伝えるのが仕事だが、ソーシャルメディアでは、どこが安全なのかを教えることが仕事だ。どちらに方向に避難をすればよいのか、空からの『鳥の視点』ではなく、地上からの『虫の視点』が被災地には一番重要なのである。

被害の状況も悲しむばかりでなく、しっかりと保険金や罹災(りさい)証明の為に撮影しておくことも重要だ。

※実際に被害にあった場合は、こちらの情報で罹災(りさい)証明などの場合に必要な写真のとり方などがわかる…。

あとで被害を証明するものを残してことはとても重要だ。

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/shintsuna-suigai?utm_term=.bxAqyqmne#.gmRZmZXpz

阪神大震災から何も変わらない震災義援金のスピード

筆者は1995年の阪神大震災の時に自宅が『半壊』となった。震災義援金も6ヶ月後になってから、10万円をありがたく受け取れることができた。その節はありがとうございます。しかし、その時には家の修繕費用が400万円である。震災直後にすぐに使える10万円があればアクションを起こせる人はもっと多かったはずだ…。

倉敷市もこれから義援金の受付を対応するとツイートしている。

しかし、一番、義援金が集まるのは、TVで報道しているこの瞬間である。そして、今、一番義援金が役に立つのは、この被害直後の瞬間なのである。銀行に預金があっても、これから家の修繕にいくらかかるのか未来に対しての不安のある時は、人は皆、出費を恐れ、財布を閉じ、心を閉じ、じっと我慢してしまう。この時にこそ義援金という『恩義のお金』で心に余裕のある行動をとってほしいと願う。

そのためには、地域限定のクラウドファンディングのような、どこの地域の人に使ってほしいとか、エリアを絞った義援金の仕組みがあれば、公平に公正に平等に、第三者委員会を設けて、分配をするために、罹災証明が出揃ってからという仕組みを変えなければならない。阪神大震災から何も変わらない震災義援金のスピードだ。

エリアを絞り、数日おきに、すぐに行政担当者が手渡しできる仕組みが必要だ。

AIで災害規模やTV報道、ネットでのツイート数などのパラメータで判断し、国が助成金予算で立て替える。そんな義援金募集システムが必要だろう。いや、国がやっていたら、阪神大震災から23年も経過しているのに何もできない。

せめて、ヤフージャパン社で義援金の応募フォームを自治体の申請があればすぐに活用できるシステムを作っておくべきではないだろうか?

GoogleでもFacebookでもTwitterでもLINEなどの外資系でも構わない。

集まった義援金を、震災後、一週間以内に手渡ししてくれれば、少ない金額でも、遅れてからくる義援金よりも何倍も心の支えになるのだ。

この感覚は『義援金』をもらったことがある被災者にしかわからないだろう。そして、被災者はありがたくいただいた義援金にケチはつけたくない…。

しかし、未来の公平な補修費の全く足しにならない『義援金』よりも、今夜すぐに少しだけ贅沢に使える『カネ』が被災者には必要なのだ。

正直なハナシ。

義援金を贈る人たちの気持ちも、『今、なんとかしてあげたい』のだ!

被災地の人が、AmazonのWishListを公開してもいいし、LINE PAYの振込QRコード公開、PayPalのアドレス公開、Bitcoinの送金QRコード公開ということでも良いと思う。しかし、それをやってしまうと、心無い人たちのバッシングや拡散で余計な二次被害を生み出してしまう。

だから、いますぐにヤフージャパン社が、自治体にかわり義援金を集め、『アスクル』とはいわないまでも、来週くらいには届けにいってほしい…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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