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愛されるNHKになろう…NHK受信料裁判最高裁判決

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
NHKのエンドロールに番組制作費をクレジットしてみると… NHK事業計画書より

KNNポール神田です!

【追記】2017年12月6日(水)15時34分

最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は6日、テレビがあればNHKと契約を結び受信料を支払う義務がある、とする初めての判断を示した。

出典:NHK受信契約、テレビあれば「義務」 最高裁が初判断

いよいよ本日(2017年12月6日)の15時、NHK受信契約訴訟の最高裁の判決がくだされる…。

最高裁が、万一受信料契約が憲法違反であると判決をくだしたら、NHK界隈は大騒ぎとなることだろう。

ことし10月に最高裁判所大法廷で開かれた弁論では男性側が「受信契約の強制は契約の自由に対する侵害だ」と述べたのに対し、NHKは「豊かな番組を放送するには受信料制度が不可欠だ」と述べました。

この裁判で、最高裁判所大法廷は6日午後3時から判決を言い渡す予定で、受信契約の成立をめぐる論点について初めての判断を示す見通しです。

出典:NHK受信契約訴訟 きょう最高裁が判決

そもそも、このような裁判が起きている理由は、繰り返し受信契約に応じない人に対して受信料の支払いを求める訴えを起こしていたからだ。放送法64条1項「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定められている…とはいってもこの法律は、1950年(昭和25年)なので、今から67年前の法律だ。NHKの会長の任命や受信料認可も、1968年と49年も前だ。NHKは、公共放送機関なので、受信料で成立させることには賛成だが、果たして、国民の意見や民意がNHKに反映されているかというとそうではないと日々感じている視聴者の1人が筆者だ。

本日のクローズアップ現代+は横綱の品格、日馬富士暴行問題

例えば、本日の重要なNHKの受信料に際しての、最高裁の判決がなされるのにもかかわらず、本日にその判決を受ける番組がNHKの総合放送のどこにもない。これはどういうことなんだ?公共放送の役目はどこにいった?

生中継までする必要はないが、今回の裁判の行方を考えるために、経営委員を集めて、解説するくらいの特別番組は必要だっただろう。

特に、『クローズアップ現代+』などは、かなり良い時間帯だ。しかし、本日は「横綱の品格、日馬富士暴行問題」だ。暴行事件の11月場所を自粛もなしに放送していたのはいったいどこの局だったのだろうか?相撲業界を支えているのはNHKとも言える。しかし、放映権料にいくら支払っているかなどはまったく不透明だ。特にスポーツ放映権は契約上公開されないとされているからだ。

NHKの運営費、1日あたり19.5億円

NHKの29年度(2017年)の事業予算 出典:NHK 赤文字は筆者
NHKの29年度(2017年)の事業予算 出典:NHK 赤文字は筆者

NHKの29年度(2017年)の事業予算は、年間7,118億円だ。うち受信料収入は6,892億円で、国民負担比率は96.8%となる。つまり、NHKは、国民ひとりひとりの受信料で成立している放送局だ。365日で換算すると1日あたりの事業予算は19.5億円となる。1時間あたり8,125万円(24時間)を事業予算で使える。

毎年、計上される契約収納費年間588億円、1日1.6億円

何よりも、民間企業で理解に苦しむのが、この受信料の取り立てにかかる支出の「契約収納費」だ。毎年、約600億円(総収入の8.3%)かけて、払っていない人などの回収にコストをかけている。1日あたり1.6億円かけていることになる。民間では、目標を立て、このコストを少しでも削減しようと努力するが、NHKでは毎年、このコストを恒常的に予算化している。支払わない人がなぜ、支払わないのかをもっと科学しなければならない。もしかすると、他の月額サブスクリプション料金と比較して高いのではないか?とか…

NHKとテレビ東京を比較してみる…

テレビ東京の『ビジネスオンデマンド』は月額500円で検索視聴が4年分可能だ。たとえば、「マレーシア」で検索するとズラリと関連動画が並ぶ
テレビ東京の『ビジネスオンデマンド』は月額500円で検索視聴が4年分可能だ。たとえば、「マレーシア」で検索するとズラリと関連動画が並ぶ

ちなみにテレビ東京の1年間の純利益は42.8億円でNHKのたったの2.2日分の予算だ。テレビ東京の「ビジネスオンデマンド」のアプリは月額500円(年間でも6,000円)払うだけでコマーシャルなしで、過去の関連経済番組を4年分にわたり検索視聴できる。入会初月は無料だ。関連動画もたくさん登場するので、テレビ東京こそ、公共放送にふさわしいくらいだ。NHKのたった2.2日の純利益で、これだけのサービスが提供できている。

一方、NHKにもオンデマンドの『NHKオンデマンド』がある。

しかし、フルにアクセスしようとすると有料となる。「見放題パック」は月額972円だ。つまり年間で1万1,664円だ。オンデマンドで見放題にしようとすると、受信料を払った上にさらに年間1.2万円の追加の支払いが必要なのだ。しかもアーカイブはたったの5,000本。しかも、ニュース番組は視聴できないという…。

受信料負担にふさわしい公共放送による番組提供方法

NHKは、97%も国民からの受信料負担で運営しているにもかかわらず、有料のサービスで一部のコンテンツにしかアクセスさせない。これで、放送法の加護のもとで、経営努力が行われているといえるのだろうか?また、番組制作についても、どのように配分されているのか、誰がどのように決めているのか不明瞭だ。コンプライアンスの問題だけではなく、公共放送機関として、予算消化型ではなく、その予算が適切に使われているのかも含めて、番組審議の方法も考えられるのではないだろうか?

2009年(8年前)のデータによると、情報ドキュメンタリー1本に3,950万円、バラエティ1本に2,300万円、ドラマ1本に6,000万円の制作費がかかっている。

NHKの番組制作費の参考 出典:NHK2009年度
NHKの番組制作費の参考 出典:NHK2009年度

https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/yosan/yosan21/pdf/siryou.pdf

NHKは番組制作費をエンドロールにクレジットすべきである

番組エンドロールに制作費表示のイメージ  図:筆者作成 NHK広報資料ページより
番組エンドロールに制作費表示のイメージ 図:筆者作成 NHK広報資料ページより
ジャンル別の番組制作費 出典:平成29年度収支予算とNHK事業計画説明資料より
ジャンル別の番組制作費 出典:平成29年度収支予算とNHK事業計画説明資料より

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/yosan/yosan29/pdf/siryou.pdf

もし、番組の終わりのエンドロールに、制作費がクレジットされたとすると、受信料をおさめている国民はもっと真摯に番組に向き合うはずだろうし、制作費にふさわしい番組だったかどうかも国民が審判することができる。こういった努力もなしに、放送法をかざし、受信料を徴収し、予算使い切りで放送するのはいかがなものかと感じている。今やテレビがメディアの王者の時代でもない。視聴率は換算されているが、視聴数は換算されていない。テレビを視聴する属性も変わりつつある。

国政選挙で選ぼう、経営委員メンバー

もっと、国民の声をNHKに伝えるためには、NHKの会長から、経営委員会に至るまで、「選挙」で国民に決めさせてもらいたいと思う。選挙の時に、最高裁判所の裁判官を選ぶようにすれば簡単だ。意思ある人に、NHKの経営委員に立候補してもらい公共放送としての政策を打ち出してもらうのだ。それを参議院選挙(3年に一度)で半数ずつ交代で選ぶ。それだけで、民意を反映する番組づくりや運営は可能だ。政治と同じシステムで与党を選ぶように、経営委員を選ぶと国民の審判が活きる。受信料の値下げから、番組の編成にいたるまで、公共放送としての民意をもっとくめるはずだ。国が法で縛り、予算消化型で継続する限り、このような最高裁までまきこんだ裁判は跡を絶たないと思う。

NHKは国営放送ではなく、皆様の為の公共放送機関なのだ。司法で裁定される前にもっと国民に愛されなければならない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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