Apple『Touch Bar』にキーボードの歴史的進化を期待

KNNポール神田です!

【訂正記事】2017/01/03 21:30

タイプライターの歴史パートで誤認のご指摘いただきました

https://srad.jp/~yasuoka/journal/608706/

誤認箇所をふくめ、まとめて訂正させていただきました。間違いのご指摘ありがとうございました。また間違いのほど申し訳ございません。こちらも参考にさせていただきました。

オフィス機器としてのQWERTYキーボード

http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications/JOS2016.pdf

Apple MacBookProに搭載された『Touch Bar』はQWERTY キーボードの再発明だと真剣に感じている…。

まずは、タイプライターの頃からのキーボードの歴史の変遷を見てみたい…。AppleのCMはデスクトップの歴史を見事に表現している。

MacBook Pro QWERTY Keyboard Apple

1874年、最初のQWERTY配列のレミントンから143年

1874年、最初のレミントン製タイプライターQWERTY配列キーで発売された。クリストファー・レイサム・ショールズが発明したQWERTYをE・レミントン・アンド・サンズ社(後のレミントンアームズ社)で、Sholes and Glidden typewriterとして商品化した。『QWERTY』は2017年で143年間もの歴史となる。

QWERTY以前には印刷電信機があり、その頃にはピアノのメタファーのキーボードが採用されていたのだ。アルファベットは、ピアノのように打鍵される。

1855年のヒューズの印刷電信機
1855年のヒューズの印刷電信機

http://www.prc68.com/I/StkTckPat.shtml

1855年の印刷電信機(Printing Telegraph)には、黒鍵と白健が確認できる。そう、人類は過去のメタファーでしか新たなメディアを想像できないのだ。その不便を解消する為に、イノベーションが生まれる。

1866年には電信を結ぶために大西洋横断電信海底ケーブルが敷設された。電信のための海底ケーブル技術は、電話やインターネットも流用されている。

QWERTY配列キーを搭載したタイプライター
QWERTY配列キーを搭載したタイプライター

当時のデスクトップには、左上に株価のティッカー、右上には懐中時計、右下には万年筆が見られる。

電話の発明は1875年なので、当時は電信が中心で株価をティッカーと呼ばれる電信で株の売買がなされていた。

腕時計の登場は1879年のジラール・ペルゴから。本格的な毛細管現象の万年筆は1883年のルイス・エドソン・ウォーターマンの発明を待たねばならなかった。当時のデスクトップは最先端のハイテクの展示会でもある。

腕時計、新聞がデスクトップに登場する
腕時計、新聞がデスクトップに登場する

デスクトップには、懐中時計が腕時計に代わり、日刊新聞が登場する。1851年ニューヨークタイムズ(NYtimes)創刊、1889年ウォールストリートジャーナル(WSJ)創刊、日刊新聞ジャーナリズムによってビジネスは加速度を上げる。左上にはティッカーに代わり、電話が鎮座するようになった。

1960年代、タイピスト女性の社会進出

カラフルなIBM Model C 電動タイプライター

IBM Model C 電動タイプライター 1959年
IBM Model C 電動タイプライター 1959年

1960年代、女性の社会進出と共に、「タイピスト」という職業がオフィスの花的存在となる。メイクにストッキングにハイヒール、マニキュア、プラスティックのオフィス製品が溢れ出し、カラフルでサイケな時代へと突入していく。もちろんタイプライターも女性受けするようなカラフルなタイプが登場してくる。IBMも当時はそんなカラフルなカラーマーケティングだったのが意外だ。

IBMの女性にアピールしたタイプライター広告
IBMの女性にアピールしたタイプライター広告
カラフルだったIBMの電動タイプライター
カラフルだったIBMの電動タイプライター

DTPの元祖、フォント交換可能なゴルフボール型フォントシステム

また、IBMが1961年に発売したIBM Selectric typewriterにはゴルフボール型の交換できるフォントシステムが採用された。ピアノの打鍵と梃子の応用の印字アームシステムからタイプライターが電動によって進化していく。AppleとしてはDTPの歴史的進化にも影響のあるこの機種も取り上げるべきだった。

当時のIBMのCMでSelectric Typewriterの革新的な要素は知ることができる。印字アームがなくなりジャムのトラブルがなかったのだから、QWERTYの配列の理由のひとつを改善できるチャンスはこの頃にはあった。しかし、すべての人に普及しているメタファーとしてのレガシーは踏襲しておかなければヒットにつながらなかったのだろう。

タイプライターはオフィスから家庭まで

オフィスから自宅でもカセットテープレコーダー登場
オフィスから自宅でもカセットテープレコーダー登場

大ヒットしたオリベッティは家庭にも普及。専用ケースでモバイルなデバイスとなった。

おそらく大学生もレポート用にタイプライターを使いはじめたのだろう…。

1963年、フィリップス社がカセットテープとレコーダーを販売。カセットテープレコーダーにマイクを装着し、構想を録音したりしたのではないだろうか?オープンリールテープがカセットになったことにより、扱いがとても手軽になった。テープ原稿の書き起こしなども可能となった。コーヒーはマグカップでカジュアルに飲む。

1984年 Appleの新時代到来

1977年に発売されたホームコンピュータApple IIから、1984年革新的なGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を持ったパーソナルなコンピュータ、Macintoshが登場する。

初代 Macintosh 128K
初代 Macintosh 128K

AppleのGUI搭載パソコンMacintosh 128Kが登場する。ワンボタンのマウス、もちろん左利きでも自由に使える。マウスパッドなどにもAppleのロゴ、7色リンゴのステッカーなどのブランディングでパーソナルなコンピュータをアピールする。右上にある3.5インチのフロッピーでアプリケーションなどを読み込んでMacintoshを使用する。

1991年 PowerBookシリーズ登場

PowerBook140 トラックボールを搭載
PowerBook140 トラックボールを搭載

1991年に登場したPowerBookシリーズ。おそらく、デスクトップは飛行機のミニテーブルにまで拡張されることとなった。そして、PowerBookシリーズは、MacBook MacBook Proシリーズへと変遷していく

10年以上変わらないノートパソコンの本質的デザイン

PowerBook G4 基本デザインは10年以上も同じ
PowerBook G4 基本デザインは10年以上も同じ

2001年チタニウムPowerBookG4 2006年 MacBook と MacBook Pro 

1997年、スティーブ・ジョブズがAppleに復帰し、企業ロゴがレインボーカラーから単色に変わり、背面には光るロゴというギミックで自分からではなく人に見られる背面ロゴが施された。そこから約10数年、Appleのノートパソコンの本質的なデザインコンセプトは大きく変わらずにきた…。

2016年Touch Barの登場

そして、2016年『Touch Bar』という143年続く「QWERTYキーボード」の歴史の中で初めて「小さな改革」が行われたのだ。有機EL(OLED)ディスプレイがキーボードの中にタッチシステムとしてデザインされたのだ。ファンクションキーの一列が『Touch Bar』に置き換わった。さらに、指紋認証「Toucn ID」にApplePayまで対応となる。

Touch Barで指紋認証にApplePayまで対応
Touch Barで指紋認証にApplePayまで対応

この一見、「小さな改革」は、何に使えるのかよくわからないという声もよく聞かれる。しかし、サードパーティーに細かな仕様を伝えるにも今だに至っていない。それはまだ、現段階の『Touch Bar』のユーザー経験が試金石になっているからではないだろうか?

Microsoft社は、モバイルとPCのOSのシームレスな融合を目指してWindows10を開発してきた。また、タブレット同様、PCの画面もタッチすれば動作できるという双方の良さを残そうとしている。これはこれで異論はない。しかし、Appleは、どうも画面は絶対にタッチさせたくないようだ。そして、タッチするならばキーボード側という答え合わせをTouch Barで見せたのだと思う。

TouchBarを触ってみるとわかるが、細かなRatinaによる2170×60ピクセルの「触れることができるウィンドウ」が存在する。これは、iPhoneやiPadのiOSで長年培ったメタファーだ。さらにTouchBar部分にはApple WATCH OS同様のOSが走っていると分析するデベロッパーもいる。もし、それが事実だとするとAppleの答えはこのキーボード側にiOSのDNAを搭載してくるのではないだろうか?

筆者はこのTouch Barの経験は、Appleが一方的にレギュレーションを決めるのではなく、ユーザーとデベロッパーとの相関関係で多いに変化するものだと考えている。AppleはかつてMacOSで、ウィジットというヴァーチャルな別画面でのアプリも積極的に展開してきた経緯がある。このTouch Barならそれらの機能も取り込むことができそうだ。Samsung GALAXY Note EdgeのEdgeスクリーンも研究つくされていると思う。

何よりも、Touch Barで重要なのは、文字入力時における視点の移動だ。ブラインドタッチでメインディスプレイを見ている時には、パッドやショートカットで十分だ。しかし、Touch Barのほうが微妙なスライド操作などには便利だろう。しかも有機ディスプレイなので目視で確認できる。これは30年も前の「液晶ワープロ」時代を彷彿させられた。

東芝のワープロRupo JW-R10の液晶画面はたったの10文字×2だった

東芝Rupo
東芝Rupo

http://museum.ipsj.or.jp/computer/word/0055.html

1985年約30年前のワープロ(ワードプロセッサ)は小さな小窓から文章を垣間見ながら、10文字×2行づつ文字を紡いでいった。しかし、タイプライターと違っていくらでも編集で修正ができた。ただ同時に見えているのはたったの10文字×2行文だけだった。標準では10文字1行だ。ヤフートピックスの見出しの13文字よりも少ない10文字で文字を紡いでいたのだ。しかし、四ヶ月後、40文字×2行のJW50Fの登場には狂喜乱舞だった。編集ディスプレイが大きくなったことで見える世界が大きく変わったからだ。

40文字2行と一気に4倍に増えたJW50F
40文字2行と一気に4倍に増えたJW50F

液晶ワープロのディスプレイがキーボード側に搭載されるということは…

これと同様の進化が、Appleの「Touch Barメタファー」では、起きそうな気がしている。現在、MacBookに2列目に配置されている「数字キー」を打つ時にブラインドタッチの人はどれだけおられるだろうか?数字はテンキーでなければ、目視しながら打つ人のほうが圧倒的に多いだろう。すると2段目の数字もTouch Bar化することができるだろう。東芝Rupoのワープロの進化のようにTouch Barで新たな表現が可能になってきそうだ。

現在の横5列あるQWERTY配列のうち2列がTouch Barとなると2/5のiOSで培ってきた経験が活かせるスペースとなることだろう。視点を画面から下に落とすだけで、いろんなパラメータを操作することができるのだ。もしかするとキラーコンテツとなるようなものが登場するかもしれない。そう、これだけはたくさんの開発者が意欲的なTouch Barならではのアプリ(?)を開発してくれれば一気にブレイクできそうだ。特に画面遷移を必要とした「ウィジット」アプリのような「Touch Baアプリ」の登場も考えられる。

macOSとiOSの融合に期待できるか2017年?

QWERTYキーボードの中で、普段あまり触れないデッドスペースに、iOSやApple WATCHのOSが走ると想像すると、楽しみなことが増えてきそうだ。直感的なTouch Bar操作で使えるアプリが増えた時、今までのマウスとキーボードだけの世界にさらに効率化できそうな機会が増えてくるような気がする。

ぜひ、2列目の数字キー配列もTouch Barにして、iOSアプリも走るようにしてもらいたい…。いやiOS部分は、大きくなった感圧タッチトラックパッドであれば十分に実装できそうだ。一番重要なのは、キーボード部分をサブモニタとして使うことではなく、キーボード部分をサブモニタ化することによって、どんな新たな経験を生み出すことができるかだ。そう考えると2017年は、mac OS と iOSが知らず知らずのうちに融合される年になりそうだ。