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WTO提訴ではなく、日本の食の情報公開ではないだろうか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

台湾が、2015年5月15日から、全都道府県ごとの産地証明書の添付、一部の都府県産食品に放射性物質検査を義務付けるとした。

新規制は、日本産のすべての食品に産地証明書を義務づけ、一部の食品には放射線検査を義務づける。台湾当局は14日、国や都道府県の検疫証明書など、これまでも輸出に際して必要だった書類を産地証明書として認めると発表し、一定の譲歩を示した。

出典:台湾、食品の輸入規制強化…日本はWTO提訴も

さらに、韓国に対しては、WTOの提訴手続きを開始した

日本政府は21日、東京電力福島第一原発の汚染水問題を理由に福島など8県産の水産物の輸入を禁止している韓国を相手取り、世界貿易機関(WTO)への提訴に向けた手続きに入った

出典:水産物輸入禁止の韓国をWTO提訴手続き…政府

世界各国における日本食の輸入禁止措置
世界各国における日本食の輸入禁止措置

赤:日本食で輸入禁止措置の項目がある国

オレンジ:輸入される日本食に対して放射能検査を要求、あるいは、自国で放射能検査を実施

農林水産省のデータを元にホワイトフード作成

和食は日本のアウトバウンド産業

2011年311の震災からすでに4年の月日が経過している。しかし、世界からの日本の食に対する安全への信頼は、日本国内基準以上であることを認識する必要がありそうだ。日本の「和食」がユネスコの無形文化遺産に認められ、食材のアウトバウンド(輸出)が伸びれば伸びるほど、また、世界から年間2000万人が日本の「食」を食べにインバウンド(来日)しようという中での、食の安全について、今一度、世界的なレベルで検証する時代に入っているのではないだろうか?4年経過している日本は、食の安全をアピールするばかりでなく、数値化されたデータでITを駆使して世界に公開しようとしてきただろうか?

狂牛病、中国の冷凍ギョーザ、マクドナルド異物混入と日本の食品

牛海綿状脳症(BSE)の時に、日本は全頭検査をアメリカに要求し輸入を禁止した時を想い出してほしい。世界の国々は、日本の安全基準を信頼できなければこの輸入禁止を続けるだろう。中国の冷凍ギョーザでも中国の食品に対しての信頼は大きく揺らいだ。マクドナルドの異物混入も今だに尾を引いている。それがフクシマ原発の目に見えない放射線となればなるほど、あえて日本食を選びたくはないのは想像しやすい。しかも4年も経過していながら納得のいく検査ができていないとしたら…。

日本の食の安全を可視化して公開していくこと

北海道のホワイトフード株式会社では、無添加の食品を放射性セシウムとストロンチウム検査して販売している。それと同時に、公開されているデータをもとに、マップ化した地図データともに、情報提供をおこなっている。

10分おきに日本全国のモニタリングポストからの情報をマッピングした地図

これを見れば現在の日本の放射線の空間線量は明らかだ。誰も情報操作できない。

空間放射線量マップ ただ今の空間線量 
空間放射線量マップ ただ今の空間線量 

http://www.whitefood.co.jp/radiationmap/

赤: 30日平均の2倍の空間線量

黄: 30日平均の1.5倍〜2倍未満の空間線量

橙: 30日平均の1.25倍〜1.5倍未満の空間線量

青: 30日平均で1.25倍未満の空間線量

他にも食材ごとのデータを公開している

http://www.whitefood.co.jp/news/foodmap

ホワイトフード株式会社の森啓太郎社長は、「ガイガーカウンターでも空間の放射線量を測れるのですが、計測できている瞬間には手元に放射能が来ているので被爆してしまいます。『ただ今の空間線量』は放射能が手元に来る前に測定結果がわかるし、放射能速報メールに無料登録すればアラートメールで知ることができます。青でなければ危ないということも目視で誰もがカンタンに放射線量の動きがわかります。また、日本の放射能による発がんリスクや健康被害には、しきい値がないので基準値を決めること自体にも問題があると思っています。いわば『負の宝くじ』です。例えば、運の良い方は、毎日寿司を食べているけどガンになりませんが、運の悪い方は、アメリカからきて、築地で汚染されている寿司を1回食べて発がんするということもありえます。ただ、たくさん食べる方がリスクが確率論的にあがるので、『負の宝くじ』といわれている所です。そして、何よりも、子どもの発がんリスクが高いというのが一番の問題だと思っています。15歳以下の子供には大人の基準で考えるのはとてもリスクがあるので、できるかぎり政府の基準以下の数値の食品を与える環境を与えてほしい」と語る。

ホワイトフード株式会社のストロンチウム検査

ウクライナ、ベラルーシ、日本のストロンチウム基準値比較

オイシックス株式会社なども放射性物質に対して独自の取り組みをおこなっている。

Oisixの放射性物質検査の取り組みについて

らでぃっしゅぼーや株式会社は、自主規制値は、不検出〜国の基準の2分の1以下

らでぃっしゅぼーやの放射性物質検査体制

パルシステム生活協同組合連合会の自主基準

パルシステムの自主基準・測定方法

日本のベクレル基準値に、甘んじることなく努力している企業がいることも海外にむけて発信すべきだろう。

日本の政府も海外向けにデータで公開すべきだろう

どうも厚生労働省のサイトを見ていると、安全をPRしているようにしか見えてこない。安全はデータを元に情報の受け手が判断するものだ。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/dl/houshasei_poster.pdf

http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf

100ベクレル/kgという基準値も、それ以下を望む人がいることだろう。当然、主食の米など、たくさん食べるものにはそれ以上のベクレル値になるからだ。また、風評被害という側面もあるかもしれないが、たとえ中国が「我が国の食品は安全です」と自主基準でいくら言っても信用ってされないのと、今の日本はまったく同じ状況だろう。

だからこそ、誰が見ても、絶対的なデータを可視化し、ヴィジュアライズした状態で日本食品の数値を公開をすることが最も重要なのではないだろうか?それは海外に対してだけではなく、国内に対しても有効なことだろう。何よりも今だに原発の問題が片付いていないのは明白なのだから。

データくらいは安倍総理のいうようにアンダー・コントロールされていないとおかしい!

それができてこそ、初めてWTOの提訴も意味があるのではないだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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