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「ザ・インタビュー」は観るべき映画なのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

追記:2014/12/27/SAT/17:43

いよいよ、話題の映画「ザ・インタビュー」が公開された。見に行く人でインタビューに答える人たちは、映画を観るよりも、テロに屈しないという意思表明をしにきたようにもみえる。

ファイル共有ソフト「ビットトレント」上では、数千人が同作品を違法に共有している。海賊行為などの情報ブログ「トレントフリーク」によると、25日には約75万人がビットトレントを使って同作品の違法コピーをダウンロードしたという。

出典:ネット公開の「ザ・インタビュー」、違法ダウンロード75万回

キム・ジョンウン(金正恩)第1書記の暗殺を題材にしたコメディー映画を製作したソニー・ピクチャーズエンタテインメントは、公開初日の25日の興行収入は100万ドル以上、日本円にして1億2000万円を超えたと発表しました。

出典:初日の興行収入は1億2000万円超に

初日で10万人が劇場にかけつけたことになる。

オバマ米大統領は19日、ソニー<6758.T>の米映画子会社、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)に対するサイバー攻撃について、北朝鮮の犯行との見方を示し、対抗措置を講じる考えを表明した。

またサイバー攻撃の引き金となったとみられる金正恩・北朝鮮第1書記の暗殺を題材にしたコメディー映画「ザ・インタビュー」の公開中止をSPEが決定したことについて、間違った判断との認識を示した。

サイバー攻撃によりソニーは多大な被害を受けたとしながらも、公開中止は悪い前例となり得るとの考えを示し、決定前に自身に相談して欲しかったと語った。

大統領は年末の会見で「米国は、どこかの独裁者に検閲を科されるような社会であってはならない」とし、「相応の対応を行う。場所、時間、方法などはわれわれが決定する」と言明した。

出典:『ザ・インタビュー』の公開中止、「相談して欲しかった」 オバマ大統領

一本の映画をきっかけに、またいつもの米国の悪の枢軸国家の一方的な断定が始まったと思えてならない。もちろん、犯人が北朝鮮であるという、証拠そのものは、米国の「特定秘密」にあたり、証拠を見せられることは絶対にない。証拠がなくても、断定するのが米国のやりかただ(笑)。

映画監督のマイケル・ムーア監督が揶揄するように、これらは、米国の伝家の宝刀であり、こちらが、やられたからやり返す…といういつもの論理だ。いつもアメリカはこの手で他国への攻撃に及んでいる。ベトナム、湾岸戦争、イランイラクにいたるまで。

北朝鮮へ向けてアメリカがなんらかの報復するとなると、同盟国であり、憲法改正で派兵の制度や概念が変わる日本はどうなるのか?実際には、北朝鮮でのネットアクセスが遮断されるということが起きている。

北朝鮮のネットが9時間半ダウン。北朝鮮犯行説には疑問の声も

また、この映画の米国での上映を望む声も上がりだしている、かなり格式をもって…。

映画連合組合のラス・コリンズ代表は「現在の状況が社会的にも芸術的にも『The Interview』(原題)を価値あるものに推進しています。創造の表現を守る私たちの長い歴史の1つとして同作に敬意を表し、応援したいと思っております」とコメントした。さらに米国の連邦議会議員ブラッド・シャーマン氏も、アメリカ政府はこの脅威に立ち向かわなければならないと発言して同作をサポートしており、「我々はソニー・ピクチャーズを助けるべきであり、観客たちにも『The Interview』(原題)を観に行く自信を回復させるべきだ」というコメントも残している。ソニーの顧問弁護士デヴィッド・ボイス氏が「ソニーは同作の公開を遅らせただけです。ソニーは同作を公開するために戦っています。そして公開されることになるでしょう」「どのように公開されるかの詳細についてはまだ誰にも分かりません。しかしこの作品は公開されることになります」

出典:セス・ローゲン&ジェームズ・フランコ主演の問題作、映画連合組合が上映を熱望

結果として、2014年12月25日から米国で公開されることとなった。

監督と主演を務めるセス・ローゲン氏は「人々が声を上げた!自由が勝った!ソニーはあきらめなかった!」とツイート。

映画公開を喜ぶセス・ローゲンのtwitter
映画公開を喜ぶセス・ローゲンのtwitter

しかし、これは、あくまでも、セス・ローゲンの映画だ。

日本でいうと、吉本の芸人の映画だと思えばいいだろう。

本当に北朝鮮はこの映画「ザ・インタビュー」を公開されることを本当に阻止したかったのだろうか?という疑問が残る。そんな米国とのリスクを犯してまで、この映画の公開を恐れるような映画だったのだろうか?また、見る側も、テロの脅威に屈しないつもりで見に行く価値のある映画なのだろうか?

映画評論家の町山智浩氏は、「みんな、セス・ローゲンの映画を見たことがあるのか?」と指摘する

「ジ・インタビュー」っていう映画を作った人は、セス・ローゲンっていう人です。この人が作ってきた映画のタイトルを言います。『40歳の童貞男』『無ケーカクの命中男』『スーパーバッド 童貞ウォーズ』。バカ丸出しで童貞なんですよ!

出典:TBSラジオ たまむすび

町山氏らしい愛のある表現(笑)であるが、どうしようもないくだらない映画を作っている事は、伺い知る事ができる。アメリカではウケるのだ。くだらないアメリカン・ジョーク満載で。

セス・ローゲンで調べてみると、いろいろと過去の作品がわかる。コメディやパロディの映画監督だ。

そう、あの映画「グリーン・ホーネット」主演のセス・ローゲンでもある。あの映画はひどかった(笑)

2002年公開の「007/ダイ・アナザー・デイ」のほうが、シリアスで北朝鮮にとって都合が悪かったはずだ。

むしろ、シリアスが問題ではなく、金正恩第一書記をパロディネタにされていることが原因だったのかもしれない。それは、もし、日本の天皇が外国でパロディ映画化されていることに対して抱く感情と似ていると思う。

それでも、米国は「自由」という名のもとにこの映画を公開する。

一番、北朝鮮に近い米国の同盟国であるニッポンも、年末とか師走に関わらず、このくだらないと一部で評価されている映画の成り行きには、12月26日金曜日(米国時間の25日)から注意をしておく必要がありそうだ。何が起きるかわからないからだ。

イギリス人も、英王室を自分たちイギリス人で揶揄するのは許されるが、外国人が揶揄することには、違和感を覚える。日本人も天皇に際してはそれなりの距離感をとても大切にしてきている。自由の国、アメリカは大統領でさえ、自分たちで選ぶ国の文化の人たちだ。当然、元首や元首クラスの人に対しての価値感がちがう。

北朝鮮が滑稽に見えて、パロディにするのは自由だが、バカにされる国の立場も考える必要がありそうだ。今の北朝鮮は、軍国主義の頃のニッポンと、とても似ている。天皇バンザイで死ぬる人がまだ存在している国家なだけなのだ。国民がすべての情報を遮断され、軍国主義教育を繰り返していたかつてのニッポンと同様。そんな頃に天皇のパロディ映画を公開しようとしたならば、鬼畜米英(きちくべいえい)の気運に燃料を投下しているとしかいえない。

くだらない映画であればあるほどだ。そんな軍国時代を経験してきたニッポンだからこその、解決策はないのだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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