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食事中に新聞を読むことは行儀が悪い?新たな新聞サブスクライブモデルは?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
発行部数世界ランキングを占めている日本の新聞
発行部数世界ランキングを占めている日本の新聞

ある朝、スマホをさわりながら、朝ごはんを食べている子供たちに「食事中にスマホはやめなさい!」と叱ったら、反対に「食事中に新聞を読むのもやめなさい!」と子供に叱られた。思わず、反論した!

「これは、新聞であなたたちのは、電話でしょ!…」と言いかけた瞬間に、完全なる自己矛盾に気づいた…。

「すみません、お行儀悪かったですね(笑)」なぜ、朝ごはんの新聞は良くて、スマホはダメと感じるんだろうか?

昔は、朝刊を読みながら食事するのは、悪いどころか、ビジネスマンとしては、常識という行為でもあった。一般紙と経済紙、さらに地方紙も読んでいた。むしろ、考えてみると、家長であるお父さんは寡黙に新聞を読みながら食事をしているのが威厳でもあったはずだ。かつて、祖父がいた頃は、祖父が読み、父が読み、母が読み、そしてボクに来る頃にはヨレヨレになったテレビ欄をチェックし、弟は最後の漫画だけを読んでいた。かつての世帯では、お父さんが一家の大黒柱であり、お父さんは家庭の中における治外法権であり、絶対的な存在であった。それが、共働き、育メン、草食系、様々なお父さんが登場し、食事中に、「お父さんだから新聞を読むのはお仕事だからいいの!」という論理は通用しなくなってきているのかもしれない。

現在のスマホは新聞であるといっても過言ではない

それは新聞のスタイルだが、それが携帯電話、いやスマホに変わった瞬間に、突然お行儀がぐ〜んと悪くなる。うん、確かに、スマホを見ながら、食事をしている構図は、ご飯にも大変失礼だと感じる。新聞でも同じはずだけど、スマホと新聞が同じという感覚にはなかなかなれない。もちろん、新聞を読みながら、食事をするべきではないのは確かなことだ。…では、どのタイミングで朝刊を読めばいいのだろうか?トイレの中、歩きながら?電車で?会社で? うーん、はっきりいって、どこに行ってもお行儀は悪い(笑)。

つまり、朝ごはん時に新聞が読めなくなると、朝刊と接する場がまったく無くなってしまうのだ。これは新聞社の今後抱える一番のジレンマではないだろうか?早起きして、洗面して、ゆっくりコーヒーを飲んでから、しっかり新聞を読んでから朝食なんて時間は朝では不可能だろう。やはり、食事の時に、テーブルクロスかナプキン感覚で新聞を読めるのが紙の新聞の生態系ではないだろうか?

新聞は良くて、スマホはダメ。それは論理的におかしい。媒体のパッケージがただ違うだけだ。それでは、なぜ?新聞とスマホはこれだけ、朝食シーンに区別されるのだろうか?

一つの答えは、新聞は、新聞を読んでいるサマがみんなにわかるからだ。新聞を読んでいると可視化されている。一方、スマホは一体何をしているのかが、まったくわからないからとてもお行儀が悪く見える。新聞は遊んでいるようには見えないが、スマホは遊んでいてもわからない。では、タブレットだと行儀はよくなるのか?どうも、フリックしたり、スワイプする行為がなぜか行儀よく思えない(笑)新聞は指をなめてページをめくっていたりする。よほどこちらのほうが衛生的にも行儀よくないはずなのに。

かつて、ネットが普及してきた時も、会社で電子メールを見て、ウェブを見ていると、仕事をしているのかどうかわからないと問題になった時期があった。なんだか、その時と非常によく似ている。

そして、もう一つの答えが、スマホが「電話」だからだ。誰が見ても、電話で通話しながら食事していると思うと気分が悪いはずだ。スマホというスタイルが電話の派生であるかぎり、食卓に持ち込まれることに違和感を感じるのが昭和時代のDNAなのではないだろうか?

それでも日本の新聞の発行部数は世界ランキングを占める

日本新聞協会の新聞の一世帯あたりの部数は、2000年に1.13であったが、2012年には0.88となった。

http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php

一世帯に、新聞一部もリーチしなくなって久しいのだ。体感的にはもっと激減なのかもしれない。

しかしながら2011年での世界ランキングでは、日本は堂々たる新聞国家である。もうオリンピックならば、金メダルラッシュのような様相だ。アメリカ、イギリスはもとよりインドや中国をも制しているのが日本の発行部数なのだ。

1.読売新聞 996万部

2.朝日新聞 775万部

3.ザ・タイムズ・オブインディア インド 409万部

4.毎日新聞 343万部

5.日本経済新聞 302万部

Bild ドイツ

6.The Sun 英国 277万部

News of the World 英国

中日新聞

7.Dainik Jagran インド 266万部

8.Reference News 中国 245万部

The Chosun llbo 韓国 

JoongAng llbo 韓国

東京スポーツ

9.The Wall Street Journal 210万部

10.People's Daily 中国 210万部

The Dong-a llbo  韓国

http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_newspapers_in_the_world_by_circulation

HitList The World’s Top Ten Newspapers

http://www.thehindu.com/multimedia/archive/00811/World_Press_Trends__811934a.pdf

しかしながら、データとは裏腹に、紙の新聞を読んでいる人を電車の中で、実際に見かける機会も極端に減ってきている。日本が世界最大の新聞王国と世界で紹介されても、絶対に嘘だと思う。発行部数と新聞を辞めている人の相関関係がおかしいのかもしれない。

新聞購読を辞めたくなる時

紙の新聞の購読を辞める最大の原因は、毎日毎日膨大な紙が家に貯まるということではないだろうか?

そして、読もうと思う記事が「積ん読く」になってしまう。朝のチラシもはいっている。さらに、24時間以上経過した新聞には何の未練もない。その新聞の山を眺めていると、読めていない自分が可視化される。いつこれを縛って捨てるのか?ヒモとハサミを用意して、縛ってマンションのゴミ捨て場に捨てられるのは何曜日だ?。

その点、スマホは非常に便利だ。ネットの新聞サイトでほとんど無料で読める、有料会員になるまでの大した記事は幸いどこにもない(笑)。紙の新聞よりも、新しいフレッシュな情報と出会える。紙の新聞はすべて過去の情報だからだ。臨時ニュースは新聞に乗らない。…であればスマホでいいではないか?

ところが、スマホの場合は、気になった情報しかクリックしない。だから、情報を好き嫌いする偏食化が促進され、好きな情報しか食べなくなる。しかし、紙の新聞は気にいらない情報も、見出しやリードくらいは眼に入ってくるから、そこで得られる補完情報によって情報の栄養バランスが良くなるのだ。

さらに、スマホでは広告などクリックしたことがないが、新聞の全30段の企業広告を見て、コピーに感動することもあり、週刊誌の見出しや書籍の新刊情報などの広告も実によく読んでいる。有料で払っているからこそ、広告も読もうとしているのだ。

世界最大級を誇る日本の新聞社は、そんな最大顧客を、ずっと指をくわえたまま失おうとしている。

新聞サイトは、ネットニュースの流入に入り口を握られ、今やスマホサイトでは、全文読まなくてもわかるため、新聞サイトにまでこない。モバイル広告はゲームユーザーと違い、クリックされにくく、インプレッションのためのバナーはユーザーとの親和性が低い。ニュースを読みたいユーザーと狭いモバイルディスプレイ空間を占拠するバナーは敵対関係にあるからだ。

新聞は携帯電話とセットにしてしまおう!

そこで、そんな悩める新聞社に起死回生の提案をしてみたい。少なくとも、ボクは新聞を紙でも読んでみたいと想っている。

新聞の一ヶ月の購読料金を月額4,000円としよう。そこで携帯通信会社3社と契約するのだ。どこと座組をするかは早いもの勝ちだ。携帯電話会社は2年縛りの反面、MNP獲得のために膨大なコスト、キャッシュで5〜7万円をかけて顧客を獲得している。つまり、そのコストは月額にして2,000〜3,000円である。

各携帯電話会社で新聞を2年縛りで契約してくれれば、月額1,980円で読めるのだ。4年縛りだと、月額980円という具合だ。新聞代金がまず、2,000円〜3,000円も安くなるわけだ。MNPをしてから一年後からの契約にすれば、MNPの期間が一年伸びるプランとなる。これは通信会社にとっては嬉しいハナシとなるだろう。

もしくは、見え方としては、新聞をオプションとして、携帯料金オプションとして載せるという方法も考えられるだろう。

当然、スマホユーザー版として考えれば、編集面も変化させることができそうだ。

テレビにはEPGが搭載されている、ラジオはRadiko.jpでも対応できるので、テレビ・ラジオ欄は削除できる。また、暗いニュースばかりの社会面も、いらないのかもしれない。暗いニュースはどんなところからも流れてくる。それをニュースで確認する必要はない。

また、夕刊も廃止していいだろう。スマホユーザーは朝刊読んで、さらに夕刊まで読んでいるヒマはない。

そして、大事なのは、記事にQRコードなどをつけて、スマホやタブレットなどでウェブとのリンクができるようなリンク機能などが新聞には必須となるだろう。

テレビがリモコンやスマホと一緒にインテグレーションしているのに、瀕死の新聞が、朝ごはんのお供だけではつらすぎる。今のうちに世代超えできるプランを考えてみるのはどうだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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