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半沢最終回、視聴率に願う事

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

遂に最終話を迎えたTBS半沢直樹。

視聴率的には社会現象ともいえるべき番組とだっただろう。

日曜日のこの時間に、北大路欣也さんの銀行の頭取役を見ると、ボクは、思わず、阪神銀行(華麗なる一族)の頭取役の方がついつい頭によぎっていた…。

そして、いよいよ、半沢直樹が最終回を迎える。

日曜日のサザエさん症候群から脱皮できる至福の時が、もうこれで終わってしまうのだ。

CMスキップを時短で見るために、30分遅れで時間差視聴を開始。そうするとCM時間が短縮できるのだ。

当然、ボクのテレビには、視聴率調査の600世帯に設置されているピープルメーターではないので視聴率には全く影響しない。むしろ、録画している率を調査すると、もっと視聴率は上がることだと思う。しかし、その半面、CMを見ないCMスキップ率も上がることとなる。さらに、テレビをネットでつなげられてしまえば「視聴率」ではなく、レアな「視聴数」まで広告主に知られてしまう。そこのデータは、「疎開資料」としておきたい。

視聴率はあくまでも「率」であり、母数があっての率である。実数を測定できない時代だったからこその、科学的な計測手法であった。しかし、今は、ネット接続テレビで実数を測定できる時代だ。

視聴率は絶対であり、正しく、どこにも不正はまったくない まるで、「大和田常務」の言葉のようだ(笑)

テレビ離れ時代における脅威の視聴率ドラマの理由にも書いているが、視聴率にもそろそろメスを入れる、金融庁が必要だと思う。

瞬間最高視聴率が40%を超えるということはスポンサーも大満足だ。CM枠の電波料金はまったく一緒だからだ。

当然、広告主、担当者もTBSの担当社員の株も上がることとなる。いいことだらけだ。

すでに半沢直樹は、W杯予選オーストラリア戦(35.1%)や北京オリンピック(37.3%)開幕式を抜き去っている。あともう少しで紅白歌合戦(42.5%)も追い抜こうとしている。いや、最終回は追い抜いただろう。

その舞台となったTBSは25分拡大で、半沢直樹の「シーズンI」を終える。

むしろ2時間スペシャルというカタチもとれたのではなかっただろうか? 編集次第で、最初の1時間は、単なる今ままでの振り返りを行えばよかったのではないだろうか?。第一話から見続ける人以外に、この話題を聞いて途中から視聴している人も多いはずだ。 

だから、最終回だからこそできる禁じ手も使い放題だったはずだ。 

制作コストをかけないまま編集だけで、40%台を2時間維持できるチャンスをTBSは失った。

もったいないハナシだ。

しかし、確実に視聴率は、昔の40%と今の40%では、質が違う。

視聴率調査のモニター世帯に、大きな偏りがあるからだ。

平日の昼間に家にいる世帯はどんな世帯だろうか?購買意欲も旺盛な働き盛りは、共働きで、平日の昼間は、もう家にはいない。テレビを愛して、ずっと収入も消費も少ない属性の人たちが、平日昼間にやってくる調査員のボランティアのお願いでピープルメーターを設置協力する。毎月25世帯づつ入れ替わり、2年ですべて新しい世600世帯に変わる。統計学的に正しい有意抽出であったとしても、母数の属性に関しての分布も社会実態に近づけなければ意味がない。

視聴率は、まるで、「東京中央銀行」のように、自分たちの保身と潰れない組織と仕組みを維持するためだけにステイクホルダーが、うごめいているようにもボクには見える。

しかし、それもそろそろ時間の問題となってきた。ネット広告が売れ、リスティングやマッチング広告がある中で、マスの広告だけで、どれだけのモノが売れているのか?消費税も8%となろうとしているのに。

まだ、視聴率と売上の間に相関関係があるならば、それは良好な経営状況だ。

しかし、視聴率が売上ではなく、ブランド認知や企業の好感度に置き換えられるようになれば、それは危険信号だ。

その薄氷のような視聴率神話の上にテレビ業界も成立しているからこそ、テレビ業界も危惧しなければならない。

いい番組は「率」が取れること。「視聴率」の為に仕事をしている。

半沢直樹は、自分のやっていることは、大和田常務と何も変わらない「同じ穴のムジナ」だという。

しかし、相棒のミッチーは、「相手の為にやるのか自分の為にやるのかが大きな違いだ」と諭した。

視聴率は、誰の為にあるのか?

銀行と同じく、潰れてはいけないモノではない!

何の為に存在しているのかの意味を考えた場合、録画率、再生率、CMスキップ率もすべて明らかにすべきだろう。

そこから、はじめて広告主や視聴者との会話が始まるのではないだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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