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ネット選挙解禁日!未成年者をどう判断?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

7月4日(水)は、第23回参議院選挙の公示日である。

いよいよ、日本の選挙史に残る日となるネット選挙の解禁日が迫った。

ネット選挙に関しての正しい理解は、この17日間だけ、ネット上でできなかった選挙活動ができるようになったという理解でいいと思う。

それ以上でも、それ以下でもない。恐らく、いろいろと問題が噴出することが容易に想像できる。

それは、ネット選挙に関する法案そのものが、飯櫃な抜け穴だらけだからだ。

選挙に関する監督省庁である総務省がガイドラインを提示している。

特に、問題なのが、このチラシだ。

インターネットでも現実の世界でも、未成年(年齢満20歳未満)の方は選挙運動はできません」である。

公職選挙法第137条の2

(未成年者の選挙運動の禁止)

第百三十七条の二  年齢満二十年未満の者は、選挙運動をすることができない。

2  何人も、年齢満二十年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。

…なんだ、バイトはできるのか!(笑)ネット上でRTなどの単純作業の労務を未成年がおこなった場合はどうなるのか?という疑問がふつふつと湧いてくる。

むしろ、未成年の選挙に関する「twitterでのRT禁止」「候補者からのメールの転送が禁止」という規制の意味が全く理解不明だ。

この法律は、日本国憲法第21条の「表現の自由」に抵触しているのではないだろうか?

そもそも、未成年の選挙運動が禁じられているのは、「心身ともに未成熟な未成年を保護するため」(総務省)とされている。

しかしだ。未成年の目に触れている時点で、未成年に全く保護されていないし、目に触れたものに対して抱く感情の表現を禁止し、公選法に基づき、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金の対象となるのはおかしすぎるだろう。それは未成年の保護とは言わない。

10代に限らず、未成年が政治に関心を抱くことは、すごく意味のあることだろう。投票権や参政権がないだけで、選挙運動や政治運動は自由とすべきではないだろうか?

もしかすると、学校で社会科、政経、現代社会、公民で学んだ事を実名議員を事例にブログやツイートしたりRTすると、法律違反になるのか?そんなバカな法律あるか!

ネット上では、未成年でも、政治や選挙に考える時間を多く持てる若者が多くなり、選挙に行かないオトナがバッシングされるなんてこともありえるだろう。

今回のネット選挙では、大量の未成年者の公職選挙法違反該当者が現れることは確実だ。

しかし、それで、逮捕にまで至ることは極端に少ないだろう。

それは、ネット、およびソーシャルメディア上では、一体、誰が未成年であるかということを見極めることが非常に難しいからだ。

これがネット選挙解禁を規制している法律で一番ザルな部分だ。

そもそも、メールアドレスだけで取得しているネット上でのアカウントをどうやって未成年と見分けるんだ?

電子メールとアカウント名だけで年齢を当てる技術を選挙管理委員会や総務省は持ち合わせているのか?

twitterや、facebookでも実年齢の確定は難しい。 携帯電話にヒモづいているLINEやカカオでさえ、通信会社側が個人データを提供しない限り年齢はまったくわからない。

未成年かどうかを特定しないで、未成年の選挙運動禁止を掲げるこの法案は、法案を通す為に無理やりつけたとしか思えない法案だ。

総務省 インターネット選挙運動の解禁に関する情報

2013年04月19日 議員立法成立 

インターネット選挙運動解禁に係る公職選挙法の一部を改正する法律

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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