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今夜、WWDC2013 スマホ成熟時代にアップルが打つ次の一手に期待したい

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
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2013年06月10日(米国時間)、米国サンフランシスコのモスコーンセンターでアップルの開発者会議が開催される。

そして、日本時間の今晩、26:00頃の基調講演で、iOS7や何らかの新製品が発表されると予測されている。

アップルにとって、このWWDC(Worldwide Developers Conference:世界開発者会議)は、次世代OSの仕様を開発者に発表し、より魅力的なアプリケーションやアプリを作成してもらうための会議だ。なので、どちらかというと、ハードウェアの仕様というよりも、ソフト的なOSの仕様についてフォーカスが今までなされてきた。

しかし、近年のiPhoneやiPadに見られるタブレットの製品群においては、ソフトウェアだけでなく、タッチパネルや加速度センサー、レティナディスプレイ、GPS、電話帳、そしてソーシャルメディアなどの連携という、OSまわりのソフトウエア環境までがハードと非常に密接になってきているからハードウェアの特徴も説明する必要が出てきたのである。

本日、発表されるかどうかは未定だが、iWatchやiTVの噂も耐えない。

かつて、初代iPhone3Gがカット&ペーストすら出来なかった時代から、iOSアプリのマーケット App Storeの登場により、市場は大きく様変わりしてきた。

iPodというハードウェアの登場は、iTunesと連動することにより、音楽を管理するだけでなく、ネットワークにおけるダウンロード販売の課金プラットフォームと成長した。そして、今や、そのiTunes Storeの課金プラットフォームと連動して、音楽から映画、テレビ番組も購入し、Apple TVを経由すると大型テレビでさえもアップルのディスプレイとなる時代へと進化している。課金プラットフォームによってアップルは、アプリから30%もの手数料がとれるという金脈を掘り当てている。

今年は、アップルの音楽ストリーミングサービスのiRadioの登場も期待されてはいるが、日本では、同様のストリーミングサービスのPANDRA.comやspotify.comなどが許可されていない。それは、日本の商業用レコードの二次利用に関する権利諸問題の難しさに起因する。それでなくても、シュリンクし続けている音楽産業が、iPod全盛の時にすぐに参入しなかった苦い経験を、ここでまた繰り返そうとしているのは残念でならない。

アップルのiOSが7になることによって、洗練され、半年後のハードウェアに実装されるロードマップがあると思うが、サムスンやGoogleの進化も鋭い。

アップルはサムスン製の部品を極力減らし、Googleのアプリ依存を減らそうとしてきた。しかし、地図においてはアップルは大きなミスを犯してしまった過去を持つ。

また、税金問題で米国議会の公聴会に呼び出しをくらってしまう。さらに株価は昨年の700ドルの絶頂期からは4割減でもある。ちなみに本日のレートは441.81ドルである。

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今や、製品やOS、そしてブランド力だけではなく、総合的な魅力がアップルに課されられている時期であるといえよう。

かつてこの試練の時期は、二度あった。そして今回は三度目の正直なのだ。

最初は、アップルがゼロから作ったパーソナルコンピュータ市場に、1991年にIBMが参入してきた時である。IBMが参入することによって、パソコン市場はまたたく間に大きくなった。しかし、同時にIBMは互換機PCというライバルに苦しめられ、マイクロソフトのMS-DOSのみが席巻していくこととなった。

そして、二度目は、GUI(グラフィックユーザーインタフェース)パソコンとしての市場を育て、DTP(デスクトップパブリッシング)でクリエイターと共に印刷業での市場を制覇していた時に、1995年、マイクロソフトのWindows95とその対応パソコンが参入してくる。

そして、その後のインターネットブームにあわせて、アップルもマイクロソフトも後付けソフトでインターネットに対応していたが、マイクロソフトは本格的にブラウザ戦争に参入し、ネットスケープからシェアを力づくで奪い取った。アップルはCyberdogを開発するがブラウザとしてはまったく普及しなかった。シェアを持たないアップルのMacintoshでは視聴できないウェブサイトが多く作られてしまう結果も招いてしまった。

アップルの強みは、(かつて)自社でCPUも作り、OSも自社で作り、ハードも自社で作り、近年ではiTunes Storeのような課金プラットフォームをも自社で持つことだ。

そして、弱みは、ユーザーの選択肢が、その他大勢か、アップルかしかないことだ。

第三の局面に入った今、OSはGoogleのandroid OSがシェアを握り、単独スマートフォンのシェアもサムスンに奪われてしまった。

今回の敵は、マイクロソフトではなく、Googleやサムスンなのである。

成熟化してきたスマートフォン市場で、android陣営とどう差別化するのか?が今回の課題である。

圧倒的多数な各スマートフォンメーカーが3ヶ月ごとに新製品を投入し、アップルは1年に一度のマイナーヴァージョンアップと2年に一度のメジャーアップデートで、対応しきれるとは思えない。

アップルが作ったこのスマートフォンという市場を守りぬくもよし、また次のまったく新たな市場を作るのもよし。

最近、まったく聞いていない「One more thing」というジョブズのような、財布を思わず開いてしまいたくなるような新製品を標榜するワードを今夜はぜひ聞いてみたいものだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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