70歳継続雇用は日本企業のダメな部分をより一層パワーアップする

政府が成長戦略の中間報告書において「70歳継続雇用の法整備」について明記しました。これで2年内をめどに何らかの法制度化が行われることが確実となりました。

恐らく65歳継続雇用の時と同様に、最初は企業に裁量を与えて努力義務としつつ、数年後に「定年制度の廃止か例外なく70歳まで継続雇用」を迫るものと思われます。

仮に70歳継続雇用が義務化された場合、企業と従業員の関係にどういった変化が生じるでしょうか。

ますます賃金が上がりづらくなる

現在、バブル以来の好業績をあげる企業が続出する中、賃金だけは期待していたほどには上昇せず、総理自身が毎年のように労使に3%の賃上げを要請する異常事態が続いています。

その背景には「終身雇用ベースの日本企業の場合、後で解雇も賃下げも行いづらいためにあえて労使が昇給を見合わせる」という構造的な事情があります。

雇用期間を5年延ばすということはさらにリスクを長期にわたって織り込まねばならないわけですから、昇給はさらに抑制されることになるでしょう。

採用が保守化する

採用面でも70歳雇用は大きな影響を与えるはずです。従来も日本企業の採用は保守的なスタンスに基づいて行われていました。思い切った採用をしてはずれを引いてしまった場合、はずれ人材であっても定年まで抱え込まねばならず、採用セクションの責任問題となったためです。

当然、こうした姿勢にも拍車をかけることになります。東京医大の入試不正問題において「男子、一浪までを優遇」という内部基準の存在が明らかとなりましたが、同様に「あまり寄り道しておらず途中で休職しなさそうな人材」の採用に各社血道を挙げることでしょう。

人材も保守化する

ビジネスパーソン本人の行動にも70歳雇用は影響することになるはずです。長期間一つのコミュニティに属すると、人材はコミュニティ内の信用を維持するために保守的、前例踏襲的にふるまうことになります。

あえて個人でリスクをとる人の割合は減り、逆に近年相次いでいる大企業の不正隠避問題のようなケースは増えることになるはずです。

継続雇用よりも解雇規制緩和と定年制度の廃止を

抜本的な処方箋としては、解雇規制緩和と定年制度廃止をセットで実現するのが理想的でしょう。これにより働く意欲と能力のある人材は何歳まででも就労することが可能となります。

企業も思い切った採用が可能となり、現時点での働きに相応しい報酬を払うようになるでしょう。企業と個人がリスクをとれるようになる環境実現こそ、真の成長戦略だというのが筆者のスタンスです。