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東京医大が点数操作までして女医を減らしたかった理由

城繁幸人事コンサルティング「株式会社Joe's Labo」代表

東京医大が、女性の受験生に一律で減点処理をすることで合格数を3割未満に抑えていたと読売新聞がすっぱぬき、騒動になっています。

【参考リンク】東京医科大による得点操作 前理事長ら3人のみ知るマニュアル存在

そもそも、なぜ東京医大は女性の合格者が増えるとまずいと考えたのでしょうか。そこには日本企業にも共通するある問題が関係しています。

日本型組織が女性を敬遠する理由

終身雇用と年功序列制度を柱とする日本型組織には、以下のような特徴があります。

1.一定の残業を前提とし、従業員数を抑制する

業務量に応じた柔軟な人員調整はできませんから、今いる従業員の残業で対応することになります。そのため、ちゃんと残業時間の上限にも例外が認められ、諸外国がビックリするくらいの長時間残業が可能となっています。

2.全国転勤という仕組みがある

ある事業所で欠員が生じた場合、会社は余剰感のある事業所から従業員を移すことで対応します。雇用そのものは守られるため、労働組合も協力的です。

3.途中で休職する可能性の高い人材は敬遠される

年功賃金というものは、20~30代のうちは働きぶりに見合わない額ですが、40代以降に過去の年功に見合った額に昇給することで帳尻が合うシステムです。そのため、年功を働き貯めるはずの期間に休職する可能性の高い人材は、企業から見れば「割に合わない」と見えてしまいます。

まとめると、長時間の残業ができる体力があり、会社都合でいつでも転勤してくれ、キャリア前半で休職しそうにない人材が終身雇用制度では有利ということになります。これが、日本企業が女性を敬遠する理由です。

見て見ぬふりをしてきた社会

日本企業は過去数十年以上にわたって新卒採用において女性の採用数を抑制し続け、現在に至ります。空前の人手不足を背景に、総合職における女性の採用割合は過去最高を更新しましたが、その割合はたった22.2%にすぎません(コース別雇用管理制度の実施・指導状況2014)。ちなみに3年前の調査では11.6%でしたから、人手不足がなければ1割程度しか採用していないはずです。

医大というのは高等教育機関であるとともに、系列病院に医者を配属する人材採用&育成機関でもあります。となると、入試=採用活動に際して現場のニーズを完全無視というわけにはいきません。企業の新卒採用と同じ感覚で、企業が筆記試験やエントリーシートを使って女性だけ絞り込むように、点数操作を行ったのでしょう。

長年にわたって企業の採用現場で行われてきた女性排除について、保守派はもちろんのこと、労働組合や民主党、共産党といったリベラル派も一貫して黙殺を続けてきました。それを認めれば、終身雇用と年功序列を柱とする日本型雇用そのものに批判の矛先が向かうためです。

でも、高等教育機関が点数操作までしていた事実に対し、そろそろ現実と向き合うべきでしょう。具体的には、残業ではなく新規採用で対応する流動的な労働市場の整備と、年功賃金ではなく職務に応じて支払われる賃金制度への移行が必要となります。今回の件は、社会全体でそうした議論を進めるべききっかけとすべきだというのが筆者のスタンスです。

人事コンサルティング「株式会社Joe's Labo」代表

1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。08年より若者マニフェスト策定委員会メンバー。

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