ヘッドセットを社員に配るだけではテレワークは上手くいかない

日立製作所が10万人ほどの従業員を対象にテレワークを導入するというニュースが話題となっています。個人間でもスカイプでやり取りする時代、一か所に全員で集まって仕事をする意義は急速に薄れつつあるのが実情です。まだまだ日本のテレワーク導入率は14%と米国の80%などと比べれば低いものの、今後は徐々に浸透していくものと思われます。

【参考リンク】日立がテレワーク10万人 社員の過半、生産性向上へ

ただし、ヘッドセットを配るだけで“働き方改革”が実現すれば誰も苦労はしません。テレワークを実のあるものとするためには、システム環境の整備以上に思い切った改革が必要でしょう。

テレワークが浸透しない原因は賃金制度の違いにある

大手メーカーに勤める筆者の知人にも、2年前からテレワークの利用を始めた人間がいます。事前に申請すれば一定期間の在宅勤務が可能という制度で、最初のうちは積極的に利用していたそうですが、最近はめったに利用していないとのこと。理由を聞くと、こんな答えが返ってきました。

・通勤時間が無くなるのは嬉しいが、事前に職場で根回しをする必要があり、さほどの効率化にはならない

・いつでも同僚と連絡の取れる体制でいる必要があり、自由時間が増えるというわけでもない

・職場の全員が制度を利用しているわけではないため、だんだんと後ろめたさのようなものを感じるようになった

上記の課題の原因は、すべてある一つの原因で説明可能です。それは「担当業務の線引きが明確にはされていない」ことです。

日本企業で一般的な職能給は個人の能力に値札をつけるもので、年功序列色が強く、個人の担当する業務範囲はきわめて曖昧です。「みんなで一緒に仕事に取り組む」というメリットもありますが、「みんなで顔を突き合わせて仕事しないといけない」「ゴールが不明確なので一人だけ早く終わっても帰れない」「有給が取りづらい」といったデメリットもあります。

「事前の根回しが面倒」「いつでも連絡の取れる体制」「だんだん後ろめたさを感じてくる」といった課題は、すべて各人の担当業務が曖昧だからこそ起こるわけです。

ちなみに世界標準である職務給の場合、担当する業務内容に応じて賃金を決めるシステムであるため、業務範囲は明確です。日米のテレワーク普及格差の背景にはこうした人事制度の違いがあるわけです。

実際に賃金制度そのものの見直しにまで踏み込むかはともかく、テレワークで実のある生産性改革を実現するには、あらかじめ全従業員の業務範囲を明確に切り分け、根回しや連絡を最小限に抑えられる環境整備が必要でしょう。