ある調査によると、日本の若手社員のうち「2年以内に転職したい」と回答した人の割合が37%と、前回調査より7%も上昇していることが明らかになりました。

【参考リンク】「2年以内に転職したい」若手社員の4割に 民間調査

世界平均が43%ですから、だいぶ世界標準に近づいたわけです。法律や人事制度はなかなか変わりませんが、少なくとも35歳以下の若手は自分たちで勝手に流動化し始めていると言っていいでしょう。ちなみにその理由はシンプルで「40歳以降の出世や昇給に大して期待できない」と考える若手が増えた結果、自力でより魅力的な仕事を探し始めたということですね。最近のメガバンクなどが典型でしょう。

とはいえ、組織としては若い戦力が流出してしまうのを指をくわえて見ているわけにはいきません。そもそも若手の流動化は社会にとって歓迎すべきことなんでしょうか?そして、会社はどういった対策をとるべきでしょうか。

転職回数が多いほど労働者は幸せ

結論から言えば、若手の流動化は素晴らしい変化を本人と社会に及ぼすことになるはずです。理由は以下の3点です。

1.本人の仕事への満足度が高まる

終身雇用制度のある日本では10年以上の勤続年数のある従業員の割合は45.1%と、世界最高水準です(国際労働比較2017)。ではすぐクビに出来て勤続年数10年以上の人が28.9%しかいないアメリカ人より幸せかと言えばむしろ逆で、仕事に対する満足度ややりがいと言った各種調査では、逆に世界最低水準のものが目立ちます(満足度調査はISSP国際比較調査2005で調査対象32カ国中28位、熱意については以下参照)。

【参考リンク】「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

転職回数が多い方がそれだけ自分の理想のキャリアに近づく努力をしているわけで、当然の結果ですね。新卒で入った会社で与えられた仕事がたまたま天職でした、という人なんてまずいないでしょう。というわけで、若い世代がどんどん流動化することで、上記のような満足度ランキングも、これから徐々に上向いていくことでしょう。

2.採用がクリアになり、ブラック企業は淘汰される

90年代まで、日本企業の採用スタンスの基本は「いかに学生をひっかけるか」でした。とにかく明るく風通しの良いオフィスをアピールし、説明会では美辞麗句を並べたうわべだけの説明に終始し、いざ入社してみると「全然逆で驚いた」という新人は珍しくありませんでした。なぜそんなギャップがあったのか。一定規模以上の企業へは新卒採用という入り口しかない以上、上手く誤魔化してでも入れてしまえばもう逃げられる心配がなかったからです。

でも若手が流動化してしまったらもう嘘は通用しません。すぐ逃げられる以上、最初から洗いざらい見せた上で納得してくれた人だけを採用した方がコストは低く抑えられます。というわけで最近急速にインターンシップが普及しているわけです。

同じ理由で、いわゆるブラック企業問題も転機を迎えることになります。大手同様の滅私奉公を要求しつつも終身雇用という対価の保証されない「見返りの無い企業」のことですね。実はそうした企業を下支えしてきたのは、「どんな仕事でも芽が出るまで頑張る」と言った昭和的価値観だったりします。そういう価値観を持たない世代が台頭することで、今後は急速にブラック企業も淘汰されるでしょう。

3.企業が人事制度の見直しを余儀なくされる

そして、企業は硬直した人事制度を見直さざるを得なくなります。日本企業には、みんな常識だと思っているけど実は日本独自の奇妙な慣習というのが多々あります。全国転勤や長時間残業、有給の取りづらさといったものですね。それぞれにちゃんと理由はあるのですが、現実問題としてそういう“ムラのおきて”に従い組織は運用されているわけです。

でも「転勤ですか?では辞めます」や「どうして仕事終わったのに残業しなければいけないんですか?」などと平気で自己主張する世代が増加すれば、組織は“ムラのおきて”の方を見直さざるを得なくなります。

一方、若手をつなぎとめるために組織は何をすべきでしょうか。まずは、説明会で事業内容や展望など「見栄えの良い話」だけをするのではなく、会社のリアルな情報を開示することでしょう。それにはインターンシップがとても有効です。

くわえて、人事制度そのものも、年齢や勤続年数によらずに評価される職務ベースのものに見直すことが必要です。それは若手はもちろんのこと、これまで出世を諦めかけていたグループにも活躍のチャンスを広げてくれることでしょう。若手社員の定着には、誰もが柔軟に評価されうる人事制度があり、中高年や女性が希望を持って働くカルチャーの存在が実は一番効果的だというのが筆者のスタンスです。