豊田議員のパワハラ発言から労働市場流動化のメリットを考察する

埼玉四区選出の自民党衆院議員、豊田真由子先生の秘書へのパワハラ騒動が波紋を呼んでいます。問題自体の是非はさておき、筆者は仕事柄、本件が流動的な労働市場のメリットを端的に示しているモデルケースであるように見えますね。

議員スタッフというのは選挙がある以上、終身雇用というのは成立しません。またどの党が勝とうが負けようが永田町全体では常に一定の求人自体は発生するので、たとえるなら数年ごとに雀卓をガラガラポンするような流動的なプチ労働市場が成立しているわけです。

というわけで、良い機会なので簡単にまとめておきたいと思います。筆者が考える流動的な労働市場のメリットは以下の3点です。

「ハゲ」って言われたらいつでも辞められる

頭髪の薄い、あるいはまったく存在しない人を指してハゲなどと罵るなど人としてあるまじき行為です。しかし、それに類するようなワードが従業員に連発されている職場は民間企業にあまたあります。また、言葉の暴力は伴わずとも、労災認定されるほど長時間働かされる職場も珍しくありません。

なぜ、日本人はそうした劣悪な就労環境に耐えねばならないかと言えば、終身雇用がベースとしてある以上、一度入った会社を途中でやめた場合、同じランクの処遇に就くハードルが上がるためですね。特に大企業や官公庁なんて“新卒カード”の使える一回だけしか入社するチャンスがない人がほとんどなので、そういった組織に入った人ほどどんなに過酷でも歯を食いしばってしまうわけです。

その点、流動的な労働市場なら我慢なんてする必要はありません。合わないと思えばいつでも辞められます。辞めることが珍しくないので「ここで政治家の事務所は5回目になります」なんて人でも普通に採用してもらえます。

労働環境が向上する

スタッフがばんばん転職すると、何が起こるか。長期的には必ず業界全体の労働環境は底上げされます。なぜなら、優秀なスタッフを引き留めるためには労働環境の改善を図る以外に無いからですね。逆に言うと、それが出来ない議員のところにはロクでもない人材しか寄ってこないことになります。

筆者は豊田センセイに怒鳴られていた秘書さんのことは知りませんけど、やり取りを聞く限り、はっきり言って優秀な人とはとても思えませんね。というか、後援者向けの礼状の宛名を間違えるとか新人でもやらないと思いますけどね。まあ4年半で100人辞めるような労働環境だと、そういう人材しか集められないということです。

ところで、筆者は国会議員の皆さんには、ぜひとも秘書の平均勤続年数を公表していただきたいと考えています。党や役職で大きく変わってくるでしょうが、たとえば同じ〇回生同士で比較してそれが長いということは、労働環境がよく、優秀な人材を集められている可能性が高いということです。その影響は議員としてのパフォーマンスにも反映されることでしょう。

不祥事が隠避できない

また、労働市場が流動的ということは、不祥事が隠しづらいということでもあります。だって、今は自分の秘書でも来年はライバル政党の議員秘書になっているかもしれないわけです。秘密の共有なんて出来ません。

近年、オリンパスや東芝など、大手企業が20年以上にわたって不正会計を続けていた問題が発覚しましたが、労働市場が流動的でないとああしたことが発生する温床となります。どれだけコンプライアンスだなんだと掲げたところで、従業員もその会社で一生飯を食っていくわけですから、みんなで一緒に隠した方が好都合なのです。

筆者はかねてから提案していますが、霞が関で働く皆さんは、そろそろ本気で政党横断的な労働組合でも作られたらどうでしょうか。政党によらずすべての秘書やスタッフが加入できて、各政党と「解雇する際は〇〇月分の補償を、なお新規採用する際は組合員を最優先に」といった協定を結んでおけば、失業リスクもうんと抑えられるでしょう。

また、そういう政党横断的な労働組合が上手く機能することで、日本の硬直しきった企業別労組の存在意義にも一石を投じることとなるはずです。

※とはいえ、落選リスクの事実上存在しない大物政治家の事務所では徒弟制度みたいな労働環境だったり、“金庫番”と呼ばれる腹心の家老みたいな人もいます。これは「ゆくゆくは地盤を譲って出馬させる」等の長期の利害関係が例外的に成立することで終身雇用化しているためです。