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【KHL】中国のクンルンレッドスターは、NHLとKHLで優勝した名将を招いて創設2年目に挑む!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
世界でただ一人NHLとKHLでチームを王者に導いたマイク・キーナンヘッドコーチ(写真:ロイター/アフロ)

 昨夜(現地時間)サンクトペテルブルグで行われた試合を皮切りに、KHL(コンチネンタルホッケーリーグ)の10年目のシーズンが、幕を明けました。

 昨日配信した記事では、優勝争いの中心となる「ロシアの三強」について、GKを中心に紹介しました。

 続いて今日は、昨季から北京をホームタウンとして(一部の試合は上海でも開催)KHLに加盟した クンルン レッドスターを紹介します。

▼2年目を迎え大改革を断行

 レギュラーシーズンが進むにつれて、尻上がりに順位を上げていった昨季のクンルンは、ライバルチームの失速も幸いして、初年度からプレーオフへ進出。

 ファーストラウンドで「三強」の一つに数えられる メタルーグ マグニトゴルスクに敗れたものの、前評判の低さを覆す大健闘に、ロシアのメディアからも称賛の声が聞かれました。

 しかし、その声に満足することなく、オフに大改革を断行。

 まず新たなヘッドコーチ(HC)として、マイク・キーナン(67歳・下の写真左) と契約

 さらに加えて、アイスホッケー殿堂入りを果たしたほどの名選手で、引退後はタンパベイ ライトニングの創設などに寄与したフィル・エスポジト(75歳・下の写真右)を諮問委員に任命と、世界的に名を知られたビッグネームを入閣させました。

▼世界でただ一人の指揮官

 クンルンの舵取りを託されたカナダ出身のキーナンは、NHLではニューヨーク レンジャーズ(1994年)を、KHLでもマグニトゴルスク(2014年)を、それぞれチャンピオンに導いた実績の持ち主。

 NHLとKHLの両リーグで優勝したHCは、世界中を探してもキーナンだけ。

 なかでもマグニトゴルスクでの優勝は、KHLでは初めてとなる「ロシア出身者以外のHCが率いたチームの優勝」ともなりました。

 

 その他にも、カナダカップ(ワールドカップの前身)で祖国を世界一に導くなど、輝かしい実績を誇る名将とあって、2022年の「北京オリンピック」へ向けた強化策の一環としても、経験豊富なキーナンには大きな期待が集まっているようです。

▼ファームチーム、女子チーム、ジュニアチームも新設

 さらにクンルンは、中国各地にファームチーム、女子チーム、ジユニアチームも設立し、遅れていた女子選手や次世代の選手たちのレベルアップにも、注力していくとのこと。

 ここへ来て急速にギアを上げた強化によって、現在は男子「37位」(日本は23位)、女子「18位」(同9位)の世界ランキングが、どこまでアップするのか注目されます。

▼クンルンの課題は守護神

 中国代表の強化からクンルンへ視線を戻すと、今季の課題は、一にも二にも「守護神」となりそう。

 なぜなら、昨季は守護神が決まらず、二人のGKを併用せざるを得なかったからです。

 もっともNHLなどでも、GKを併用してレギュラーシーズンを戦うチームが見られます。しかし、プレーオフに入ってからは、成績や状態のいいGKを守護神に据えて戦うチームが、ほとんどです。

 ところが昨季のクンルンのGKは、いずれも決め手を欠いて、いわば「どんぐりの背比べ」。

 そのため、プレーオフに入ってからも、併用せざるを得ませんでした。

▼スウェーデン生まれの長身GKがキープレーヤー

 

 このような状況から脱却を図るクンルンのキープレーヤーとなりそうなのが、マグナス・ヘルバーグ(26歳)

 スウェーデンで生まれたヘルバーグは、ナッシュビル ブレデターズからドラフト2巡目(全体38番目)指名を受けましたが、NHLデビューを飾るより早く、2015年7月にニューヨーク レンジャーズへトレード。ようやく昨季の終盤に初勝利をマークしました。

 しかしレンジャーズには、同じスウェーデン出身でNHL最高年俸GKのヘンリク・ランドクウィストがいるため、出場機会を求めて、このオフにクンルンへ移籍しました。

 キーナンHCの期待も大きいようで、プレシーズンゲームではヘルバーグを多くの試合に出場させていたことから、196センチの長身を誇る守護神が、創設2年目に挑む「クンルンのキープレーヤー」となるはずです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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