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深刻なAV出演強要被害は、大手メーカー作品にも少なくない。業界の自主的改善の動きはあるのか?

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

<熊本地震において、被災されたみなさまに心よりお見舞いを申し上げます。>

■ 調査報告書に大きな反響

今年3月3日、ヒューマンライツ・ナウが公表したAV強要に関する調査報告書。

おかげさまで記者会見の様子とともに、大きくメディアに取り上げていただき、新聞、テレビのほか、ヤフーでも大きな扱いで報告書を紹介いただきました。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は3日、タレントやモデルとしてスカウトされた若い女性が、アダルトビデオ(AV)への出演を強要されている被害が国内で相次いでいるとする調査報告書を公表した。

ある女性は20歳の時、「グラビアモデル」の事務所と契約したつもりが、撮影直前にAVだったことが発覚。断ったが、「高額の違約金が発生する」などと脅されて出演を余儀なくされた。その後も違約金で脅されて出演を続けることを強要され、避妊具なしで複数の人との性行為や、12リットル以上の水を飲まされたこともあった。暴力的な撮影で性感染症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したという。別の女性はスカウトマンに説得されて出演したが、直後に悔やんだ。やめたかったが、半年にわたって複数のAVに出演させられた。販売が続いて耐えられず、首をつって自殺した(朝日新聞)

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東京都内で記者会見した伊藤和子事務局長は「意に反する性行為を強要され、その一部始終が半永久的に公にさらされる。女性に対する重大な人権侵害だ」と話した。

職業安定法などには有害な業務から労働者を守る規定がある。しかし、スカウトする業者は、女性がマネジメントを委託した形の契約にするなどして巧みに規制を逃れ、現状ではこうした被害を防ぐ法律や監督官庁は無いと報告書は指摘。不当、違法な勧誘の禁止や、意に反して出演させられた場合の販売差し止め、相談窓口設置などを含む法整備を訴えた。(毎日新聞(共同))

調査報告書本文はこちらから見ていただくことができます。

http://hrn.or.jp/news/6600/

予想した以上の反響だったのですが、この深刻な問題を社会に送り届けることができたこと、深刻な光の当たらない人権侵害に光を当てる活動ができたことを嬉しく思っています。

このなかで、12リットルの水を飲まされた等のひどい撮影をさせられた女性の話が驚きを呼びました。

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報告書公表後にご本人に会う機会があり、「そんなひどいことがあるなんて、と多くの人があなたのケースに衝撃を受けていましたよ」と伝えると、、、

あの頃はそういうものだと思いこまされていたので・・・

と言いながら目が涙でいっぱいになり、

本当に、取り上げて下さってありがとうございました。

と何度も言われました。

これまで、誰にもこの不条理、悔しさ、屈辱をわかちあうことができず、どんなに悔しかっただろう、と改めて思います。

自分だけで抱え込んできた屈辱や悔しさを社会に訴えたことが彼女にとって大きな意味があったのだと思うと、私自身心を打たれました。

報告書を受けて、池内さおり衆議院議員がさっそく国会で取り上げてくれ、各担当大臣もそれぞれAV強要は深刻な人権侵害だとの認識のもと、きちんとした対策を講じていくと答弁してくれました。

実際に、内閣府は関係者への調査を開始、私たちヒューマンライツ・ナウもヒアリングを受け、今後対策をひとつひとつ進めていくと約束してくれています。

まだ、取り組みは緒についたばかりですが、1か月のうちに、大きな変化をもたらすことができました。

報道をしたり、関心を寄せていただいた方々に心よりお礼申し上げます。

これからも法整備に向けて国会議員の方々にはさらに質問をしていただいたり、取り組んでいただけると嬉しいですし、省庁にも取り組みをお願いします。

私たちが求めている法改正は概略以下の通りです。

1. 監督官庁の設置

2. 不当・違法な勧誘の禁止

3. 違約金を定めることの禁止

4. 意に反して出演させることの禁止

5. 女性を指揮監督下において、メーカーでの撮影に派遣する行為は違法であること

を確認する。

6. 禁止事項に違反する場合の刑事罰。

7. 契約の解除をいつでも認めること

8. 意に反する出演にかかるビデオの販売差し止め

9. 悪質な事業者の企業名公表、指示、命令、業務停止などの措置

10. 相談および被害救済窓口の設置

また、警察・検察には違法行為を積極的に捜査・起訴し、悪質な被害から女性たちを救済するよう求めています。

現在、この問題を解決し、AV強要をなくすために、署名サイトChange.orgでの署名も進めていますので、ぜひご協力いただけると嬉しいです。

署名サイトはこちらからもアクセスできます。http://hrn.or.jp/news/6652/

そして、春先は進学や上京に伴い、被害が多い時期です。是非、報告書のような被害事例が再発しないように、周囲の若い人たちに注意喚起を呼び掛けてください。また学校でも教育していただけると嬉しいです。

■ AV業界からは組織的改善の動きがない。

こうしたなか、女優さん、監督さん、ライターさん、元女優の方など、個別に個人として反論されたり意見を公表されている方もいます。

他方、私たちのもとにはたくさんの内部通報のご連絡を業界内部の方からいただいています。

ところが、AV業界は組織的に沈黙を貫いている状況のようです。

業界全体として何か組織的に、報告書の事実関係について反論をされるとか、または再発防止のための対策を公表するなどの動きはありません。これは大変残念に思います。

その理由として、私たちの報告書が個別の被害事例について、どこのメーカーやプロダクションが関与したのか、名指しをしていないことがあるのかもしれません。だから他人事なのかもしれませんね。

確かに、私たちの記者会見や報告書では事例ごとにメーカーを特定することは避けました。それは、被害者の方の多くが、未だに強要されたAVが流通して苦しみ続け、周囲に知られることを極度に恐れているからです。ほんの少しの手がかりも公にしたくない、と彼女たちは考えています。

しかし、私たちが調査報告書に記載したAV強要事案のなかには、SOD、CAの2つの大手メーカーの作品が含まれていることは確かな事実です。

しかも、流通・販売ではAmazonやDMMがかかわっています。

ですので、業界のど真ん中の問題として、是非真摯な対応をいただきたいものです。

■ 批判や疑問にこたえる

ところで、報告書は予想以上の反響をいただいたのですが、中には批判や疑問の声もありましたので、この場を借りて少しご説明したいと思います(報告書を丁寧に読んでいただくとわかっていただけることが多いので、詳しくは報告書をご参照ください)。

● 現役AV女優さんが強制を否定。

報告書や報道を知った現役女優さんたちが、Twitterなどで「自分たちは好きで出ている」「無理やりだされられている人はみたことない」等と主張されているといいます。

私たちも好きで出ている方、強要されていない方がいることを否定するものでは全くありません。その方たちが自発的に出演していることは事実なのでしょう。しかし一方で、実際に被害にあわれている方がいるのも事実です。

私はAV強要の被害にあわれた方々におあいしてきましたし、自殺された方もいます。

報告書にも書いた通り、本当の意思とは違う経緯でAVに出演し、もうやめたいのに、ときどき死にたいと思いながらも、広告塔のような役割で発信を続けている女優さんがいるのも知っています。

人権団体としては、なかなか声をあげられない、そして最も苦しんでいる人の声に寄り添って活動していきたいと思います。

好きででている方もいる一方、どれくらいの割合かはわからないけれども、強要被害がある、そしてそれはとても深刻だ、対処すべき人権問題だ、

私たちの言いたいことはそのことです。

仮に一部であっても、放置されてよい問題ではないと考えています。

● 目的は業界つぶし、AVの全否定ではないか

報告書、特に勧告部分を読んでいただければわかると思いますが、業界をつぶしたいという考えはありません。

業界を全否定するなら、業界の廃止・禁止を勧告すればいいだけですが、そのような勧告はしていません。

監督官庁を設置することをはじめ、改善策を細かく指摘しています。

●  調査に偏りがあるのでは?

AV業界全体のことを調べていない、というご意見がありました。

私たち人権NGOは、「人権侵害」を調査するのが仕事です。

例えば、いじめ自殺があれば、その学校の子ども全般ではなく、いじめ自殺にフォーカスをして調査をするでしょう。

過酷労働という訴えがあれば、役員クラスやエリート社員ではなく工場の調査をします。

最も声を上げにくい、被害にあった人をハイライトして、声をあげられない被害者の声を社会に届けるのが人権NGOの仕事です。

この点を理解いただければと思います。

● 進んでAVに出る人はいないと思い込んでいるのでは? という疑問。

ダイアモンド・オンラインの記事で、ライターの中村氏は、

「トップAV女優と困窮する売春女性の違いがわからない人がいっぱいいます。ただ性を商品にしている人として、一括りに見てるんですね。話題のNPO法人ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子弁護士もそうですが、女性が自ら進んでカラダを商品化するはずがないと思い込んでいます。現実がまったく見えていません。」

と言っています。

これはどちらかというと私個人へのご批判のようですが、私はそんなことは一言も言っていないし、お会いしたこともない方からどうしてこういわれるか見当もつきません。

トップAV女優と困窮する売春女性が存在する、自発的に性を売ることを選択する女性も、困窮して性を売ることを選択する女性もいる、というのはそのとおりで、私も女性に関わるありとあらゆる案件を扱ってきましたし、女性の貧困問題についても取り組んできましたので、よくわかっています。

● 業界は健全化しており、大手では強要はありえない、という疑問。

こちらは元AV女優の川奈まり子さんなどから問題提起されています(ちなみに、川奈さんとは、たいへん和やかにSNS上で会話をさせていただく機会があり、今後も有意義かつ建設的ななお話ができるとよいと期待しています。)

Jcastの記事によれば、川奈さんは、 

通常の撮影現場では、行為上の「NG事項」が女優に確認される場面も、監督やプロデューサーから撮影内容の事前説明を受ける場面もあると説明した。

「優良なプロダクション」や「ソフト・オン・デマンド」(SOD)、「CA」(DMMグループ)といった大手AVメーカーに調査をしていない証拠だ、と分析し、HRNの目的をずばり「AV(業界)潰し」だと主張した。

とされています。

しかし、さきほど書いたとおり、被害事例には、SOD、CAのものも含まれています。

確かに、川奈さんの指摘される通り、出演契約書を締結する、NG事項が女優に確認するなどの手続きを用意している大手メーカーもあります。しかし、現実にはこうした手続きは形骸化し、意に反する出演をとめさせるセーフガードにはなっていません。

既に「違約金を払えないなら出演するしかない」とプロダクションから言われてとても逆らえない状況に追い込まれた若い女性たちが、プロダクションのマネージャー同伴で契約締結をしたり、面接をしたり、NG事項を確認されたとしても、「本当は出演したくない」と言えない、抵抗できない、という状況にあるのが、私たちが接してきた被害事例の現実でした。

確かに、自ら進んでこうした交渉ができる女性もいるかもしれませんが、抵抗できない女性、気の弱い女性たちが被害にあいやすいのです。

報告書でも紹介した、違約金2400万円以上を請求され、訴訟まで起こされた女性はその手記でこう話しています。

撮影のときは、子宮(膣のこと)や性器の痛みを訴えても、メーカーやプロダクションはもちろん監督や女性のメイクさんからも、みんなで白い目でみられ、「君はやるしかないよ」と言われました。大人の男性を相手に敵に回すのはとても怖かったです。

単にペーパーだけサインさせれば強要などということはありえない、ということになれば、刑事事件の自白の強要なこともあり得ないということになるでしょう。

私たちの調査報告書には以下のように説明しています(23~24ページ)。

プロダクションとメーカーの契約締結には、被害女性が関与しないことが多いが、女性はいずれかの段階でメーカーに対し、出演契約・著作権放棄の同意等の書類に署名捺印させられることになる。

メーカーの中には、本人が自由意思に基づき、AV に出演するのかどうかを確認するために本人にインタビューを行い、その内容を録画するなどして証拠保全する事例も見られる。

しかし、被害者は、プロダクションから出演を命じられて、拒絶できないままメーカーとの面談を強要されており、かつマネージャー等も同行しているため、本心を任意で言える状況は担保されていない。そのため、メーカーによるチェックがセーフガードとなってい

ない実態がある。

●バッキー事件は過去のこと、今や業界は健全化されている。監視機構もある。

このようなご意見もいただきましたが、さて、どうでしょうか。

実はこの間、様々な方から、問題のあるAV画像について情報提供いただきました(ありがとうございます)。

このような場で紹介するのは避けたいと思いますが、改めてひどい映像をたくさん見る機会となりました。

例えば、AVという言葉とともに、拷問、獣姦、スカトロ、集団強姦、少女強姦、浣腸などの言葉を入れて検索をかければ、あまりにも女性の尊厳を無視した虐待的な内容のAVのパッケージが数多く紹介されています。DMMやSODという言葉とともに検索をかけても、そうしたジャンルのいくつか、ないしほとんどの分野のAVを確認することができます。

本当にすべてが自由意志なのだろうか、仮に自分の意思だとしてもこうしたことが放置されたままでよいのだろうか、「少女」というものの中に児童ポルノが含まれていないのか、など甚だ疑問に思います。

大手メーカーをはじめ、AV業界が全面的にクリーンで何ら問題がない、とは到底思えない映像内容ではないだろうか、と思わずにはいられません。

また、監視機構として、「映像倫理機構」があるとのことですが、報告書に記載した強要事例のいずれについても、この監視機構から販売ストップがかかるということはありませんでした。そもそも、この機構は自主的な機関であり、被害の苦情処理や強要被害の救済機関でもなく、現場で強要があった事例に対処するメカニズムもありません。さらに、監視機構があるのに実際には上記に書いたようなひどいAVが世に出まわっています。それはなぜでしょうか。

● 職業安定法と労働者派遣法上の「有害業務」について

川奈まり子さんは弁護士ドットコムニュースに答えられ、当団体の報告書について

いちばん大きな問題点は、すべてのAV出演について、職業安定法と労働者派遣法上の「有害危険業務」であるかのような印象操作がされていることです。たしかに、AV出演が問題になった事件があり、裁判所がその当事者の個別ケースについて、職業安定法・労働者派遣法上の「有害危険業務」にあたると判断したケースはあります。でも、すべてのAV出演が「有害危険業務」というわけではありません。

と指摘されています。

私たちの報告書には、AVへの勧誘を職安法違反、AV制作会社やメーカーに労働者である女優を派遣したプロダクションの行為を派遣法違反(いずれも有害業務)とした判例を多数紹介しています。これは私たちの解釈というより、裁判所で出された判例であり、蓄積された判例を見る限り、基本的にAVへの勧誘、派遣は有害業務とするのが既に確立した解釈とみられます。解説書も確認しましたが、有害なものとそうでないものに分類したり、判断基準を示した判例はありません。

例えば、判例集に搭載された代表的判例である、平成6年3月7日東京地裁判決(判例時報1530号、144頁)は、

派遣労働者である女優は、アダルトビデオ映画の出演女優として、あてがわれた男優を相手に、被写体として性交あるいは口淫等の性戯の場面を演じ、その場面が撮影されるのを業務内容とするものある。右業務が、「公衆道徳上有害な業務」にあたることに疑いの余地はない。

としています。この判断を否定する、AVの勧誘・派遣に関する無罪事例も確認できませんでした。

ですので、印象操作ということには該当しないと思います。

ただ、職安法・派遣法が適用されるのは、あくまでAV女優が労働者という立場の場合です(そして、ここで罪に問われているのは、勧誘行為、派遣行為という業者であり、出演した女優さんの行為は違法とされていません)。

真に独立した自営業者・アーティストであれば、この2つの法律は適用されないことになるでしょう。

AV女優さんたちが、言われるがまま出演をプロダクションから命令されて従うしかない、諾否の自由もなく、撮影現場に派遣される、台本も事前にきちんと渡されず、言われるがまま撮影に応じる、そのような労働者性が実態として認められる場合は、やはり職安法・派遣法上の法規制が問題となってくるでしょう。

私たちの提言書でも、諾否の自由もなく、撮影現場に派遣される、言われるがまま撮影に応じるほかない、という慣行そのものを改めるように求めていますが、プロダクションやメーカーと対等な立場で交渉し、真に独立したアーティストとして尊重されるような実態があれば、「労働者」のカテゴリーにあてはまらないことになるでしょう。そうなれば派遣法等の適用はないはずです。

さらにいえば、「労働者」に該当する事例でも、勧誘行為をせずに、希望者だけを面接して採用すれば職安法には抵触しないことになるでしょう。また、制作会社等が直雇にすれば、派遣法の適用もありません。

● なぜAV業界だけ法規制をするのか、という疑問

これは逆であり、監督官庁があり、関連する法律(例えば、消費者関連法だったり、食品衛生法だったり、風適法だったり)があるほかの業界と異なり、AV業界には監督官庁もなく、関連法規もなく、雇用主や派遣業としての届け出もないため、労働関係の規制も受けていないというのが実情なのです。

私たちが調査した被害事例をみて最も問題と感じたのは、職安法、派遣法の適用を回避するため、女優と雇用契約を締結しない、派遣法上の届け出もしない、形式的には女優さんを労働者でなく独立自営業者のような扱いとしつつ、多くの場合は指揮命令下に置き、諾否の自由もなく現場に派遣している点にあります。そのため、自分の頭越しにAV出演契約をプロダクションとメーカーの間で取り交わされ、いやだといえば違約金を支払えと言われ、出演を強要される構造が確認されたのです。

消費者並みの保護も、労働者並みの保護もない、しかし独立したアーティストとしての権利もない、という現在の法的な地位は搾取や強要などの被害につながりやすい、これを改善することが必要だと思います。

■ 業界の自主的な動きに注目したい。

私たちとしては、政府の対応を求めるとともに、業界の自主努力の行方も注目していきたいと思います。

私たちが問題にしているのは強制・強要であり、自発的な演技や業界そのものを否定するつもりはありません。

しかし、出演が強制・強要されたものだとすれば、AV強要の被害は、普通の消費者被害よりも、レイプよりも、リベンジポルノよりも、取り返しのつかないあまりにもひどい女性に対する暴力、重大な人権侵害です。

その数の多寡にかかわりなく、あってはならないはずです。

通常の製造業が海外で児童労働を使っていた、強制労働をさせていた、ということが1件でも発覚したら、すぐに改善に乗り出すでしょう。それと同じです。

比較するのは適切でないかもしれませんが、ヒューマンライツ・ナウが2015年1月にユニクロの中国下請け工場の過酷労働に関する調査報告書公表した際は、ユニクロの親会社であるファーストリテイリング社は1週間もたたないうちに事実関係をおおむね認めて対策を公表しました。そのうえでファーストリテイリング社の呼びかけによりヒューマンライツ・ナウおよびパートナー団体とのダイアログが行われました(その後の経緯についてはこちらのヤフー個人でもしばしばご報告していますね)。

AVに携わる企業が社会的責任を果たすクリーンな業界だと主張されるのであれば、出演強要という事態を生まないための防止策を是非検討してほしいと思います。

そして出演当事者に対し、せめて消費者並み、労働者並み、または独立性の高いアーティストとしての保護と権利を保障するべきだと思います。

AV女優さん、元女優さんからも当団体の提言に部分的に賛意を示してくださる方もいて、さらに、撮影で怪我したり病気をした場合も自分持ちというシステムや、映像の二次使用、三次使用が無限に可能でいつまでも映像が流通して削除も困難という問題、なども改革が必要などの提起もされています。

また、当団体には、ほかにもご意見、情報を(おそらくは業界に秘密で)寄せてくださる業界関係者の方もいます。

既に1か月以上たちましたので、業界がいつ、いかなる対策を自発的なかたちで打ち出されるのか、注目していきたいと思います。(了)

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

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