AYA世代(20~39歳)の女性に子宮頚がん、乳がんが急増中。犬や猫は大丈夫?

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

人の20~39歳のがん患者の8割が女性で、そのがんの種類は、乳がんや子宮頚がん、というニュースが飛び込んできました。以下です。

20~39歳がん患者、8割女性 子宮、乳がん増加が原因

 

 国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは18日、対策の遅れが指摘される小児や15~39歳の思春期・若年(AYA)世代のがん患者のデータを集計したところ、20~39歳の患者の約8割を女性が占めていたとする調査結果を発表した。乳がんや子宮頸がんの増加が原因と考えられる。

出典:2019.10.18 共同通信

私は、毎日、犬や猫のがん治療をしています。「社団法人 がんと炎症、代謝研究会」という人の医師の集まりに入って、勉強をしています(人のがんは、犬や猫と共通のところがあるからです)。その研究会で和田洋巳先生が「AYA世代のがんが増えていること」を話されていました。情報としては知っていましたが、一般紙のニュースになっているので、今回は、獣医師が考える「人の乳がんや子宮頚がんと犬や猫の違い」。

AYA世代とは

聞き慣れない言葉ですが、

・adolescents and young adults(思春期と若年成人)の略

・15歳から30歳、または40歳前後までの人たち。

若い世代なので、昔なら、がんとはあまり縁のない年代でした。

いろいろながんがありますが、今回は、乳がんと子宮頚がんについて、人と犬や猫を比較してみます。

乳がん

人において、若年層の乳がんの原因は、初経年齢が早い、飲酒の習慣があるなどでしょう。人の専門家ではないので、このあたりは割愛します。

犬や猫の乳がんの原因

・発情の時期が早まっている。(いまは、早い犬や猫では、生後4カ月から発情がきます。以前は1歳前後だったのですが。この辺りのことは、以下に述べています)

・長寿になった。(犬や猫の平均で13年以上は生きる)

これらのことを踏まえて獣医界では以下のように対策をしています。

犬や猫が乳がんにならないための対策

・発情が来る前に避妊手術をする。

 犬は、発情が来る前に避妊手術をすれば、乳腺腫瘍になる確率は、0.5%、2回目以降は、26%になります。発情が来て、手術すると乳腺腫瘍の予防効果が低くなります。その理由は、発情が来ると乳腺が発達するからです。発情が来ないうちにすれば、乳腺が発達しない(写真を参照してください)ので、乳腺がほとんどなく、がんになりにくいのです。

(避妊していない子としている子の乳腺の違いの写真)

上が避妊手術をしていない子、下がしている子です。乳腺の様子がよくわかりますね。

撮影筆者 避妊手術をしていない犬の乳腺
撮影筆者 避妊手術をしていない犬の乳腺
筆者撮影 17歳の愛犬・ラッキーの乳腺。発情が来る前に避妊手術をしたので、乳腺がわかりにくい。
筆者撮影 17歳の愛犬・ラッキーの乳腺。発情が来る前に避妊手術をしたので、乳腺がわかりにくい。

生後数カ月の子は、子猫、子犬の時期なので、そんな可愛い子にメスを入れるのをためらう飼い主の気持ちは、よくわかります。でも女の子の場合は、時期が問題なので、早めに決断してもらわないと、病気のリスクは増えます。

初めての発情の時期

犬:生後6カ月前後と以前は、いわれていましたが、最近は早い子も多いので、2キロになれば、獣医師と相談して避妊手術をします。

猫:以前は生後1年ぐらいといわれていましたが、最近では生後4カ月の子もいます。

発情の症状

犬:膣が柔らかくなり、血液成分のある分泌液が出るのでわかりやすいです。(人の生理に似ている)

猫:犬のように、膣から血液成分が出たりしません。鳴き声が変わったり、体をクネクネしたり、頻 りにスキンシップを要求したりする。(オス猫には、わかるので、こういうときは、たくさんのオス猫が集まってくる)

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍には、良性と悪性(がん)があります。

犬:良性50%悪性が50%

猫:ほとんど悪性(がん)

予防・検診

・発情が来る前に避妊手術した場合は、ほとんど乳がんにならない。

・発情が来てから避妊手術した、あるいは避妊手術をしていない犬や猫は、年に1回か半年に1回、かかりつけ医に検診をしてもらいましょう。

次は、AYA世代に多いとされている子宮頚がんについて。

子宮頚が

人の場合は、HPV(ヒトパピローマウィルス)というウィルスが関与していることが多い。子宮頸がんはほぼ、HPV感染→前癌病変→癌化という過程を経るようです。詳細は産婦人科に譲ることにします。人の場合は、性交渉のある場合は、子宮頚がんになるリスクがあるわけです。

注意:犬や猫にもパピローマウィルスがありますが、ほぼ良性の腫瘍で、子宮頚がんにならず、皮膚にイボのようなものができます。

犬の可移植性性器肉腫(canine transmissible venereal tumor;CTVT)

犬の中で子宮頚がんに似たような病気で探しました。平成になってから、この病気は見ませんが、昭和の時代は、この可移植性性器肉腫という病気が日本にはありました。

症状

・犬の膣や陰茎がカリフラワー状に腫れる。

・陰部や陰茎から出血や膿が出る。

・ひどい場合は、尿が出にくい。

原因

・交配をすることで感染する。(人のように、ウィルス感染ではない、細胞同士の接触)

・熱帯地方の野生化した犬科の動物にある。(キツネ、コヨーテなど)

幸運には、日本はいま外で犬を飼う習慣が減り、野良犬が少なくなったので、ほぼ撲滅状態です。

犬や猫に、婦人科系のがんが少なくなった理由

・飼い主の意識が高くなり、早期に避妊手術をするようになった。(望まない子犬や子猫を作らないために、避妊手術をすると同時に、病気の予防でする人が増えました)

・人間の性交渉は、コミュニケーションの手段としての面もあるけれど、犬や猫は、出産するためにしかしない。反対に、子どもができるときにしか交配ができない。

まとめ

私たち獣医師は、過去のデータや経験から犬や猫が病気をしないように、予防を推進しています。発情が来る前に、避妊手術をすることで、乳がんのリスクを減らすことに成功しているわけです。獣医師の愛犬であるラッキーは、生後5カ月のときに、避妊手術をしてもちろん乳がんや子宮の病気になることもなく17歳を過ぎても元気にしています。(私が手術をしたのですが、幼い時期にメスを入れるのは、心が痛んだことは事実です)データを深読みして、未来の治療に役立てることは大切です。人の方もなぜ、AYA世代にがんが多いかをしっかり分析して、健康な人が増えることを切に望んでいます。