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1年で最も乾燥する4月は「山火事」に要注意

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者

 全国で山火事(山林火災)が相次いでいる。意外だが、4月は1年で最も乾燥する月で、山火事の月間発生件数も同様に最も多い。山火事の原因は、たき火(火入れを含む)、放火(疑いを含む)、タバコが主だ。

原因のほとんどは人為的なもの

 4月に入ってから山火事の発生が続いている。報道によれば、1日には発煙筒の火が燃え移って高速道路の東北道が一部で通行止めになり、2日には山梨県富士川町の山林で山火事が発生している。どちらも幸い大きな被害は出ていないが、4月は1年で最も山火事の発生する月でもある。

 山火事といえば、21世紀に入ってから米国やオーストラリアなどで大きな被害が出ているが、農業用や生活用の水が増えて山林が乾燥したことが主な原因だ。また、気候変動の影響も山火事が増えたことに関係していると考えられている。

 日本における山火事の原因では、たき火(火入れを含む)、放火(疑いを含む)、タバコの順に多い。また、火入れとは、造林や開墾、害虫駆除、焼き畑などのための焼却行為のことで、事前に自治体への申請と許可が必要となる。

 この中で、たき火(火入れを含む)が約半分で最も多く、次に放火(疑いを含む)、タバコとなり、落雷による山火事はほとんどなく、人為的な原因が多い。

 2023年11月1日に愛媛県大洲市で発生した山火事は、約1週間燃え続け、山林約20ヘクタールを焼いた。出火原因は、タバコの火の不始末の疑いがあるという。

乾燥する4月は要注意

林野庁によると、山火事(林野火災)は1年間に1300件ほど発生し、約700ヘクタールが焼失、損害額は約3億5000万円という。ただ、1990年代以降、山火事の発生は減少傾向という。

 2002年以降で住民避難勧告等が発令された大規模な山火事の発生月は、2月から4月が多い(林野庁)。実際、乾燥注意報と山火事の発生件数をみると、どちらも1年のうちで4月が最も多い。

各月ごとの乾燥注意報(気象庁防災情報、2012年12月以降)と山火事(消防庁統計、2017年から2021年)の累計件数。グラフ作成筆者
各月ごとの乾燥注意報(気象庁防災情報、2012年12月以降)と山火事(消防庁統計、2017年から2021年)の累計件数。グラフ作成筆者

 海外の例でみるとおり、山火事は大きな被害に拡大する危険性がある。4月は最も乾燥する月だ。

 火が燃え移りやすい枯れ草などの多い場所で、たき火や火入れ(申請と許可が必要)をしないこと、もしした場合、その後はしっかり完全に消火を確認すること、山林でタバコを吸う場合、ポイ捨てはせず、吸い殻は持ち帰ることなどの心構えが大切となる。

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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