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大関・霧島が大相撲九州場所制し2度目V、年間最多勝で来年は綱取りへ 新鋭・熱海富士も最後まで奮闘

飯塚さきスポーツライター
自身2度目の優勝を果たし、賜杯を手にする霧島(写真:日刊スポーツ/アフロ)

大関として、そして師匠から継承した四股名「霧島」として、初の賜杯を抱いた。千秋楽までもつれる展開となった大相撲九州場所は、最高位である大関・霧島が制し、幕を閉じた。

熱海富士が琴ノ若に惜敗も存在感見せつけた場所に

単独先頭の霧島を3敗で追いかけていたのは、先場所から2場所連続優勝争いに絡む活躍を見せた熱海富士。勝って優勝の可能性を残して花道を引き上げたかったが、関脇・琴ノ若の冷静さに倒れた。立ち合いで頭から当たるも、頭を下げすぎた熱海富士をよく見て琴ノ若が右に動き、足がついていかずにあっけなく前に落ちてしまった。

取組後のインタビューでも悔しそうな表情を見せた熱海富士。そこにいつもの愛らしい笑顔はない。テレビ解説を務めた師匠の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)は、「悔しければ稽古するんじゃないですか。そういう意味で、悔しい思いをするのは大事」と、今場所をけん引した若き愛弟子を鼓舞した。

最後に負けてしまったのは残念であったが、先場所から一気に力をつけたことを証明した21歳の熱海富士。来年のさらなる飛躍に大いに期待がかかる。

一方、熱海富士を下した琴ノ若は、堂々の11勝で5度目の敢闘賞を受賞した。これでなんと8場所連続の勝ち越し。来年はさらに上の番付も見えてくる。さらに力をつけて、先代の師匠であり祖父である「琴櫻」の復活を実現できるか。

優勝決定後も白星で花を添えた霧島

熱海富士に土がついたことで、この瞬間霧島の2度目の優勝が決定した。しかし、高揚する気持ちを落ち着かせて、大関・貴景勝との一戦を冷静に取って制した。

鹿児島県霧島市出身の師匠・陸奥親方は、実は来春で定年退職を迎えるため、今回が最後の地元・九州場所であった。「親方が最後の九州場所だから頑張れといろんな人から声をかけてもらった」と、優勝インタビューで語った霧島。

「(14日目の熱海富士戦は)自分のできることをやっていこうと思って臨んだ。絶対負けないという気持ちで、自信をもっていきました」

3月場所で初優勝。新大関昇進後はケガもあり、いきなりカド番。苦労もあったが、それを乗り越えられたのは「稽古のおかげ」と力強く語った。

今回、優勝と同時に年間最多勝も受賞。どんなに番付を上げてもひたむきに稽古する、素直で真面目な性格の大関は、この勢いで来年さらにひとつ上、最後の番付に挑戦する。師匠の番付を超え、「霧島」の名をさらに上げることができるか。来年の大相撲の大きな期待のひとつになることだろう。

2023年最後の場所を終えて

平幕優勝が相次いだ2022年とは打って変わり、今年の大相撲は横綱・大関ら番付上位の力士が場所を締める1年となった。今場所中のインタビューで鶴竜親方が総括してくださったように、番付の重みを再確認するよい1年だったのではないかと筆者も感じる。綱を目指す貴景勝、霧島ら上位陣の奮闘に加え、今場所の熱海富士のような若い力の台頭も著しく、来年はさらに面白い大相撲が見られる気がして心がせく。場所が終わった直後で気が早いのは重々承知の上だが、はやる高揚感を味わいつつ、これを今年の総括としたい。

今年も筆者の場所中コラムをお読みいただきありがとうございました。来月はまた多くの力士のインタビューをお届けできたらと考えているのでお楽しみに。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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