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引退の元幕内・照強が6月に両国国技館で断髪式 19歳から闘病し関取に 伊勢ヶ濱部屋への感謝を語る

飯塚さきスポーツライター
6月23日に両国国技館で断髪式を行う元幕内・照強(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

小柄な体を駆使した足取りや、館内を沸かせる豪快な塩まきなどで知られた、伊勢ヶ濱部屋の元幕内・照強。阪神淡路大震災のまさにその日に淡路島で生まれ、中学卒業と共に伊勢ヶ濱部屋の門をたたいた。19歳からは糖尿病との戦いが始まったが、21歳で関取に昇進。幕内での活躍ののち、今年の3月に病気の悪化を理由に現役引退を表明した。6月23日(日)に両国国技館で断髪式を控える照強に、現在の様子や今後の展望について話を聞いた。

断髪後の髪型は「インスタライブで披露」

――現在、断髪式に向けてどんな準備をしていますか。

「いわゆる興行の“引退相撲”ではなく、断髪式のみの予定です。いまは案内状やポスターを作ったりしていて、まだ呼ぶ人も決まっていませんが、ここからは席決めをしたりしていく段階。いままで何人も弟子の引退相撲をやってきた親方や、SNSに強いおかみさんのお兄さんも手伝ってくれているので、本当にありがたい限りです。自分一人だったら厳しかったなと思います」

――部屋には少し前に断髪式を行った楯山親方(元幕内・誉富士)もいますね。どんなアドバイスをもらっているんですか。

「カメラマンさんを紹介してくれたり、席はいくつ作れるとか、そんな細かいことまで聞いています。みんなある程度経験してきているし、そのたびにおかみさんのお兄さんが活躍されていて、めちゃくちゃ助かっています」

――式の内容は。

「相撲甚句や弓取。あと、歌手の方に歌ってもらいます。自分は相撲や土俵入りはせず、断髪・整髪のみ。300人くらいにハサミを入れてもらう予定です。記念品にはコップを作ろうと思っていますが、デザインは当日のお楽しみで」

――髪型は決めていますか。

「決まっているんですけど、それを断髪式直後にはできないので、式の日は軽く整える程度。翌日に仕上げに行くと思います。二段階構えでいくので、インスタライブで完成形を披露しますね(笑)」

総評すると「順調な相撲人生」「悔いはない」

――長い間、糖尿病との戦いと共に土俵に上がり続けていました。あらためて、引退を決断した経緯と心境は。

「自分の痩せた体を鏡で見た瞬間に、これはもう無理だなと思ったんですよね。医者にも痩せないとよくならないとは言われていて、それはつまり相撲を続けている限りはよくならないということ。30歳を迎える1年前で、ちょうどいい潮時かなと思いました。6年半関取でいて、ある程度一時代には入れたかなと満足しているので、悔いは全然ないんです。辞めて、いまは自由でホッとしています」

「悔いはない」と言い切る照強。病気と闘いながら土俵に上がり続けた
「悔いはない」と言い切る照強。病気と闘いながら土俵に上がり続けた写真:長田洋平/アフロスポーツ

――病気との戦いは過酷だったと思いますが。

「19歳から付き合っているので、大変ではあるんですが慣れています。引退直前には少し悪化しただけであって、これからは無理してたくさん食べなくていいし、痩せても問題ないので、うまく付き合っていければと思っています。暴飲暴食しないでコントロールしているので、だいぶよくはなりましたよ」

――それは本当によかったです。ご自身の土俵人生を総評するといかがですか。

「中学を卒業して15歳で入門して、17歳で幕下、21歳で新十両、23歳で新入幕と考えたら、本当に順調な相撲人生を歩みましたよね(笑)。親方、おかみさんをはじめ、入った部屋が本当によかったなと思っています。厳しい稽古をするので、この部屋じゃなかったら関取になれていませんでした。最終的に入る部屋を決めたのは自分なので、本当にこの部屋に入ってよかったなと思っています。またこれからも、お世話になっている親方はもちろん、部屋で頑張っている力士たちのところに顔を出したり、差し入れなどできたらいいなと思いますね」

――今後はどんな活動をされていかれますか。

「淡路島に母の会社があるので、当面はその経営を頑張っていきます。玉ねぎの加工会社と、ごみ処理の会社、通販サイト、地域情報サイトの4つです。自分の玉ねぎのブランドを商標登録するなど、いまからできることを少しずつ、手広くやっていけたらと思うので、今後は東京と淡路島を行き来する生活になりそうです」

自身の会社で作ったという画像。照強らしさが表れている(写真:本人提供)
自身の会社で作ったという画像。照強らしさが表れている(写真:本人提供)

照強断髪式詳細

日時:6月23日(日)10時受付開始 11時断髪式開始

場所:両国国技館

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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