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米下院UFO公聴会詳報・中編「命の危険を感じた出来事も。人ではないパイロットも回収」元空軍将校が証言

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
スター証人とも言われているデビッド・グルーシュ氏の発言は注目された。(写真:ロイター/アフロ)

 全米が注目した米下院UFO公聴会。

 ライアン・グレーブス氏に続いて証言したのは、アメリカ国家地理空間情報局(NGA)の元空軍情報将校で、2019年から2021年にかけて米国防総省のUAPタスク・フォースのメンバーとしてUAPの分析を行っていたデビッド・グルーシュ氏だ。

 グルーシュ氏はすでに「ニュース・ネイション」のインタビューで、米政府が回収したUAP(未確認異常現象の略で、UFOも含む)の残骸から、生物学的物質を回収していることを証言していたことから、3人の証人の中でも“スター証人”視されており、公聴会で同氏が何を話すか注目されていた。同氏には議員たちからもセンシティブな質問が多数投げかけられた。

残忍で不適切な報復に直面

 グルーシュ氏はまず「証言は長いキャリアがある信頼性ある人々から提供された情報に基づいている」と述べ、「彼らの多くが写真や公文書、機密の口頭証言などの“説得力のある証拠”をシェアしてくれた」と証言が信頼性のあるものであることを強調した。UFOの存在については、陰謀論と切り捨てる懐疑論者が少なからずいるからだろう。

 グルーシュ氏は「何十年にもわたって、UAPの残骸が回収されており、リバース・エンジニアリング・プログラム(物体を分解または解析し、その仕組みや構成、技術や設計などを明らかにするプログラム)があることを知らされた。プログラムに関するさらなる情報にアクセスしようとしたが、拒否された。私はそのことを監察官や情報機関に報告することにした。内部告発者となったが、そのため報復に直面した。仕事の上でも、個人的にも傷つけられた」と証言。

 質疑応答の中で、その報復について質問された同氏は「彼らが私を傷つけるために使ったタクティクスは残忍で不適切なものだった」と答え、「政府がUFO情報を隠蔽する取り組みの中ではアグレッシブなことが行われたようだが、それは敵対的なものだったのか?」との質問に対し「私は、複数の同僚がUAPに対処することにより、また、政府内部の人間により肉体的に傷つけられたことを知っている」と回答。さらに、「彼らはエイリアンや人間ではないテクノロジーによって傷つけられたのか?」と質問された同氏は「公開審議の場では詳細を話せないが、私と妻が個人的に目撃した行動は少なくとも不快なものだった」と答えるに留まった。

命の危険を感じた出来事も

 「UAPのリバース・エンジニアリングに取り組み、負傷した人を知っているか?」との問いに対しては、同氏は「知っている」と答えたものの、なぜ負傷したかについては「詳細は話せない」と口をつぐんだ。

 「この数年の間に、この問題に対処するにあたり、命の危険を感じた出来事があったか?」との質問に対しては「はい、個人的にはあった」と肯定。

 また同氏は「誰かが殺害されたという話を聞いたことがあるか?」という質問までされたが、「私はそのような情報を持つ人々を適切な当局に行くよう指示した」と答えた。

政府はUAPや人ではないパイロットの遺体も回収

 グラーシュ氏はまた「4年間で40人以上の人々にインタビューしたことをベースにすると、政府は絶対にUAPを所持している。私はどこにそれがあるかも知っている」と明言。

 「UAPからは人間ではないパイロットが回収されたのか?」との質問に対しては「プログラムのことを知っている人が、UAPの残骸から、人間ではない生物学的物質が回収されたと話していた」と述べた。もっとも、同氏自身は回収された生物学的物質を目撃していないという。

 さらに、「政府高官は知的地球外生命体とコンタクトしたのか?」との質問に対しては「公の場では話せない」と答えた。

 グルーシュ氏は「公開審議の場では話せないが、非公開審議の場では話せる」と何度も口にしたことから、議員たちは、非公開審議の場で同氏から詳細を聞くことになるのかもしれない。

 また、グルーシュ氏は議員に対し「協力的な証人と敵対的な証人のリストを提供する。リバース・エンジニアリング・プログラムのことを知る個人は非公開審議の場で、また、罰せられないのなら証言するかもしれない」と話していた。その意味では、今後開かれる公聴会にどのような証人が召喚されて証言するのか注目されるところだ。

ペンタゴンは真っ向から否定

 一方、米国防総省は「ペンタゴンは、UFOに関する情報を提供した結果、傷つけられたり、殺害されたりした人がいるという情報は全然持っていない。また、過去に、地球外物質の所持やリバース・エンジニアリングに関するプログラムが存在した、あるいは今も存在しているという主張を裏付ける検証可能な情報を見つけていない」との声明を出し、グルーシュ氏の主張を真っ向から否定している。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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