Yahoo!ニュース

アメリカやイギリスなど西側の特殊部隊がウクライナで活動か 米軍事機密文書が次々露呈するヤバいこと

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
機密文書によると、50人のイギリスの特殊部隊がウクライナで活動か。(写真:ロイター/アフロ)

 この10年では最大の漏洩と指摘されている、ペンタゴンの軍事機密文書の大量流出は同盟国や友好国にも波紋を広げている。

 機密文書は、アメリカが韓国や中東の主要同盟国などに対してスパイ活動を行っていることを示唆しているからだ。もっとも、同盟国側は一様に、機密文書が露呈しているヤバい内容を否定している。列記してみると以下のようになる。

韓国

 文書には、韓国大統領府の高官が、バイデン大統領が韓国の大統領に直接電話をして兵器をウクライナに供与するよう圧力をかけることを懸念していることが示唆されているという。韓国は殺傷能力の高い兵器を戦争中の国に送ることを違法としていることから、高官はアメリカから圧力をかけられることを懸念していたと推察される。

 これに対し、韓国の大統領は、アメリカが韓国政府に対して諜報活動を行っているという主張について「文書の多くは偽造されている」と言って否定。大統領室からは「盗聴しているという疑惑は間違っている」との声明も出されている。

イスラエル

 文書は、イスラエルの情報機関モサドがネタニヤフ政権の司法制度改革案に反対する抗議デモを支援したとしている。モサドはスタッフや市民に抗議するよう促したという。ネタニヤフ首相は、抗議デモの激化から、3月27日、司法制度改革の立法化を延期すると表明している。

 また、CNNとNew York Timesは「イスラエル:ウクライナに殺傷能力のある兵器を供与する方法」というタイトルの文書には、「イスラエル政府は、アメリカに圧力をかけられたり、争いになったりした場合、ウクライナに殺傷能力がある兵器を供与することを考慮するだろう」とあると報じている。

 これに対し、ネタニヤフ首相は「イスラエル政府はウクライナに殺傷能力がある兵器を供与する決定をしていない、人道的支援の供与に限定している」と述べて、文書の内容を否定している。

エジプト

 文書は、エジプトのシシ大統領が、最大4万個のロケット弾を製造し、ロシアに輸送する計画をしていると示唆。シシ大統領は西側諸国との間で問題が起きることを回避するために、この計画を秘密裏に行うよう部下に話したという。

 エジプトの政府高官はこれを否定しているが、アメリカの議員からは「文書が本物なら、アメリカとエジプトの関係は再考する必要がある」と懸念する声もあがっている。

アラブ首長国連邦(UAE)

 ”ロシア/UAE:深まる情報関係”というタイトルの文書には、「新たに得た情報によると、1月半ば、FSB(ロシア連邦保安庁。KGBの流れをくむ諜報機関)の高官は、UAEの安全保障機関の高官とロシアは協力してアメリカとイギリスに対峙することに合意したと主張した」とあるという。UAEの高官はこの内容について「断固として間違っている」と否定。

 ちなみに、UAEはアメリカの戦略的パートナーだが、ロシアとも密接な繋がりがある。

西側の特殊部隊がウクライナで活動

 また、3月23日付けの文書には、西側の特殊部隊がウクライナで活動していることが報告されている。特殊部隊はイギリスが50人、ラトビアが17人、フランスが15人、アメリカが14人、オランダが1人だ。もっとも、特殊部隊がどこでどんな活動をしているかは文書は明らかにしていない。しかし、これにより、1年以上前から推測されていた、西側諸国のウクライナにおける関与が確認されたようだ。

 もっとも、最多数の特殊部隊を送り込んでいると機密文書が報告しているイギリスの国防省は、ツイッターで、「広く報じられている機密文書は深刻なレベルの不正確さを示している。(報道を)読んだ人々は誤情報を広める可能性がある疑惑を額面通りに受け取ることには注意すべきだ」と警告している。

(ウクライナ侵攻関連記事)

米・ロシアだけではなくウクライナや同盟国もスパイ 米紙 漏洩した米軍事機密文書で明らかになったこと

米国とNATOのウクライナ支援“軍事機密文書”がロシアのSNSに流出 米紙 漏洩した極秘情報とは?

プーチンが停止した核軍縮条約は「消滅しても問題ない」 超タカ派ボルトン元米補佐官の一番の懸念とは?

「中国はロシアに“殺人的な支援”を検討している」米国務長官が懸念 ウクライナ侵攻1年

「まずは戦車、その後は核兵器だ」トランプ氏 プーチン氏寄りの発言も ウクライナ侵攻

「ロシアを破壊しようとすれば世界は終わる」 アメリカの反感を買う“ロシア発言”次々 ウクライナ侵攻

ロシア外相が米に警告「ペンタゴンの高官がプーチンを斬首すると脅した。どんな結果になるか考えるべき」

米国、ウクライナによるロシア領内へのドローン攻撃を黙認か? 長距離兵器を供与する可能性も 英報道

プーチン「ミサイル一発でもロシアに入ったら何百もの弾頭を返す」 米識者「最後は核兵器を使う可能性も」

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事