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マスク氏が言及した“日本消滅”に拍車をかける日本の“外国人恐怖症” 消滅より先に起きるヤバい事態

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
マスク氏の“日本は消滅する”発言は極端という見方もあるが、的を射ている!?(写真:ロイター/アフロ)

 米電気自動車大手テスラCEOのイーロン・マスク氏がした“日本は消滅する”発言が大きな波紋を呼んでいる。

 マスク氏は「当たり前のことを言うようだが」と前置きをした上で、「出生率が死亡率を超えなければ日本は最終的に消滅する。これは世界にとって大損失になるだろう」とツイートした。日本は出生率低下による人口減少により消滅するというのだ。

 少子化による人口減少問題については、かねて、これまでも多くの識者が問題視してきたが、人口減少による“日本消滅”に拍車をかけていることもあるのではないか。それは日本が他国が講じているような移民政策をとっていないということ。

 実際、世界的投資家のジム・ロジャーズ氏も移民政策をとらない日本のことを懸念し、“日本消滅”について言及していた。

「30年後も、50年後も、70年後も、子供を増やさず、外国人も受け入れないままだとしたら、日本は消滅してしまうでしょう」

中国人や韓国人が嫌いでしょう?

 “日本消滅”の背後には、日本の人々の外国や外国人に対する考え方、マインドセットが横たわっているような気がする。

 筆者がそう考えるのは、これまで取材してきた米国の投資家や識者から、そのマインドセットについて、度々指摘されてきたからだ。それは、控え目に言うなら外国や外国人に対する日本の“閉鎖性”であり、歯に衣着せず言うなら日本の“外国人恐怖症”とでもいうべきマインドセットだ。

 例えば、ヘッジファンド・マネージャーとして著名なカイル・バス氏はそれについて筆者にこう話した。

 「日本の人口は、2040年には1億人余りになると予測されています。加速度的に人口減少が起きることになります。その背景には、日本が“外国人恐怖症”で、移民政策をとっていないという問題があります。もっとも、移民政策をとったとして日本は誰を移民させるでしょう? 私にはわかりません。だって、中国人や韓国人のことが嫌いでしょう?」

 また、前述のロジャーズ氏もこんな見方をしていた。

 「日本人に『外国人を受け入れるか、それとも、外国人を受け入れるくらいなら日本が消滅した方がましか?』と聞いたら、彼らは『日本が消滅した方がまし』と答えるでしょう。韓国人や中国人、フィリピン人で日本がいっぱいになるよりは、日本が消滅した方がましと考えている日本人が多いのではないでしょうか。それが日本人の考え方のように思います」

 実際、非営利シンクタンク「言論NPO」が昨年行った世論調査でも、日本人の中国に対する印象は良くないままだ。同サイトは「冷え込んでいた日本国民の対中意識に改善はなく、中国へのマイナス印象は9割を超え、現状の日中関係を「良い」と思う人は2.6%に落ち込みました」と分析している。

 また、韓国ついても、48.8%が韓国に良くない印象を持ち続けている。

 ロジャーズ氏は日本の人々に「外国人のことを恐れないでほしい」とアドバイスしているが、長年の間培われた外国人に対する意識は、おいそれとは拭い去れるものでもないだろう。

リアルな構造改革をするにも“時すでに遅し”

 また、万一、日本が“外国人恐怖症”を拭い去って移民政策を取り始めたとしても、今からではもう遅いのかもしれない。バス氏はこう指摘していた。

 「突然、日本が移民政策を取り始めた場合、日本の給料はどうなるでしょう? 下がります。これは仕方がないことです。今から、移民対策を講じようとしても無理があるのです。“時すでに遅し”なのです」

 それに、人口減少による日本消滅よりも先に、“ヤバい事態”が生じる可能性もある。

 「日本にとって必要なのは、経済成長にフォーカスし、構造改革を実施し、労働市場に女性をもっと入れること。例えば、フィリピン人のヘルスケアワーカーを移民させ、移民たちに日本の女性が今家庭で行っているような仕事を任せ、日本の女性は労働市場に回帰することもできるはずです。日本の女性には労働市場で生産的な仕事に従事してもらい、移民たちに家庭の仕事や両親のケアをしてもらうのです。また、高齢者を労働市場に回帰させるのもいいでしょう。しかし、問題はそのような体制作りをするには長い時間がかかるということ。日本がリアルな構造改革をするには“時すでに遅し”なのです。日本の財政赤字は莫大過ぎ、チェンジをするには時間もかかるからです。これは、長い間、政府が問題に気づいていながらもそれを棚上げにし、長期的視野でプランニングをしてこなかった結果でしょう」

 バス氏は“日本経済回復のための処方箋はもはやない”とまで明言していた。

 とすれば、“人口減少による日本消滅”より先に日本を待ち受けているのは、“財政破綻による日本消滅”なのかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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