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投資の神様バフェット氏が指南した、インフレ下「投資すべきもの、投資すべきでないもの」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
3年ぶりに行われた対面式の年次株主総会に現れたウォーレン・バフェット氏。(写真:ロイター/アフロ)

 インフレの波が世界を襲っている。今後も、物やサービスの価格の上昇が予想される中、人々はインフレからどのように身を守ればいいのか? 何に投資したら良いのか?

 投資会社バークシャー・ハザウェイを率いる「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏は、4月30日(米国時間)、米ネブラスカ州オマハで行われた恒例の年次株主総会で、今後10年や12ヶ月、4週間の間にどれほどインフレになるかは誰もわからないとインフレを予測する難しさを指摘しつつも、インフレ下での最善の投資についてこう指南した。

「インフレの最善の防衛策はあなた自身の収益力だ。最善の策は何かに飛び抜けて秀でることだ。街でベストな医者や弁護士になれば、また、何であれベストになれば、人々はあなたが与えるものと引き換えに人々が生み出しているものを与える。誰もあなたの才能を奪うことはできない。実際、才能はインフレによってなくなることはない。ずば抜けて良い投資は自分自身を成長させることへの投資で、それには全く課税もされない。社会に対して価値があることや良いことを行えば、ドルがどう動こうと問題ないのだ」

 つまり、才能を磨いて社会に貢献すれば、金融界の状況がどうなろうとも、その才能は社会から常に求められるというのである。そして、そのためには、得意なことを見つけることが重要だとアドバイスしている。

「得意なことや、自然に勝負に入れるものを見つけることだ」

得意なことを見出す

 得意なことを見出すことは重要だ。マルコム・グラッドウェル氏は、著書『天才! 成功する人々の法則』の中で、何かで大成するには1万時間の練習が必要という「1万時間の法則(ten-thousand-hour rule)」を提唱したが、たゆまぬ日々の努力が必ずしも実を結ぶとは限らない。1万時間、何かに打ち込んでも、才能がないゆえに大成できないことは多々あろう。

 バフェット氏も「私はヘビーウエイト級のボクサーになるために、1万時間を費やすこともできたかもしれない。1万時間費やしても、あまり上達しないと思う。人はやりたいこと、得意なこと、社会に役立つことを間違える」と話している。つまり、大成できる可能性がないことに長い時間を費やすのではなく、自分の得意なことを見出し、そのスキルを磨き、得意なことにおいてベストになれと言いたいのだろう。

25ドルでオファーされても投資しない

 自分への投資が最善の投資と訴えたバフェット氏は、投資しないものも指摘した。それは仮想通貨だ。同氏は、かねて、仮想通貨に対して批判的な姿勢を示してきたが、この年次株主総会でも、仮想通貨に対して以下のような懐疑的な発言をしている。

「もし君が世界のすべてのビットコインを所有していて、それを私に25ドルでオファーしたとしても、私は受け取らない。なぜって、それ(ビットコイン)で何をするっていうんだい? 私は、どうにかして、それを売り戻さねばならなくなるだろう。それは何もしてくれないだろう」

 同じく、バークシャー・ハザウェイ副会長のチャーリー・マンガー氏も「あなたが個人年金の口座を持っていて、年金アドバイザーがすべてのお金をビットコインに投資するよう提案したら、ただ“ノー”と言おう」と発言、デジタル資産の所有はアメリカの金融システムの安定性を損なうため、バカげており、悪だという見方を示した。

 もっとも、バフェット氏らのスタンスを批判する投資家もいる。PayPalの創業者で投資家のピーター・ティール氏は、4月に行われたビットコインのカンファレンス「Bitcoin 2022」の基調講演で「バフェット氏をはじめとする金融界の重鎮たちが仮想通貨の価格の上昇の障害になっている。ビットコインが10倍、100倍になるには、彼らと戦わなければならない」と訴えている。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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