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議事堂暴動 トランプ陣営は集会主催者に270万ドル超支払い 無罪濃厚のトランプ、元大統領オフィス開設

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
米下院はトランプ氏が議事堂暴動を扇動したとし、弾劾決議を上院に送付した。(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ陣営から議事堂暴動に発展したトランプ集会の主催者たちに270万ドル超が支払われていたと米NPOが報じている。

トランプ陣営から議事堂集会主催者に270万ドル超

 政界での金の流れをリサーチしているNPO「センター・フォー・リスポンシブ・ポリティクス」が出したニュースによると、トランプ陣営が、議事堂暴動に発展したトランプ集会を主催した会社や個人たちに、2年以上前から、270万ドル以上もの金を支払っていたことがわかった。議事堂暴動に発展したトランプ集会の主催者たちとトランプ陣営は、以前から、金銭的に繋がっていたわけである。

 1月6日の集会を主催するには、主催者はナショナル・パーク・サービスという公園運営機関から集会を行うための許可証を得る必要があった。その許可証をとったのは「ウィメン・フォー・アメリカ・ファースト」というトランプ支援団体だ。その許可証にはスタッフのコンタクトリストが掲載されており、うち8名はこれまでトランプ集会を運営したり、集会のアドバイザーを務めたりするなどして、トランプ陣営と関わってきた人々だったという。トランプ陣営は、その8名や「イベント・ストラテジーズ」という会社に、2年以上前から270万ドル以上の金を支払っていたのである。

 例えば、トランプ氏の元主席補佐官代行で、議事堂暴動の発生を受け、北アイルランド問題担当特別代表というポジションを辞任したミック・マルバニー氏の姪、マギー・マルバニー氏も8人のうちの1人だ。同氏のLinkedinのプロフィールによると、同氏はトランプ陣営の金融管理ディレクター及び対外部門マネージャーを務め、2020年11月まで、同氏にはトランプ陣営から少なくとも13万8000ドルが支払われていた。

トランプ陣営から、暴動に発展した1月6日のトランプ集会を主催した個人や企業に支払われた金の流れを示す図。出典:Center for Resposive Politics
トランプ陣営から、暴動に発展した1月6日のトランプ集会を主催した個人や企業に支払われた金の流れを示す図。出典:Center for Resposive Politics

出所不明の“黒い金”?

 また、集会の許可証を得た「ウィメン・フォー・アメリカ・ファースト」は、集会の金の出所やトランプ陣営が関与しているかなどについて明らかにしていないという。

 「センター・フォー・リスポンシブ・ポリティクス」はこう指摘している。

「誰が出資しているかを隠し、最小限の情報しか明らかにしていない、“黒い金”が流れている団体がトランプ集会を企画し、金の詳細やトランプ陣営との繋がりをあいまいにしている」

 また、トランプ陣営の金はペーパーカンパニーを通して動かされていることから、陣営が誰にいつ金を支払ったかを知るのは難しいという。

 これらの指摘に対し、トランプ陣営側は声明を出し、“トランプ陣営は集会を企画したり、集会に出資したりしておらず、スタッフも集会には関与していない。また、たとえトランプ陣営の元従業員やトランプ陣営と契約していた人々が集会に関わっていたとしても、それは、トランプ陣営の指示によるものではない”と説明している。

「元大統領のオフィス」を開設

 ところで、トランプ氏は移住したフロリダ州パームビーチに早速「The Office of the Former President(元大統領のオフィス)」なるものを設けた。プレスリリースによると、このオフィスはトランプ氏の通信、公式発表、公式活動を管理し、トランプ前政権の議題を引き継ぐという。また、「トランプ大統領は常に、そして、永遠に、アメリカの人々のチャンピオンになる」とも述べている。

 「元大統領のオフィス」というネーミンングから、2024年の大統領選にはもう出馬しないのではないかという憶測も出ているが、トランプ氏はまだ今後のプランについては明らかにしていない。

 このオフィスでトランプ氏は弾劾裁判の弁護の準備を進めているようだ。

共和党上院議員はトランプ氏を有罪にしない

 ところで、トランプ氏を有罪にするには、少なくとも共和党上院議員の17人がトランプ氏の有罪に賛成する必要があるが、現状では、この数を達成するのは難しいとの声が強い。議事堂暴動直後はトランプ氏を非難していた共和党議員もいたものの、そんな非難も収まり、共和党上院議員の多くは退任した大統領に対する弾劾裁判の正当性やトランプ氏が選挙結果を覆そうと求めたことが扇動に相当するということを疑問視しているからだ。

 実際、トランプ氏が無罪になる可能性は高まっている。26日、米上院は、トランプ氏を弾劾裁判で裁くことを「違憲」として退ける決議案に対して、45対55と反対多数で否決した。反対に回った共和党議員5人は、ミット・ロムニー氏など、かねてよりトランプ氏を批判していた議員だ。トランプ氏を有罪にするのに必要な17人には、12人も足りない状況だ。

 バイデン大統領も、CNNに対し、トランプ氏に有罪評決が下される可能性について懐疑的な見方を示した。

「弾劾裁判は行わなければならない。もし行わなかったら、もっと悪い結果になる。17人の共和党上院議員がトランプ氏の有罪に賛成することはないと思う。しかし、トランプ氏の任期が6ヶ月残っていたとしたら、結果は非常に違うものになるだろう」

 共和党上院議員は、トランプ離れしている献金者とトランプ氏を信奉し続けている支持者の間で板挟みになっている状況だが、最終的にはトランプ氏を無罪にするという見方が多勢だ。それだけトランプ氏は今も強い影響力を共和党に与え続けている。

 開設した新オフィスからトランプ氏がどんな発表をするか、今後の動きが注目される。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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