「愛国者党」結成か、共和党のリーダーとして君臨か 弾劾裁判でトランプ氏を有罪にするものとは?

ワシントンDCを後にして、別荘のあるフロリダ州パームビーチに到着したトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

 「我々は何らかの形で戻って来る」

 アンドルーズ空軍基地で行われた最後の演説で、そう述べたトランプ氏。トランプ氏はどんな形で戻って来ようというのだろうか?

 1つには新党結成という形がある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ氏が1月中旬以降、側近たちと新党結成について話し合っていたという。そして新党には「パトリオット党=愛国者党」と命名することまで考えているようだ。“アメリカ・ファースト”なトランプ氏らしいネーミングだ。

 トランプ氏が新党を作りたいと考えたのは納得がいく。1月6日の議事堂暴動以降、共和党議員の“トランプ離れ”の兆候が見られるからだ。腹心だったペンス元副大統領が、同日、トランプ氏の要望に応えず、バイデン氏が選挙人投票で勝利したと認定した。下院によるトランプ氏の弾劾訴追には10名の共和党議員が賛同し、共和党のトップであるミッチ・マコーネル上院院内総務も「トランプ氏が弾劾を扇動した」と批判の矢を放った。腹心の“裏切り”に失望したトランプ氏が共和党に反旗を翻し、新党結成の動きを見せているとしても驚くに当たらない。

バノン氏、議事堂暴動に関与か

 また、大統領最後の日、トランプ氏は、2016年の大統領選時に選挙参謀としてトランプ氏を勝利に導いた、元側近のスティーブ・バノン氏に恩赦を与えた。このことは大きな波紋を呼んだ。バノン氏はトランプ氏が推進していた「メキシコの国境の壁」建設の資金を調達するために詐欺行為を働いたとして、昨年8月、逮捕・起訴され、まだ裁判が行われていない状況だからだ。恩赦を与えたことで、トランプ氏は、バノン氏の裁判が行われるのを阻んだことになる。トランプ氏は大統領就任後バノン氏をクビにしたが、米政治ニュースサイト「ポリティコ」によると、2人は大統領選の選挙結果を覆すために交流を再開していたという。

 そのバノン氏は1月6日の議事堂暴動にも関与していたという報道もある。ニュースサイト「デイリー・ビースト」によると、バノン氏と繋がりがある企業が、バイデン氏の大統領選勝利認定に抗議するためにワシントンDCに行こうと呼びかけるテキストメッセージを大量に流していたというのだ。

 ポピュリズムに訴える選挙戦略を巧みに展開し、“トランプ大統領誕生”を実現させたバノン氏である。トランプ氏がそのバノン氏を新党に取り込むことで、2024年の大統領選に出馬しようと考えているとしても不思議ではない。

トランプ氏なしでは共和党は大惨事に

 もっとも、トランプ氏に近かった共和党議員たちは新党結成の可能性を歓迎していない。愛国者党が生まれれば、保守派票が共和党と愛国者党の間で割れ、民主党に敗北してしまう可能性があるからだ。そのため、トランプ氏の側近だったリンゼー・グラム上院議員は、トランプ氏の新党結成の可能性について懸念の声をあげた。

「トランプ氏がそんな行動に出なければいいと思う。彼には共和党のリーダーでいてほしい。トランプ氏が自身のレガシーと最善の未来は共和党支持にあるということを理解してくれたらと思う。トランプ氏が共和党からいなくなれば大惨事になる。民主党は共和党が崩壊するとサバイブする。共和党はトランプ氏なしに前に進もうとすると崩壊する」

トランプ氏は共和党のリーダーでいられるのか?

 しかし、どれだけの人々が、グラム上院議員のように、トランプ氏には共和党のリーダーでいてほしいと考えているのだろうか? 

 ABCニュースと米紙ワシントンポストが共同で行った世論調査によると、アメリカの国民の69%が、共和党議員はトランプ氏のリーダーシップをフォローするのではなく、共和党を別の方向にリードすべきだと考えている。

 しかし、共和党支持者だけに限定すれば、60%と今も過半数以上が、共和党議員はトランプ氏のリーダーシップをフォローすべきだと考えているという結果だった。その割合は2018年の83%から大きく低下したものの、共和党支持者はプロ・トランプと反トランプにほぼ二分している状況なのだ。

 共和党が今も共和党支持者から過半数の支持を得ているトランプ氏というバンドワゴンに乗り続けて、同氏を2024年の大統領選の共和党候補に立てたいか、それとも、同氏を見放し、新たな共和党として前に進んで行こうとするか、注目されるところだ。

 ちなみに、選挙結果を覆そうとするトランプ氏の行為を批判した、共和党の重鎮の1人、元ニュージャージー州州知事のクリス・クリスティー氏は、昨年12月、ABCニュースでこう話していた。

「我々はトランプ氏に“ありがとう”と言って、前に進む必要がある」

弾劾裁判では良心に従え

 もっとも、トランプ氏は共和党のリーダーとして君臨し続けることも、あるいは、新党を結成することも難しくなるかもしれない。その前に、政治生命を絶たれてしまう可能性がある。

 2月9日に開始予定の上院による弾劾裁判でトランプ氏に有罪評決が出た場合、続いて、トランプ氏から公職に就く資格を剝奪するかどうかを決める採決が行われるが、その採決で過半数の議員が剥奪に賛成票を投じた場合、トランプ氏は出馬に向けた政治活動ができなくなるからだ。

 ところで、上院の弾劾裁判でトランプ氏に有罪評決を下すには、議員の3分の2以上の賛成が必要になる。そのためには、民主党は少なくとも17人の共和党議員の賛成を得る必要がある。

 共和党議員たちはどれだけ賛成に動くのか? 彼らに賛成か反対か決断させるものは何だろう?

 それについて、マコーネル上院院内総務が「良心による投票」に言及している。つまり、弾劾裁判でトランプ氏を有罪にするかどうかの判断について、共和党としてはプレッシャーをかけない、「良心に従って投票せよ」と共和党議員たちに伝えたのだ。影響力のある同氏のアドバイス通り、17人以上の共和党議員たちが良心だけに従って有罪票を投じたら、トランプ氏は弾劾裁判で有罪評決を受けることになる。

 そのため、メディアからは、マコーネル氏の「良心に従って投票」という発言は、トランプ氏を有罪にしてもいいと言っているようなものだという指摘もあがっている。

 しかし、共和党議員には政治的打算も働くことだろう。

 議員の中からは、自身の選挙区で再選したいと計算し、トランプ支持者の票を得ようと、良心に背いて有罪に反対する者も出てくるかもしれない。

 あるいは、企業などの献金元がトランプというブランドから離れる動きを計算に入れ、有罪に賛成する者もいるかもしれない。

 また、トランプ氏の新党結成による選挙での票割れの可能性を危惧して、新党結成を阻むべく有罪に賛成する者もいるかもしれない。前記したように、有罪評決が出た後、続いて行われる公職資格剥奪の採決次第では政治生命が絶たれる可能性もあるからだ。

 それに大統領選出馬を狙っていると目されている野心的な共和党議員たちの存在もある。

 共和党議員の良心、あるいは打算がトランプ氏の政治生命をどう左右するのか、弾劾裁判の行方を注視したい。

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