Yahoo!ニュース

「バイデンに投票」はたった2人だけだった! “トランプランド”の投票所で直撃取材 米大統領選 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
投開票日を目前に、トランプ氏の選挙集会は盛り上がりを見せている。(写真:ロイター/アフロ)

 筆者が住むカリフォルニア州は“青い”。リベラルな党を支持する有権者が約45%を占める一方、保守派を支持する有権者は約25%しかいない“青い州”だ。しかし、“青い州”の中にも、赤いスポット、つまり、トランプ支持者が多い地域がある。いわゆる、“トランプランド”と呼ばれる地域だ。 

カリフォルニア州の“トランプランド”

 カリフォルニア州の“トランプランド”はどこなのか? 

 米紙サクラメント・ビーが同州で保守層の多い地域を紹介しているが、その中でも、保守層の割合が最も多い地域は、カリフォルニア州オレンジ郡ヨーバ・リンダ市であることがわかった。ヨーバ・リンダ市はロサンゼルスのダウンタウンの南東約60キロ、車で小一時間ほどのところに位置する。リチャード・ニクソン元大統領の出生地として知られ、市内には同氏にちなんだ図書館もある。

 ヨーバ・リンダ市の人口は約6万4,000人。白人が約66%、アジア系アメリカ人が約15%、ヒスパニック系アメリカ人が約14%、黒人が約1%という人種構成比だ。2016年の大統領選時には、約60%がトランプ氏に、約35%がクリントン氏に投票していた。

 筆者は同市の投票所を訪ねた。カリフォルニア州では、11月3日の投開票日を前に、10月30日から各地の投票所がオープン、現地での投票が開始されているのだ。

 同市には5箇所の投票所があるが(うち3箇所は教会だ)、筆者が訪ねた市庁舎近くの投票所には、ハローウィンの午後、市民が三々五々、投票に訪れた。投票所の入口に来るまで、マスクを身につけない市民も目についた(投票所内ではマスク着用が義務付けられていた)。

 以下は投票風景。

保守層が大多数を占める、カリフォルニア州オレンジ郡ヨーバ・リンダ市の投票所内。各ブースでは筆記による投票が行われている。筆者撮影
保守層が大多数を占める、カリフォルニア州オレンジ郡ヨーバ・リンダ市の投票所内。各ブースでは筆記による投票が行われている。筆者撮影
ブースでの筆記による投票以外に、設置されているシステムによる投票もできる。しかし、筆記による投票をする有権者の方が多いという。筆者撮影
ブースでの筆記による投票以外に、設置されているシステムによる投票もできる。しかし、筆記による投票をする有権者の方が多いという。筆者撮影
記入された投票用紙は、最後はスキャナーにかけられて投票が終了する。筆者撮影
記入された投票用紙は、最後はスキャナーにかけられて投票が終了する。筆者撮影

人格か政策か?

 やはり、最も関心があったのは、有権者が誰に投票したか、である。

 “トランプランド”なのでトランプ氏に投票する人々が多いことを予想してはいたが、声をかけた20人ほどの市民のうち、「バイデンに投票した」と明言したのはたった2人だけだった。多数が「トランプに投票した」と答えた。「プライベートなことなので誰に投票したかは言えない」と答える人もいた。

 そして、「トランプに投票した」と答えた市民は、みな一様に“トランプ勝利”を確信していた。彼らの声を紹介しよう。

 「私たちは人格ではなく、政策をベースに投票しています。バイデンの方が人格的に上だと言う声がありますが、問題を解決するのは人格ではなく政策です。トランプの政策の方がアメリカの抱えている問題を解決に導いてくれると思います」

と話してくれたのは、中年の白人男女のカップルだ。

 人格をベースに投票するのか、それとも政策をベースに投票するのか。それはアメリカの選挙でよく議論されることだ。確かに、バイデン氏の場合、人格は素晴らしいが、政策がよく見えないという問題が指摘されている。

トランプ氏は正直だ

 しかし、その一方で、トランプ氏の人柄を褒めちぎる高齢の白人男性の声もあった。

 「トランプは良い人なんです。彼がベストだよ」

 これまで様々な取材を通じて、トランプ氏の人物像について聞いてきたが、その中でよく指摘されたことがある。

 「トランプ氏には裏表がない」「トランプ氏は見たまんま」「トランプ氏は何か隠し事をしているように見えない」

 そんな声だ。総じて、“トランプ氏は正直だ”というのである。

“愛憎相半ばする眼差し”

 そういえば、以前取材した、トランプ氏が不動産王だった時代に一緒に仕事をしたという、ある建築家もこう話していた。

「トランプ氏は何でもはっきりと物を言います。プランが気に入らない時は“いやだ。絶対にいやだ”とプランを出した人の気持ちを全然気にかけることなく、何度も強く訴えまくるのです」 

 正直に物を言い過ぎる、いわゆる忖度というもの一切しないトランプ氏に、その建築家は辟易していた。

 しかし、その一方で、トランプ氏が感情を表す様に感動を覚えたという。

「10年ぶりくらいに偶然再会した時のこと、トランプ氏は旧知の仲の友にでも再会したかのように、私の名前を呼び、駆け寄ってきたのです」

 トランプ氏はいやな奴だが、心の底からは嫌いにはなれない。同氏は、そんなふうに、トランプ氏のことを“愛憎相半ばする眼差し”で見つめているように見えた。

やっぱり“金のアメリカ”なのか?

 トランプ氏に投票した人の中からは、同氏の経済政策を評価する声もあがった。

 「ビジネスオーナーの私としては、トランプ氏の方がいいんです。彼の減税政策でビジネスは恩恵を受けました」

と話すのは、30代の白人女性。

 「トランプの4年を振り返ると、経済状況はとても良くなりました。カリフォルニア州では最低時給が15ドルまで上がった市もあります」

とアジア系の若い男女カップルは言う。

 確かに、第2回大統領候補討論会でも、経済という論点においてだけは、トランプ氏に大きく軍配が上がっていた。世界中を旅するバックパッカーの間では、アメリカは“金のアメリカ”と呼ばれていると聞いたことがあるが、その現れなのだろう。

バイデン氏は大丈夫なのか?

 トランプ氏が市民の安全を重視している点を評価する声も聞かれた。中年の白人男性が言う。

「トランプ氏に投票したのは、政府はあまり規制を設けるべきではないと考えているからです。また、銃所持にも賛成の立場だからです。今、過激な左派が破壊活動や暴動に走っていますが、民主党下だとそんな活動は放置されてしまいます。政府は問題を放置せず、問題を解決すべきだと思うので、解決に力を入れているトランプ氏に入れたのです」

 トランプ氏の実行力を高評価する声もある。

「トランプ氏に投票したのは、彼が信頼できる人物だからよ。概ね選挙公約を果たしているから。口先だけではないのよね」

と言うのは中年の白人女性。

 バイデン氏の指導力を不安視する声もあった。若い白人女性が言う。

「討論会でもよく話に詰まりましたが、見ていてこの人大丈夫なのかと思ってしまいます。トランプ氏が示しているような自信も感じられません」 

“自由”か“社会主義”か?

 ところで、投票所で話をきいたみながみな、快く回答してくれたわけではなかった。ある中年の白人女性からはこう叱責された。

「あなた、誰に投票したかなんて聞いていいの? プライベートなことでしょ。そんなこと聞いちゃいけないはずよ」

 彼女は煙たそうな表情でそう言うと、近くにいた中年の白人男性に同意を求めた。

「この女性が、誰に投票したかなんて聞いているんだけど、そんなことだめよね?」

 きちんと記者だと名乗ったのだが、私は間違ったことをしているのだろうか? 一抹の不安が過った。その男性は、

「彼女が僕たちに何か悪いことをしているわけじゃなし、いいんじゃないの?」

と言うと、こう続けた。

「僕はトランプ氏に投票したよ。今回の選挙は、基本的に、“自由”を選ぶか“社会主義”を選ぶかの選択なんだ。そして、この国では必ず“自由”が勝つんだよ」

 男性は私に“誰に何をきこうが君の自由だよ”とでも言わんばかりだった。

“真実”か“嘘”か?

 一方、バイデン氏に投票したという中年の中東系の男性は「トランプ支持者が多いこの街では、私たちはマイノリティーだ」と言いつつ、こう語った。

「バイデン氏に投票したのは、新型コロナウイルスの問題など、真実を教えてくれるのはバイデン氏の方だからです。トランプ氏はマスクもせず、言うことは嘘ばかりです。チェンジしてくれる新しい指導者が必要です」

 実際、先日、コーネル大学の研究チームが、“トランプ氏は新型コロナウイルスに関する偽情報の最大の発生源である”とする調査論文を発表したが、今回の大統領選挙は、“真実”か“嘘”かを選ぶ選挙でもあるのかもしれない。

 勝つのは、トランプ氏が訴える“自由”なのか、それとも、バイデン氏が教える“真実”なのか?

 決戦は2日後に迫った。

(関連記事)

日本にも「隠れトランプ」がたくさんいると思うワケ 実はあなたも? 米大統領選

ジョージって誰のこと? 200万回近く再生された“バイデン認知症疑惑“動画の真相 米大統領選

“中国事業に関与”証言も出たバイデン氏は“人格”で勝てるのか “経済”ではトランプ氏圧勝 最終討論会

「トランプ氏は終わらない」元側近バノン氏が暗躍 “バイデン氏メール・スキャンダル”の信憑性

トランプ氏がついた「致命的に危険な嘘」 共和・民主両党失墜のリスクも 対話集会

トランプ氏、バイデン氏を老人ホームの入居者に仕立てたパロディー画像で侮辱 バイデン氏の勝率91%

傲慢?それとも母親みたい? 注目を集めたのはカマラ・ハリス氏の表情だった 米副大統領候補討論会

トランプ氏、「完全に危機から脱したわけではない」のに退院 感染の口止めもしていた!

「トランプ氏はプロの嘘つき。感染は同情を得るためのフェイク」マイケル・ムーア監督が“陰謀論”で警告

“米大統領選のノストラダムス”の大予言 大統領選の勝者は? ロシア、中国、イランが選挙介入か

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事