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トランプ大統領、“人種差別的モノマネ”をしてアジアの指導者たちを嘲る

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ミズーリ州で演説するトランプ大統領。(写真:ロイター/アフロ)

 また、トランプ大統領の暴言が始まった。しかも、今回は、“人種差別的で無神経なモノマネ”入りだ。そして、今回の嘲りの対象は、アジア歴訪の際、手厚く歓待してくれたアジアの指導者たちである。誰とは言わなかったものの、その発言内容から察するに、この指導者たちというのは、安倍首相と文大統領を指しているとしか思えない。また一部には、日本を指して批判していると思われる箇所もある。

 以下が、11月29日、トランプ大統領が、ミズーリ州で、税制改革の演説を行った際にした発言だ。トランプ大統領はアジア歴訪の大成功を自賛した後、裕福な東アジアの国々が“アメリカの防衛にただ乗りしている現状“を批判するという“お馴染みのトランプ節”を披露した。

“安保にただ乗りをしているアジアの指導者”を非難するトランプ大統領

アジアの指導者たちはのうのうとしていると批判

「貿易問題には取り組んで行くが、とても裕福な国を防衛する場合は軍事問題にも取り組むよ。ほとんど無償で防衛しているからね。なぜ、我々は彼らを防衛しているかって? 彼らのことが大好きだからだよ。どの国とは言わないが、防衛している国はたくさんある。彼らのことは大好きだよ。彼らは裕福だ。そのうちの1カ国は、持続不可能なキャッシュフローがあると言っている。それは非常に莫大だ。考えてみてよ。持続不可能なキャッシュフローをどうしたい? 彼らは自分たちの金の使い道がわかってないんだ。我々はそんな彼らを守っている。

 そんな状況は変わっていくよ。彼らのことは守るが、彼らは我々にフェアーに接するようになるだろう。彼らは防衛費を払うようになるだろう。それは理にかなっていることだろう?

 この問題の多くは、何年も昔、我々が敗戦国を守ったことに起因しているが、彼らは強く、裕福になった。それなのに我々は同じように彼らを守り続けている。何があったっていうんだい? なぜ誰も彼らのところに交渉に行かなかったんだ? アジアに滞在した時、数カ国でそのことを話すと、彼らは、こんな感じだったよ」

 そういうと、トランプ氏は、胸の前に手を置き、肩を丸めて、ウンウンと頷きながら頭を左右に動かした。アジアの指導者たちのモノマネをして、彼らをバカにしたのだ。そして、そのジェスチャーについてこう説明を加えた。

「これってどういうことかわかる? 彼らは(アメリカの防衛があるために)のうのうとしていられるということがわかってるってことだよ。そして、彼らはアメリカを助け始めたよ。OK?」

ナバホ民族を讃えるイベントでも“差別発言”

 ちなみに、11月27日に行われた、先住民のナバホ民族の退役軍人を讃えるイベントの際も、トランプ大統領は「議会には、君たちよりもはるかに昔に来たと言う議員がいる。人々は彼女を“ポカホンタス”(“白人におもねるネイティブアメリカンの女性”という意味の蔑称)と呼んでいる」と揶揄している。誰とは言わなかったものの、“ポカホンタス”とは、ネイティブアメリカンの血を引いていると言っている民主党上院議員のエリザベス・ウォーレン氏を指したものだ。トランプ大統領はかねてから、彼女がネイティブアメリカンの血を引いているのは嘘だと主張し、同氏を“ポカホンタス”呼ばわりしていた。当然のことながら、この発言は、主催者側から“侮辱的だ”と非難された。

 最近のトランプ大統領は、誰とは明言にせずに“毒”を吐く。しかし、傍目には、誰のことを指しているのかわかる暴言なので、人々をいっそう不快に陥れる。暴言が始まったのは、来年の中間選挙を意識してのことだろう。票集めのために、“蜜月のパートナー”安倍首相も、トランプ大統領にバカにされてしまったようだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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