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2020年本屋大賞ノミネート10作をざっくり紹介

飯田一史ライター
本屋大賞オフィシャルサイトより

2020年本屋大賞ノミネート10作が発表された。直木賞や各種ミステリランキングで上位作品などの話題作が揃った本年のノミネート作品&著者をざっくり紹介したい。

■『線は、僕を描く』砥上裕將(著) 講談社

第59回メフィスト賞受賞作。つまり著者のデビュー作。

両親を交通事故で失った大学生の青年がアルバイト先の展覧会場で出会った水墨画の巨匠になぜか気に入られ、内弟子に。巨匠の孫はそれに反発して主人公と勝負すると宣言。水墨画という芸術を軸に喪失からの回復を描いた青春小説。

マンガ版もあるのでそちらから入るのもよいかも。

■『店長がバカすぎて』 早見和真(著) 角川春樹事務所

契約社員で書店勤務(文芸書担当)の28歳独身女性が、バカ店長の存在に苦しみ日々トラブルに見舞われながらも働いていると、ある日、憧れの先輩書店員から「辞める」と告げられる……。

著者は『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞。文芸界を舞台にした小説『小説王』もあるが、これは本好き書店もの。

■『夏物語』川上未映子(著) 文藝春秋

38歳の小説家の夏子がパートナーなしの出産の方法を探るうち、精子提供で生まれ、本当の父を捜す逢沢潤と出会い、心を寄せるが彼の恋人は、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと言い、子どもを願うことの残酷さを夏子に対して問いかける。

言わずと知れた芥川賞作家が、「産むこととは?」を問いかけた、著者最長の小説。

■『熱源』川越宗一(著) 文藝春秋

2018年に「天地に燦たり」で第25回松本清張賞を受賞して作家デビューした作家による、第162回直木賞受賞作であり、2019年、樺太アイヌを描いた『熱源』で第9回本屋が選ぶ時代小説大賞の受賞作と、すでに高い評価が与えられている一作。

日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人が樺太で出会う――明治維新後、樺太のアイヌに起こったことを描く歴史小説。

■『ノースライト』横山秀夫(著) 新潮社

一級建築士の青瀬が設計した新築の家に越してきたはずの家族の姿はなく、一脚の古い椅子だけが残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家ブルーノ・タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 数々の謎を描くミステリー。

『半落ち』『第三の時効』『クライマーズ・ハイ』『看守眼』『64』など数々の話題作を執筆してきた大家の一作。

■『むかしむかしあるところに、死体がありました。』 青柳碧人(著) 双葉社

「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった日本昔ばなしを、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く。「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」の全5編収録。

なんじゃそりゃと思うかもしれないが、フタベス1位/キノベス! 2020 2位/読書メーター OF THE YEAR 5位/本の雑誌ミステリーベスト 6位/週刊文春ミステリーベスト 7位/ミステリが読みたい! 8位/本格ミステリ・ベスト 9位と各種ミステリランキングで高評価。

著者は数学ミステリ『浜村渚の計算ノート』など変わり種が得意だが本作もその資質を発揮した一作。

■『ムゲンのi』知念実希人(著) 双葉社

眠り続ける謎の病気「イレス」の患者の治療法に悩む識名愛衣は霊媒師のユタである祖母に相談すると「患者の夢幻の世界で魂の救済をすれば目覚める」と言われ、愛衣は夢幻の世界に飛び込む。

著者は『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』に続いてこれで3年連続本屋大賞ノミネート。他にもデスゲームミステリー『仮面病棟』が20年3月に映画公開されるなど話題作を多数手がける人気作家。

■『medium霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼(著) 講談社

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った霊媒の女性・城塚翡翠と出逢う。彼女は死者の言葉を伝えられるが証拠能力はなく、香月は霊視と論理を組み合わせて事件に立ち向かう。

『線は、僕を描く』同様、講談社の文三発のミステリーであり、『ムゲンのi』同様の霊媒もの。

「このミステリーがすごい!」2020年版国内篇 第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリーと本作もすでに各種ランキングで高評価。

著者は青春ミステリーの書き手としてデビュー時から注目されてきた才能。

■『ライオンのおやつ』小川糸(著) ポプラ社

若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。

映画化もされたベストセラー『食堂かたつむり』などで知られる著者の感動作。

■『流浪の月』凪良ゆう(著) 東京創元社

父が病死、母が蒸発して叔母夫婦に引き取られた9歳の少女は、従妹に性的虐待を受け、逃げ出すようにして公園で出会った19歳の大学生と2か月生活を共にする。ふたりは穏やかに過ごすが世間は誘拐事件として騒ぎ、少年は逮捕されて医療少年院へ。大人になって再会したふたりは、友人とも恋人とも違う関係を生きていく。

未来屋小説大賞2位、キノベス7位。

BL小説を長く書いてきた作家が得意の心理描写を活かして丁寧に関係性を描いた衝撃作。

大賞の結果発表は4月7日。

候補作はいずれも話題作揃いであり、気になる小説は読んでから結果を待ちたいところだ。

ライター

出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経験した後、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材&調査してわかりやすく解説・分析。単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』『ウェブ小説の衝撃』など。構成を担当した本に石黒浩『アンドロイドは人間になれるか』、藤田和日郎『読者ハ読ムナ』、福原慶匡『アニメプロデューサーになろう!』、中野信子『サイコパス』他。青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。息子4歳、猫2匹 ichiiida@gmail.com

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