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2019年キッズ映画ベスト10 映画『シンカリオン』はなぜ親も子も絶賛せずにはいられないのか

飯田一史ライター
『新幹線変形ロボシンカリオン未来からきた神速のALFA-X』公式サイトトップより

とてもこわがりで映画を観ていてもすぐ「帰る」と言いがちな3歳の息子に2019年に劇場で観た映画のベスト10を訊きました。

男児子育て中の皆様のお正月休みの親子の時間、視聴体験の参考になれば幸いです。

10位.『バースデー・ワンダーランド』

中学生の少女アカネが異世界を救ってほしいと懇願され、好奇心旺盛で自由奔放な叔母のチィに促されて無理やり骨董屋の地下の扉の先から繋がる〈幸せ色のワンダーランド〉に連れて行かれて大冒険。

タブレットで原恵一監督の『河童のクゥ』をちゃんと観られた(河童好きのため)ので連れて行ったが感想は「長かった」。主人公の年齢が自分と離れすぎていたから? ちょっと難しかったのかも。小学生になったらまたいっしょに観たい。

なお息子はジブリ映画はすべて冒頭10~15分で観るのをやめます(理由は「つまんない!」「こわい!」など)。

9位.『トイ・ストーリー4』

『トイ・ストーリー』シリーズをまったく未見のまま映画館に臨んだ息子。ゴミからつくられたキャラクター・フォーキーと主人公ウッディたちとのコミカルなやりとりがなされる序盤は楽しげに観ていたが、その後、ホラー感あるヴィンテージ人形ギャビー・ギャビーが登場し、そいつらに追いかけ回されるシーンで本気でビビり、「こわい! おうち帰る!」が始まるもなんとかなだめて最後まで。終わったあと「おもしろかった?」と聞いたら「おもしろくなかった」。父、涙目。

8位.『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』

オーストラリアの秘境“グレートババァブリーフ島"で新婚旅行を満喫中の野原一家。その夜突然ひろしが消えた――インディ・ジョーンズ的な設定にマッドマックスっぽいシーンなどお遊び溢れるクレしん映画。

事実上ひろしが主役みたいなお話なので大丈夫か? と思っていたが、巨大コアラに振り回される野原一家がおもしろかったらしい。帰りにすき家で食事したらコラボグッズをもらえて大満足(みさえだったが……)。

大人目線では自然公園に飼い犬(シロ)を連れていくってどうなのとか細かいところが気になりましたが子どもには関係ないですね。

7位.『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer/騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE』

リュウソウジャーもジオウも息子はほとんど観てないけどどうだろうと思っていたものの、「どっちもおもしろかった」。

息子はそこまで恐竜好きではないものの、恐竜が隕石で絶滅したことは図鑑を観て知っていたので、リュウソウジャーのストーリーもある程度理解できたらしい。リュウソウジャーは武器のギミックが相当好きらしく、おもちゃ屋店頭の宣伝映像を延々何十分も観ていて離れないのでキレたことがある。

仮面ライダーに関しては息子はいとこからもらった電王やフォーゼのおもちゃで遊んでおり、特にフォーゼが好きなようで(とはいえ本編はAmazonPrimeで何話か観た程度)、ジオウの能力でフォーゼが出てくるととにかく喜ぶ。父は仮面ノリダーネタで笑い、その後のめちゃくちゃなクライマックスのキック技にも笑うしかなかった。

6位.『ペット2』

マックスとデュークの飼い主ケイティが結婚し、息子のリアムが誕生。「ぼくがリアムを守る」と決めたマックスが厳格な農場犬ルースターと出会い――複数視点から物語が展開するので子ども的に大丈夫か? と思っていたら杞憂だった模様。

息子は『ペット1』は未見。悪役も戯画的なキャラクターだったのでこわがりの息子もそんなにこわがることなく、多頭飼育崩壊気味のおばあちゃんが猫を乗せたクルマをぶっ飛ばすシーンなどを笑いながら観ていた。その後、妻とも2回目に出かけていたので高評価だったと思われる。

息子は『SING』も好きだが、動物アニメは鉄板だと改めて実感。一番喜んでいたのは同時上映の『ミニオンズ』の短編(ミニオンが好き)。イルミネーション作品の子どもをつかむ力に唸る。

5位.『それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫』

みんなにおいしいアイスを届けるアイスの国のお姫様であるバニラ姫は、アイスを作れず執事のジェラート大臣からお説教されアイスの国を飛び出し、アンパンマンたちと出会う……。

ばいきんまんのバイキンアイスロボによって主要キャラがみんな2頭身のアイスクリーム姿にさせられるところでやたら喜んでいた。子どもってデフォルメしたものが好きなんだなと思わされた。われわれの子どものころはSDガンダム大流行だったことを思い出す。

映画後も何回もパンフレットをもってきて「これ読んで!」とせがまれた。

4位.『映画ドラえもん のび太の月面探査記』

月面探査機が捉えた白い影が大ニュースに。のび太はそれを「月のウサギだ! 」と主張するが、みんなから笑われてしまう...。そこでドラえもんのひみつ道具<異説クラブメンバーズバッジ>を使って月の裏側にウサギ王国を作ることに。

TV版のドラえもんは好きなのだが映画版は「こわい」と言ってなかなか家でも観ない息子だったが、今回は全体の雰囲気もそんなにこわくなく、学研の宇宙の図鑑で観ていた探査機が登場することもあってか、とても気に入った模様。

映画後も何回もパンフレットをもってきて「これ読んで!」とせがまれた。

その後、家で『南極カチコチ大冒険』を視聴したらこわすぎたらしく38.8度の高熱を出した。ダークでシリアスな雰囲気にそういう曲が合わさるともうダメらしい。

3位.『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』

ジオウとゼロワンの共演作品。

前半がドシリアスで不穏な空気と音楽、そのうえ前半では主人公サイドが一方的にやられまくるので「こわい! おうち帰る!」が中盤まで延々続いて困ったがなんとかなだめる(息子は戦闘シーンは好きだが味方が負けるのはイヤ)。

シンカリオントリニティが好きなのでジオウトリニティが登場すると「トリニティ!?」と笑顔に。

後半は主人公サイドが次々勝利していくので安心して観ていた。

テレビの『ゼロワン』はほとんど観ていないのだが(「観る?」と聞いても「ドラえもんが観たい」と返ってくることが大半)。なぜかゼロワンのデザインはとても好きらしく、これもパンフレットを何回も持ってきては各登場仮面ライダーの紹介ページを読まされた。

2位.『東映まんがまつり』

ほぼほぼ『おしりたんてい』を観に。息子はおしりたんていのことをTVアニメ放映前から好きだったがアニメ化により保育園でもみんなが知っている存在に。

セブンイレブンで先行発売されたおしりたんていの読みもの『おしりたんてい カレーなるじけん』を予習済みなので犯人はもう知っていたがそれでも楽しそうに観ていた。

同時上映の『爆釣バーハンター』もよかったらしいがその後、おもちゃの催促とかあれ観たいとかはまったくなかった。

子ども向けのオムニバス映画は親的にも「飽きて出たがるのでは」という心配が薄いのでとても良い。

1位.『新幹線変形ロボシンカリオン未来からきた神速のALFA-X』

「E5系はやぶさ」「N700Aのぞみ」など実在する新幹線が変形するロボット「シンカリオン」に乗る運転士となった子どもたちが、大人たちと協力して敵に立ち向かう姿を描いたテレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」の劇場版。次世代新幹線開発のための試験車両「ALFA-X」がシンカリオンとして登場!

自分の足で立てるようになった1歳なりたてのころからリモコンを電車に見立てて遊んでいた息子(なお、父母はまったく”テツ”ではない)。日々、電車の本やプラレールで遊び、京都に家族旅行したときは鉄道博物館に丸1日費やすなど子鉄の道を歩むも、3歳になって以前ほど熱がないかなと思っていたが(とはいえシンカリオンは全話視聴)……2019年のクリスマスプレゼントにシンカリオン500TYPE EVAをあげたところ熱が再燃。

12/27公開のこの映画を観たら熱が爆発しまくり、TYPE EVAとクロス合体させられるシンカリオンE5がほしいほしいほしい状態に。

ところが初代E5は売り切れらしくプレミア価格でしか売っていない。

ゴネまくるので「E6かE7ならすぐ買えるけど」と言うと「E6こまち買って!」に切り替わり、渋々ネット通販でポチるも「今すぐ欲しい!」「いつ来るの!」。

映画の内容はゴジラとミクが乗るH5が戦う導入、そしてEVAとの共演からして大満足だった模様。

息子は人生最初に映画館で観た映画が『シンゴジラ』(TOHOシネマズのママズクラブシアターにて)。ゴジラに首相が乗ったヘリが瞬殺されるところでゲラゲラ笑っていた人間であり、また、とくにボカロ曲を聴かせて育てたわけでもないのになぜかシンカリオンに登場する発音ミクが好き。

仮面ライダー映画などと比べても主人公サイドが負けまくったり重々しい雰囲気はそこまででなく、笑える要素もあり、最後は大集合してやっつけるという展開で終始楽しそう。

物欲喚起という意味でも最強の映画でした。

キャラクターの強さと画面の派手さがあれば、TV版やシリーズ過去作をろくに観ていない3歳男子でもその心はつかめるようです(原作を知っていれば言うまでもない)。

ライター

出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経験した後、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材&調査してわかりやすく解説・分析。単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』『ウェブ小説の衝撃』など。構成を担当した本に石黒浩『アンドロイドは人間になれるか』、藤田和日郎『読者ハ読ムナ』、福原慶匡『アニメプロデューサーになろう!』、中野信子『サイコパス』他。青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。息子4歳、猫2匹 ichiiida@gmail.com

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