二郎風オーダーで「ドンパリ」「チョイパリ」? 客の9割がラーメンを注文する平塚の老舗の蕎麦屋とは
神奈川県平塚市。
平塚のラーメンの老舗といえば「老郷(ラオシャン)」「花水ラオシャン」の酸っぱいタンメンが有名だが、平塚駅北口から徒歩3分の商店街の中に、昭和20年代創業の老舗がある。
「大黒庵 本店」である。
外装はどう考えても蕎麦屋。
しかし「らーめん」の赤いのぼりがひらり。そしてディスプレイの最上段はすべてラーメンメニューだ。
なんと客の9割がラーメンを注文するという、ほぼラーメン屋な蕎麦屋なのである。
創業時からラーメンがメニューにあったというが、果たしてなぜこんなにも有名になったのだろうか。
「ラーメン二郎」や横浜家系ラーメンのようなオーダー制
入店し、ラーメンを注文しようとメニューを見ると、壁に「ラーメンのオーダーの仕方」という貼り紙があった。
「麺のかたさ」「スープのからさ」のオーダーを受けると書いてある。
蕎麦屋でありながら、「ラーメン二郎」や横浜家系ラーメンのようなオーダー制をとっているのにまず驚いた。
そしてよく見ると「口調」という文字が。
そこを見ると「ドンパリ」「チョイパリ」「チョイヤワラ」「カラ」「デカラン」など呪文のような文字が並ぶ。オーダーを店独自の「口調」で注文するのが「大黒庵」流なのだ。
他のテーブルの注文に耳を澄ませると、「中ラー ドンパリで!」「カレーラーのパリで!」と呪文が飛び交っていた。これは面白い。
筆者も「ドンパリで!」と言いたかったが、初めて来たので「ラーメン」を「普通」で注文。
実にノスタルジックな一杯が登場。
具はチャーシュー、メンマ、ナルトとシンプル。丼に箸を乗っけて提供されるのがまた良い。
スープは香ばしい醤油の香りに、シジミをメインとした魚介の和ダシ系。
少し焦がしの入った醤油ダレがしっかり主張し、さすが関東風の蕎麦屋の作るラーメンだ。
麺の食感が「パリパリ」
ここに合わせる自家製麺が実に独特。
加水が低い麺で固めに茹でられ、表面の食感がパリパリしているのだ。麺のオーダーが「パリ」「ドンパリ」と呼ばれる理由がここでわかる。
非常に主張の強い麺で、濃いめの醤油スープにも負けず、主役は明らかにこの麺だ。
これは確かに今まで食べたことのない一杯。
店には客が10人ほどいたが、確かに誰一人蕎麦を食べておらず、全員ラーメンを啜っていた(蕎麦も北海道産を使った自家製でオススメだそう)。
さらには、麺6玉が入ったデカ盛りの「チョーデカラン」というメニューもあって、1時間で食べきれば無料なのだという。
蕎麦屋のラーメンが二郎風オーダーにパリパリの自家製麺。これは一食の価値ありだ。
大黒庵 本店
神奈川県平塚市紅谷町4-21
0463-21-1335
※写真はすべて筆者による撮影