ありがとう「交通飯店」! イチローも愛した有楽町の老舗町中華がこの3月で幕
有楽町駅の目の前にある東京交通会館。
その地下1階に一軒の老舗の町中華がある。「交通飯店」だ。
1965年創業。イチローの愛する名店としても知られ、サラリーマンを中心に連日常連客で賑わう人気のお店だ。
この「交通飯店」が3月31日のランチタイムをもって幕を下ろすという。その発表とともに、閉店の噂を聞きつけた常連客が毎日行列を作っている。
都会のど真ん中で時の止まったような昭和そのままの空間。
店主のカンカンカンという中華鍋の音をBGMに、餃子やニラレバをつまみにビールで喉を潤したものである。
名物メニューはなんと言っても「チャーハン」だ。
客のほとんどが注文するメニューで、ハム、ネギ、卵のみのシンプルなチャーハンながら、固めに炊いたご飯がパラパラと口の中でほどけて絶品なのである。
「これまでお世話になりました」
筆者も閉店までに一度行っておかないとと思い、午前中の仕事を終えて、12時過ぎに訪れた。
店は地下鉄のD8出口からすぐの場所にあるのだが、なんと駅の出口のところまで行列が繋がっていた。
店のガラスに小さな貼り紙があった。
「3月31日(木)ランチ終了後! 閉店! いたします! 長らくの御来店ありがとうございました!」
女将さんがテキパキと行列をさばき、列が長くなりすぎないように一人客と団体客に分けて左右で並ばせている。足の不自由な人には椅子を出すなど、これだけ忙しいのに長年愛されるお店はさすがである。
「お店に入ったらおしゃべりは禁止。並んでいる間に好きなだけ喋っておいてね」
「注文を聞かれたら、コートは脱いでおいてね。中ではスマホ、タブレット、読書は禁止よ」
ここでは女将さんがルールだ。常連客は静かに並んで待っている。12時10分から並んで、13時に入店。チャーハンと餃子を注文した。
店内では店主のカンカンカンという中華鍋の音が今日も響く。
店主は高齢だが、その鍋さばきは全く変わらない。あっという間にチャーハンが出来上がる。
「これまでお世話になりました」先に食べていたサラリーマンがお勘定を済ませて、寂しそうにそう言った。
最後のチャーハンも本当に旨い。塩味は控えめであっさりした味付け。ふわふわの卵とパラパラの米のコントラストが最高だ。
チャーハンで有名な店だが、餃子も都内トップクラスの美味しさだと思う。
粗めの野菜が特徴の餡で、皮の焼き目もパリッと完璧だ。ニンニク不使用なのはオフィス街ならではか。
新型コロナウイルスの影響に合わせて、店主の高齢化もあり、交通会館では2020年頃から閉店が相次いでいる。有楽町のサラリーマンのオアシスだった「交通飯店」の営業もあと半月だ。
交通飯店
東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館B1F
※写真はすべて筆者による撮影