昭和のライブハウスから始まった「天スタ」病みつきの秘密をカップラーメンから紐解く
ラーメンの食べ歩きを始めて2〜3年、社会人になりたての頃、当時の会社の先輩にここだけは行けと言われた店がある。「天理スタミナラーメン」だ。
関西出身の先輩で、地元で知らない人はいないぐらいの有名店なので食べてみてほしいということだった。
「天理スタミナラーメン」(略称は「天スタ」)は有限会社なかいが運営するラーメン店の名前だが、このお店や「彩華ラーメン」が提供するスタミナラーメンが火付け役となり、奈良県に広がるプチご当地的なラーメンになった。その流れで、県内のラーメン店や定食屋では「スタミナラーメン」をメニューに加えているところが数多い。
「天スタ」は奈良県内に10店舗を展開、FC(フランチャイズ)展開にも積極的で大阪・兵庫・滋賀・三重にも店舗を広げ、海外ではミャンマーやタイにもお店がある。
本店は天理市櫟本町というところにある。最寄り駅の櫟本駅はJR西日本桜井線の無人駅。駅から800mほど歩くと、「天スタ」の黄色い巨大な看板が見えてくる。
具は豚肉、白菜、ニラ、ニンジン。スッキリとした豚骨スープにニンニクと豆板醤を加え、野菜と共に炒めている。野菜のシャキシャキ感と麺のポクポクとした食感が特徴で、ジャンキーな旨さで中毒性が高い一杯だ。
元々は現在の社長が奈良の新大宮にあるジャズライブハウスで、ライブの終わりにラーメンを振る舞ったのがその始まり。来場者へのサービスとして出していたラーメンが評判を呼び、そのうちラーメン目当てに来るお客さんも現れる。
そこからスピンオフするような形で1980年8月にラーメン屋台を開業し、「天理スタミナラーメン」の歴史がスタートした。
2013年には高田馬場店がオープンし、初の東京進出となる。15年には「リットン調査団」の藤原光博氏が高田馬場店のFCオーナーになったことでも話題になったが、16年に新大久保にあるドン・キホーテ新宿店に移転した後、惜しまれつつも閉店してしまった。
現在は、東京はおろか関東近郊では食べることのできない「天スタ」だが、カップラーメンがエースコックから発売されている。
これがなかなか再現性が高く、驚いた。
ニンニクの効いたスタミナ系のカップラーメンは各社から発売されているが、一般的なものに比べて「天スタ」は少しアプローチが異なるように感じる。改めて「天スタ」をカップラーメンで食べてみると、中毒性があるだけでなく、野菜の旨味がしっかりしているのだ。豚骨スープ自体が濃厚系ではなくスッキリしており、そこに野菜の旨味が加わってコクを出している。ここにニンニクや辛味を効かせることで、決して濃厚ではないが病みつきになる。このバランス感はなかなか他にはないものだ。
古都・奈良に広がる40年の歴史のあるスタミナラーメン。まずはカップラーメンからでもそのこだわりの味に触れてみてほしい。